Q.125 無届け老人ホームの存在についてどう思いますか?また、無届け老人ホームを減らすにはどうしたらいいと思いますか?(やさぐれこ)
予算の都合や、他に頼るところが無い場合、ケアマネージャー等の紹介で入居するケースもあるようですが、こういったハウスは今後も増えると思いますか?また、無届け老人ホームを減らすにはどうしたらいいと思いますか?
どんな問題があろうと、届け出させて、行政の指導・管轄下において運用していくべきでしょう
ドイツの哲学者のヘーゲルの言葉に「存在するものは合理的である」という言葉がありますが、無届け老人ホームが増えるにもそれ相応の理由があります。「特別養護老人ホームには入居待ちで入れず、他方で有料老人ホームには高すぎて入れない」。そういう人たちのニーズに応えるのが無届け老人ホームということになのでしょう。
ただ、無届け老人ホームに対しては行政の監視が効かず、一部では高齢者が劣悪なサービス環境を強いられたり虐待されたりするようなケースもあり、このまま社会として放置しておくわけにもいきません。そのため2018年度の老人福祉法改正では、都道府県知事が改善命令に従わない無届け老人ホームに対して業務停止を命令できるよう権限強化しています。
しかし、厚生労働省の調査によると2016年12月現在1,650件の無届け老人ホームが確認されており、その多くは法令上の施設基準を満たしていないことが想定されますが、入居者の生活を考えると単純に業務停止命令を発すればすむという問題ではありません。当座の対応として厚生労働省は2015年4月に都道府県に対して発出する老人福祉法の標準指導指針を見直し、都道府県知事の裁量を前提に既存の建物や小規模の建築物についてはハード面で設備基準を満たしていなくてもソフト面でその不備をカバーしている場合、特例的に基準を満たすとみなす措置の導入を、各都道県に促しています。これは無届け老人ホームに届出をしてもらうための一種の規制緩和措置と言えるでしょう。
現実問題東京など首都圏では地価が高く、ハード面で一人一室というような基準は困難である一方介護需要は増えるばかりですから、今後こうしたソフト面でハードの不備を補う介護施設が増えていかざるを得ないでしょう。
陳腐な結論になりますが、こうした行政の動きを踏まえて現状で無届け老人ホームに対応する上で重要なことは、「とりあえず無届け老人ホームに届け出をださせる」ということなのだと思います。届け出を出せば都道府県の担当職員の指導・管轄の対象になりますので、諸々の問題があろうとも、それを把握して少しずつ指導・運用で解決していく道筋が立ちます。この問題は非常に難しい問題ですが、現実との間で試行錯誤しながら折り合いをつけていくしかありません。