Q.176 老後の金融資産を把握していない人が多いそうです。この状況が今後どのようなリスクになりますか?(雷鳥・会社員)
平均寿命と健康寿命がどちらも過去最長です。健康で長く生きられることは個人的に本当に幸せだなと思います。そんな中で、生活をしていくためにはお金を用意することが不可欠なのも現実ですよね。自分の資産がどのくらいなのか、わかっていないという人が少なくないようなのですが、この状況が今後さらに進行する超高齢社会にはどのようなリスクとなるのでしょうか。介護とは直接関係ないかもしれませんが、ご意見をお聞かせ下さい。
資産形成をせずに漫然と歳をとると、年金と生活保護のW受給となる可能性がある
2017年に厚生労働省が発表した平均寿命は男性:80.98年―女性:87.14年、2013年に発表された健康寿命は男性:72.14年―女性:74.79年となっています。1950年の平均寿命は男性58.0歳―女性61.5歳でしたから、戦後70年かけて平均寿命は20年以上延びた計算になります。
我が国の社会保障は国民の人生を「教育期―就労期―引退期」と3ステージに分けて設計しているのですが、寿命が延びた分だけ引退後の人生が長くなったこともあり、その時期の生活を金銭的にどうするか、という不安が高まってきています。
まず思いつく収入が厚生年金なわけですが、現役時代の手取り給与の何%程度が年金として受け取れるかを示した所得代替率について、国は50%を保障すると言っています。
つまり老後になっても、今の給与の半分程度はもらえるということになります。ただ、日本政府の財政の厳しさを考えると、基礎年金の国庫負担分は割り引いて、所得代替率が35~40%程度にまで下がる覚悟をしておかなければいけないと思います。
例えば、私たちの世代で就労時期の月給が平均で手取り30万円の方の年金は、月々10〜12万円程度になることを覚悟しておく必要があると思います。仮に「月々の生活は一人当たり20万円程度必要」と仮定しますと、残りの8〜10万円分は資産や貯蓄の取り崩しか、引退後も働きつづけて収入を得ることでカバーする必要があります。
引退後の生活が20年だとすると、少なくとも <8〜10万円×12ヵ月×20年=1,920~2,400万円> 程度の貯蓄か追加的な収入が必要となります。例えばこの半分を貯蓄で処理するとなれば、年金受給開始時点で960~1,200万円程度の個人貯蓄は欲しいことになります。
大企業に長期で勤めているサラリーマンであれば貯金はなくとも退職金でカバーできる水準ですが、私のようなフリーランスや零細会社に勤務されている方が資産形成を意識せずに漫然と歳をとり続けた場合、後々困って年金と生活保護のW受給するようになる可能性は十分あり、そうした人が増えることで社会保障財政をさらに膨らませて破綻に追い込み、ひいては生活保護受給者の生活を成り立たなくさせてしまう、というような連鎖的な事態は十分に起こりうると思います。
みなさん自分のためにも、社会のためにも、人生はある程度計画的に生きましょう。