Q.170 アメリカでウーバーが医療・介護機関に交通サービスを提供するそうで。日本での実現可能性についてどうお考えですか?(つくし・会社員)
このサービスはけっこう衝撃的で日本でもすぐやって欲しいくらいなんですけど、採算の問題とか介護保険の問題とか色々あると思います。宇佐美さんはどうお考えになりますか?
介護と交通の連携には大きなニーズがあるが、ハードルはかなり高い
医療と交通サービスの連携は重要だとは思いますが、今回のウーバーの仕組みはアメリカの事情に合わせて作られたサービスで、仮に日本で展開するならば、また違う仕組みを考える必要があると思います。
日本以外の多くの国において病院は予約をしなければ診察に応じてくれないことが多く、その意味で予約した患者が来ない、もしくは予約しても病院に行けないという事態は双方にとって非常に大きな機会損失になります。
アメリカは日本と違って保険のシステムが複雑で、専門が一緒ならば全ての医師が診察してくれるというわけではありませんから、なおさらです。そのため今回のウーバーのサービスの目の付け所は面白いと思います。
他方で、日本の保険は一つに統一されていますし、また良くも悪くも、当日にふらっと病院に行けば診察を受けることもできてしまうくらい医療サービスへのアクセスが容易です。
そのため、予約患者の比率というのは7割程度で、また人口あたりの医師数も多いので、予約を逃すことによる機会損失というのは、病院側も患者側もアメリカに比べればずっと小さいと言っても良いでしょう。
むしろ日本では、介護と交通サービスの連携がより求められているように思います。この点については、皆さんの方がはるかに現場を知っていらっしゃると思いますが、介護報酬の要件と合致する形で、ウーバーとは言わずどこかの会社が居宅内介護・送迎サービスを展開できればそれは大きなニーズがあるでしょう。
ただそれには制度的なハードルがかなり高く、単にアメリカのサービスを日本に持ち込めば機能するということではありません。
以上、私として思うことは、医療・介護と交通を結びつけたサービスはもっと増えて欲しいしポテンシャルは高いと思うのですが、社会保障関連業界は国ごとの個別事情があるため、簡単には世界展開できるモデルは作れないだろうな〜という感想です。
実際、日本でも日本独自の事情に最適化した医療介護と交通が連携したサービスが誕生しているようです。サービス業というのは、なかなか一筋縄では行きませんね。