Q.142 ふるさと納税で「高齢者の見守り」を返礼する動きがありますが、企業と自治体の力合わせはどうあるべきなのでしょうか。(ペペロン・会社員)
最近、「高齢者の見守り」をふるさと納税のお返しに組み込んでいる各地方自治体が増加しているというニュースをよく耳にします。企業と自治体には双方さまざまな制約や目的があると思うのですが、その関係の「あり方」のようなものが気になり、質問させていただきました。
自治体でなければできないことor自治体の本来業務と密接な関わりのある公益性のあることであるべき
「高齢者の見守り」の返礼は、ふるさと納税の使われ方としては珍しく、制度趣旨に合った持続可能性のあるものだと思います。
ご存知の通りふるさと納税は、主として都市部の住人が地方自治体に寄付することにより、翌年度の住民税が寄付相当額減額される制度で、都会に住みながらも出身地や縁のある地方の活性化に貢献する制度として創設されました。
この制度自体の是非について述べる気はないのですが、ふるさと納税はその普及過程で「返礼品型」と呼ばれる仕組みが広がり、純粋な寄付ではなく、寄付の見返りに地方の特産品やサービスを受け取る方式が主流になっているのは、みなさんご存知の通りです。
制度創設当初(2008年度)の純粋な寄付が主流だった頃は、ふるさと納税制度の利用額は80億円程度でしたが、地方産品の返礼品型が主流になってからは388.5億(2014年度)、1,652.9億円(2015年度)、2,844.1億円(2016年度)と、ものすごい勢いで利用額が伸びています。
これに関しては、「税金で名産物市場をゆがめている」「地元産業の自治体依存が加速化している」「実は寄付受け入れ額以上の財政が投入されていて自治体の赤字が拡大している」などさまざまな批判がなされており、税金が流出する側の都市部の自治体に加えて総務省本体も問題視し始めています。
ふるさと納税に関しては、このままでは制度の存続も危ぶまれる状況で、返礼品型という形式を続けるにしても、市場で流通している商品ではない「都会と地方のつながりを重視した自治体ならではのサービス」に返礼メニューを転換することを迫られています。
そのような状況で「見守りサービス」のようなメニューは、自治体にとっても高齢者住民の現況把握につながり、また寄付者にとっても親族の安否を確認できるwin-winの仕組みであると感じるところです。
当たり前のことですが、自治体と企業が組んで展開するサービスは「自治体でなければできないことor自治体の本来業務と密接な関わりのある公益性のあること」であるべきで、そうでなければ市場を歪めることになります。
現在の市場を歪める形のふるさと納税は、近い将来、抜本的な見直しは避けられないと思われますから、これに限らず社会保障と連携したようなサービスの開発が自治体には求められるのかもしれません。その意味では、介護事業者にとっては新しいチャンスが生まれてくることになりますから、今後の動きに期待したいところです。