Q.128 国民の所得を保障するベーシックインカムという制度、その財源などについて宇佐美さんはどう思いますか?(Kanabun・会社員)
ベーシックインカムについてどう思いますか?もし実現させようとすると莫大な財源が必要になると思いますが、消費税増税はさらに進んでいくのでしょうか。
「完全ベーシックインカム」を目指せば、労働意欲の低下を招く恐れや、かなりの増税が必要になります。日本で導入するなら「部分ベーシックインカム」でしょう
一口にベーシックインカムといってもその実現の仕方には多様な形があり、芝田文男氏の分類によると、大きく
①完全ベーシックインカム:国民全員に無条件で基礎的生活費を賄う給付を支給する
②部分ベーシックインカム:金額は不十分だが、国民全員に無条件で基礎的生活費の一部を賄う給付を支給する
③過渡的ベーシックインカム:従来の社会保障と並行して、国民全員に基礎的生活費の一部を賄う給付を支給する
という3つの形式に分けられるとされています。
このうち最も現実的なのは③で、例えば、基礎年金を保険方式から税方式に切り替えて支給した場合、生涯で見れば結果的にほぼ国民全員に現金が給付されるわけですから、それはある種の「過渡的ベーシックインカム」と呼べるでしょう。
他方で①を目指して国民全員に月々8万円支給すると考えると、財源は年間121.7兆円必要となり、年金、生活保護、失業給付などの諸制度を廃止してベーシックインカムに切り替えたとしても65兆円程度しか財源を捻出できないため、56.7兆円の増税が必要になります。消費税1%あたりの税収が2兆円弱なのでこれだと消費税35%程度まで上げる必要が生じます。これはいくらなんでも非現実的でしょう。
またそもそも完全ベーシックインカムは、必要な人に不十分な給付・不必要な人に十分な給付をすることに直結する上(要は「金持ちに追いゼニ」)、労働意欲の低下や非正規雇用の増加を招く可能性が指摘されており、多くの問題があります。
なので、日本で本格的なベーシックインカムを導入するとしたら、現実的な折り合いは「②部分ベーシックインカム」となり、例えば月々4万円は国民全員に給付し、それ以上の部分は補助的な生活保護などの従来型の社会保障でカバーするようなことになるのではないでしょうか。
なお私自身は、まだ生煮えではありますが③よりな考えを持っていて、将来的には基礎年金部分を税方式に切り替えて拡充、ベーシックインカム化し、他方で厚生年金部分は縮小していくべきと思っています。