Q.177 人間だからこそ生み出せる、介護の付加価値とはなんなのでしょうか。(イノ・会社員)
AIが普及して介護ロボットも現実味を帯びる中、意味みたいなものを汲み取るのはやはり機械には無理かなと。そのあたり人間が提供するべき付加価値が眠っている、というか既に顕在化していながら意識されていないものなのかなと考えます。そのあたりにはどういった考えを持っていますか?
コミュニケーションの中から”意味”を汲み取り、それをITの活用で共有・分析すること
質問者様がおっしゃりたいのは「今後、介護分野にAIやロボットの導入が進むと見込まれる中で、人が果たすべき役割・付け加える価値とはなんなのか?」ということなのだと思います。
私自身は質問者様のおっしゃる通り介護の素人なので、この点、明確な答えを持っているわけではありません。そのため専門家のおっしゃっている方を引用する形になりますが、厚生労働省が2016年に開催した「介護のシゴト魅力向上懇談会」における議論は大変示唆に富むと感じました。
介護のシゴト魅力向上懇談会:厚生労働省
この懇談会では、さまざまな観点から介護に関わる一流の有識者たちが、これからの時代の介護職員が果たすべき役割が議論されているのですが、私が特に印象深かったのは慶応大学の神成准教授のプレゼンテーションでした。
神成准教授は、職員の「気づき」という観点に着目し、これまでは介護職員が属人的判断する部分が多かった個別支援について、スマホなどを活用して各職員がこまめに「気づき」の情報を入力・分析するように転換することでエビデンスベースで利用者の状態を把握して、その情報を共有することで介護を充実させていくという方法を提唱されています。
個人的な所感になりますが、やはりロボットやAIが代替できることの大半は「作業」の部分に限られますので、人間同士のコミニュケーションによって得られる知見をどのように情報化してサービスの向上につなげるのか、という視点が今後は重要になってくるのではないかと感じました。
まさに質問者様のおっしゃる通り、利用者とのコミニュケーションの中から機械では読み取れない「意味を汲み取る」ということ、そしてそれをITの活用によってきちんと共有・分析し、サービスの向上に繋げる仕組みを作ることが、今後、人が提供する付加価値の源泉となるのではないでしょうか。
やはり機械は所詮機械で、人間の全ての代わりはできないのですから、我々は機械を利用して我々の得意とする領域に専念することになるということなのだと思います。