Q.195 介護のために離職したものの、再び求職活動できないミッシングワーカーが100万人程度いるそうです。宇佐美さんの目にはどう映りますか?(しめさば・会社員)
TV番組で「ミッシングワーカー」特集をみました。彼らは失業者としてカウントもされないそうで、そうなると対策に明確な計画を立てることもままならない、のではないでしょうか。ともあれ、放置することもできない数字ではあります。
あまりにも早い高齢化や人手不足で、キャパシティが明らかに不足している
いわゆる「介護離職」の問題ですが、これは極めて難しい問題だと思います。
本来、介護保険は「家庭ではなく、社会が介護の負担を担うように変革する」という目標の下で創設された制度でした。
その目標に照らして現状を評価すると、それなりに機能している制度ではありますが、あまりにも早い高齢化の進展、人手不足時代の到来、介護業界の労働条件の相対的な低下などにより、キャパシティが明らかに不足していると言わざるを得ません。介護離職の問題は、起きるべくして起きた問題と言えるでしょう。
この問題に関する根本的な解決の方向性は明らかで、「介護業界への政府の資金配分を増やし、投資を呼び込み、労働条件を高めていく」ということしかないのですが、残念ながら簡単にはいきません。
すでに政府の社会保障予算は逼迫(ひっぱく)しており、率直に言って介護業界への資金配分を大幅に増やすには、他の分野、特に基礎年金の国庫負担、を削って介護に充てるしかありません。基礎年金の国庫負担は再配分した資金の一部が貯蓄に回って使われないために経済政策として非常に非効率的で、私自身はこうした政策転換が必要と考えていますが、政治的には極めて困難なことは否めません。
したがって当面は、雇用情勢を改善させて失業率の低下を目指し、生活保護予算を相対的に充実させ(失業者が減れば生活保護予算に余裕が出る)、生活保護の要件を緩和させていくことで対応するしかない問題だと感じています。つまり現状の方針です。
ただそれも対症療法にしかならないので、やはり最終的には大規模な社会保障予算の配分内訳の見直しが必要になると思います。具体的には、賛否両論あるでしょうが、基礎年金の国庫負担率を実質的に下げて、介護や生活保護により手厚く予算を配分することが必要でしょう。
その意味では間接的にこうした政策が実現可能となるマクロ経済スライド政策を発動させるためのインフレ政策のあり方というものを、改めて真剣に考える必要があるのかもしれません。