Q.132 いわゆる“庶民感覚”と呼ばれるものは、官僚や政治家にとっての必要条件なのでしょうか。(庶民A・会社員)
私たちの思う”一般的”な国民の感覚との乖離が感じられる発言や政策を多々耳にします。このような相違は、政治を行っていくにあたって致命的な欠点とはならないのでしょうか。
政治家には必要な要素であり、官僚にはあまり必要ではないと思います
いわゆる「庶民感覚」というものは政治家に必要な要素で、官僚にとってあまり必要なものではないと思います。
「官僚」というのは根拠をもって理屈で物事を考えて、憲法や既存の法制や外交関係との整合性を担保した上で制度・政策を立案していく専門家的存在です。一方で、定義がはっきりしないので持論になってしまいますが、「庶民感覚」という言葉は専門知識無しに政治や政策を日常生活の延長や個人的な印象で判断するような感覚を指すのだと思います。
こうした「官僚感覚」と「庶民感覚」は対極にあり、相容れるものではありませんから、官僚には庶民感覚というものは基本的には不要でしょう。ただ、特に税や社会保険などの制度設計するにあたって「庶民感覚」とはどのようなものかを理解する必要はあり、例えば国民年金を担当しているような人が自営業の所得水準を額面通りに受け取ってはならない(たいていは節税・脱税している)というような知識として「庶民感覚」を知ることは必要不可欠となります。
他方で政治家は「庶民感覚」と「官僚感覚」の間に立って、国民の理解を得つつ、官僚に法案作成を指示して国会でそれを可決しなければならないわけで、その意味で両方の立場を理解する必要があります。官僚が頭で考えすぎたり、国民が感情に流されて理性を失ったりするのをコントロールするのが政治家の役割といえるでしょう。
なお、そうした庶民感覚と官僚感覚の両立ということを放棄した政権というものが民主党政権であったわけでして、庶民感覚で国政を運営した結果、日米関係の冷え込みや事業仕分けの混乱を引き起こしたことを考えると、やはり国民と官僚の間でバランスをとる政治家の重要性というものを改めて感じます。
優秀な人に政治家になってもらうため、みなさんも政治家をあんまり頭から馬鹿にするのはやめましょうね。