Q.44 率直に聞きますが、天下りシステムについて宇佐美さんの賛否はいかがですか?(tiger・会社員)
率直に聞きますが、天下りシステムについて宇佐美さんの賛否はいかがですか?断固なくすべきなのか、それとも必要悪なのか、どちらでしょう?
天下りは、少なくとも現状においては「必要悪」だというのが私の意見です
まず「天下りとはなんなのか?」ということなのですが、単純に言えば「官庁が、その幹部を“後輩の昇進が詰まる”という人事の都合で辞めさせて、その見返りに当該幹部に退職後の再就職先として民間企業や公益法人の幹部ポストをあてがう」というシステムのことです。
このような「天下り」がなぜ行われているかというと
①官庁が“入省年次ごとに同じペースで出世して行く”という年功序列システムを採用していること
②官庁はピラミッド型組織で幹部ポストは限られているので、同期全員がいつまでも一緒に出世することはできず、同期内で余分な人員が必ず発生すること
③日本の雇用法制上、あぶれた幹部を“辞めさせる”のは困難で“辞めてもらう”という形式をとらざるをえず、そのための説得材料として再就職の斡旋が必要となる
という具合です。つまり日本の官庁の雇用システムのねじれの結果として「天下り」という現象が生じているわけです。そのため、この全体の雇用システム自体を見直さない限りは天下り問題は根本的には解決できません。
仮に今のシステムのまま単純に天下りを全面禁止したら、出世競争に敗れた公務員のほとんどが定年まで官庁に居座ることになり、公務員の数が増えて肥大化する上、老害が蔓延し若手の出世が滞って意欲が低下することになります。いいことが何もありません。
そんなわけで天下りは現状では「必要悪」だと思うのですが、ただ天下りの存在が「天下り先を作るための無駄遣いや官民癒着の温床」となっていることは間違いないですし、公務員だけがこのように手厚く雇用を保証されるのもおかしな話なので、将来的には「官庁幹部候補は課長補佐を超えた段階で期間雇用契約に切り替える」などの形で官庁の雇用システム全体を見直して天下りをなくしていかなければいけないと、個人的には思っています。