Q.46 医療費削減のために高齢者の自己負担を増額すること、また費用対効果の薄い医療行為の保険適用を外すこと、についてどう思いますか?(さんちゃん・病院勤務)
昨今、医療費の財政への圧迫についての記事を目にする機会が多くなりました。皆保険制度のもとで誰もが安心して医療を受けられたらいいよね、と思う一方で、とはいえ財源が足りないのにとても助かりそうもない人に国庫が負担するのも難しいよね、とも思います。で、質問です。医療費削減のために高齢者の自己負担を増額すること、また費用対効果の薄い医療行為の保険適用を外すこと、についてはどう思いますか?
高齢者の自己負担増は仕方なし…でも、保険適用の範囲を狭めるのは慎重になるべきと考えます
結論から言えば、医療費削減のために高齢者の自己負担を増額することは絶対に必要なことである一方、費用対効果の薄い医療行為の保険適用の除外に関しては慎重であるべきと考えています。
オプジーボのような高価な新薬が医療保険財政を圧迫しているのは、そこだけ見ると事実なのですが、そもそも医療保険制度自体には「高価な新薬に保険制度を適用することで、その普及、価格低減を後押しする」というイノベーションを後押しする意味合いもあります。なので個別の薬品の費用対効果に目くじらを立て過ぎると、そもそもの医療保険の大きな意味合いを損なってしまう可能性があります。
他方で高齢者の自己負担割合については明らかに見直しのタイミングが来ていると思います。高齢者が健康問題を抱える比率というのは現役世代に比べると格段に高いのは事実で、健康保険制度において高齢者に対して一定の配慮をする必要があるのは間違いありません。ただし、それが過ぎると逆に「高齢者優遇」ということになってしまうので、考えるべきはバランスです。
世代別の医療保険に対する負担と受益を見てみると、20歳~60歳は負担が受益を上回っており、特に30代~40代は受益の2.5倍程度も負担をしています。そして60歳以降から徐々に受益の方が負担を上回るようになり、後期高齢者となる75歳~79歳では負担の5倍もの受益を受けています。
結果として現状はバランスが欠けており医療費の38.5%を支える医療財政の赤字は毎年増えて国家財政を圧迫しているわけですが、将来のことを考えると借金頼りの現状は長くは続けられません。だからといって「医療費を支えるために大増税」というわけにもいかないでしょう。
すでにデータは十分過ぎるほどあるのですから、やはり医療費に関しては経済計算に基づいて何らかの形で受益と負担の間で医療費にキャップをかけていくことが不可欠です。例えば年代別に受益と負担の関係で適切な割合を決めて(例えば30~34歳なら「受益1:負担2.5」、60~64歳ならば「受益1:負担1」、75~79歳ならば「受益4:負担1」などのように)、数年ごとに年代別の負担割合を改定していくような方式が有効なように思えます。