Q.158 有効求人倍率が上がっているようです。この状態が続くと、日本の福祉は厳しいのでは?(ウナギちゃん・会社員)
有効求人倍率の上昇に関しては医療・福祉も例外ではなく、ここ数年は右肩上がりみたいですね。低賃金で忙しくて介護業界は大変っていう記事はみんなの介護でもよく見ますけど、これではいっこうに人手が充足することはないでしょうね。それとも上がった有効求人倍率はやがて自然の摂理で下がるのでしょうか。
寮・社食の提供など、“職場環境の改革”という方向に進むかもしれませんね
前も書きましたが、現在の介護業界の有効求人倍率は非常に高い水準にあります。
2000年代以降、介護業界の有効求人倍率は長らく1.1~2.2の間を推移してきましたが、2015年頃から流れが変わり、新規求人が増えて、新規求職者が減るという状況が続き、2017年後半には有効求人倍率が3.0を超え、足下では4.0にも迫る勢いです。短期的にこのトレンドが止まる兆しは、今のところ統計上見られません。
また、日本の後期高齢者数(75歳以上の高齢者の数)は現在1,750万人弱ですが、ピークが来るのはまだまだ先で、国立社会保障・人口問題研究所の中期予測では2054年の2,449万人ですから、長期的にも人手不足の状況は続くと見込まれます。その意味では、特にサービスの受け手にとって「日本の福祉」は厳しい状況に置かれることになります。
一方、働く側としては当面は労務負担が増してしまいますが、長期的にはこの状況は有利に働くでしょう。大きな構造として、介護業界はこれまで働く側よりも雇う側が優位で、質問者様がおっしゃるように「低賃金で忙しい」業界でした。ただ、これだけ人手不足が明らかになってくると、雇い手と働き手の立場は徐々に逆転して、労働条件が見直されてくることになると思います。
では、介護報酬は上がるのか?というと、このコラムでも繰り返し述べているように、政府の財政には余裕がありませんから、短期的に大規模な増税がない限りはそのような状況は訪れないでしょう。つまりは「ない」ということです。
そのため、民間側のできる範囲の努力で、介護業界の労働者の処遇改善が進められることになると予測されます。その場合、賃金上昇というより、短期的には「育児に理解のある柔軟性に富んだ(特に女性が)働きやすい職場」や「寮や社食などが提供された、生活コストのかからない職場」といった方向性が目指されることになりそうです。
それでも解消されない人手不足は、ITや機械の導入による生産性向上でなんとかカバーしていくしかないのでしょう。その意味ではつまらない結論になりますが「日本の福祉が厳しい」のは事実ですが、その状況を乗り切れるかどうかは政府、企業、労働者、それぞれの頑張り次第なのだと思います。