和田洋一「丸抱えの終身雇用制度は終わり。「会社」の枠組みをもっとやわらかくして、産業を活性化させていくことが重要」
和田洋一氏は野村證券を経て2003年に株式会社スクウェア・エニックスの代表取締役社長に就任、現在は株式会社メタップスの取締役や関連会社であるメタップスペイメントの代表取締役社長を務める。そんな和田氏の賢人論。「お金の考え方」を中心に、100歳を生きる時代のあれこれについてお話しいただいた。
文責/みんなの介護
みんなが頼りにする予定だった年金は構造的な「困難」を抱えています
みんなの介護 「100歳時代」を生きていくためには、やはりお金のことが気になります。
和田 老後の備えとしてまず思い浮かぶのは、年金ですよね。
でも、年金という制度は構造的に困難なところがあり、「あまり頼れないな」というのが私の実感です。
みんなの介護 たしかに年金制度は複雑で、社会の変化に対して迅速には対応できていない印象があります。
和田 そうですよね。現在80歳以上の方が現役で働いていた1970年代頃の年金制度は「終身雇用と年功序列」が前提でしたから。いわゆる「三階建て」というやつですね。
「一階」が国民年金、「二階」が厚生年金、「三階」が企業年金です。三階の企業年金には2種類あって、一階、二階と同じ厚労省管轄の厚生年金基金と、すでに廃止となった国税主幹の「税制適格退職年金」です。
本来の年金の経済的な働きは、インフレヘッジと所得再分配ですが、日本の年金制度は後者に重点があります。
みんなの介護 現役世代の保険料を引退した世代に給付として移転するという流れですね。
和田 それが高齢化によって破綻します。また、資金運用は主として財政投融資であり、運用益が金利というアップサイドがないものでしかないので、経済成長を運用益に反映できなかった。つまりインフレヘッジにならなかったということですね。「こりゃまずい」ということで、年金資金の一部で株式運用を始めたのです。
そもそも所得再分配に重点があって、自分が今払っている保険料が貯蓄代わりになってくれない。また、そもそも運用成績が構造上たいしたことない。
以上から、いっそのこと自分で選択できる制度を導入すべきとの議論にもなり、米国の私的年金のシステムである「401k」が輸入されました。
みんなの介護 現在はこうした私的年金も選択肢のひとつですが、リスクもありますよね。
和田 そうですね。私自身も、大学を出て就職した会社から外務省への転籍を命じられて、「いったん会社を退職する」という経験をしました。この時に退職金ももらっています。
ところが、一度辞めてしまうと、従来の勤続年数に比例して支給額が増える(年功型の)企業年金や退職金は減らされてしまいます。
当時の人事担当者もわかっていなかったのですが、私はこの時点でもうすでに年金を諦めていました(笑)。
今の時代は”過渡期”と呼ばれますが、むしろ”空白状態”なんです
みんなの介護 年金に頼れないとなると、これからの時代は何を“拠り所”とすれば良いのでしょうか。
和田 40代くらいまでは蓄財よりも「健康」と「人間関係」に投資したほうが良いと私は思っていますよ。
最低限の蓄えは必要ですが、健康で「頼れる」人がいれば、たいていは何とかなるものです。
いずれも年をとると難しくなっていきますから、若いうちから健康に投資して、同世代だけではなく、世代を越えた付き合いを続けていけると理想です。
みんなの介護 具体的にはどのようなことか教えていただけますか?
和田 私が言う「健康」の定義は、日常生活を送ることができて、他人とコミュニケーションが図れること。あとは「カラダの声」を聴いて対策できることです。
たとえば「喉が痛い」とか「左肩が痛い」など自分の状態に気づいて対応できるということですね。これができているうちは「健康」と判断できます。
一方の人間関係については、だんだんと狭く閉ざされてきているな、という印象があります。
昔と違ってSNSという飛び道具は持っていても、“直接的な関係”はむしろ狭くなってきていると感じることはありませんか?
みんなの介護 特に若年層では、それ以前の世代と比べて人間関係が希薄化していると言われることもあります。
和田 ええ、そういうことですよね。
かつては大企業を中心に、会社はコミュニティを家族主義で管理していて、会社員であることが「ID」でした。社宅に住んで、結婚相手も社内で見つけて、女性は結婚するタイミングで辞めていましたよね。
社内では先輩・後輩などの世代を越えた付き合いもあり、居酒屋では先輩がおごる、後輩はそのまた後輩におごるという循環もできていました。
みんなの介護 それが当たり前すぎて、だれもそれを疑ったりしませんでしたね。
和田 それから、定年まで勤めあげるのが前提なので、社内研修や福利厚生の内容も充実していました。いつ辞めるかわからない社員にそんな費用はかけられませんからね。
こんな具合で、会社はあらゆる面でわずらわしいけれども、面倒見が良かったのも事実です。全体的に会社の制度が同じでしたから、社会的にも一貫性がありました。
ところが1990年代から、この一貫性がどんどん薄れ、失われてきています。
過渡期というよりは「空白状態」になっていますから、今はこの空白をどう埋めるかが課題となっています。
みんなの介護 会社に属せずに拠り所がなくなり、人間関係を作るのも難しくなっているのですね。
和田 はい。とはいえ「会社はダメだ」「国家は何もしてくれない」と言っているだけではいけないと思います。
投資だと思って、若い人にはたくさんの人間関係を積極的に築いてほしいです。先輩は後輩におごってあげて「老後は頼むよ」と言うくらいでも良いと思いますよ。
このようなコミュニケーションは行政頼みではなく、自分主体ででできることですよね。
それから、適当なお金のバラマキは何にもなりませんが、本当に困っている人にお金を貸すことには価値がある。
それぞれができる範囲で行動していけば、おのずと人間関係も洗練されていくのではないでしょうか。
テクノロジーをキーワードに、”定年制”から”一生稼ぐ”へのシフトが起こります
みんなの介護 お年寄りだけではなく、若者のなかにもすでに将来への金銭的な不安を抱えている人は多いようです。
和田 「会社」という形式にこだわらず、「一生稼ぐ」という意識はとても重要ですね。
これまでは「働く」イコール「会社に勤める」だと思われてきましたが、そもそも「会社勤務」と「働く」ということは一致しませんし、給料だって現金ではなくても良いかもしれません。
いろいろな働き方の形を増やしていくことで、会社員ではなくても経験や信用があれば稼いでいける可能性があるのです。
若い人とまったく同じとはいきませんが、テクノロジーがカバーすることで、高齢者や障害のある方が働くことはすでに難しくなくなってきています。
身体の一部が動かなくなっても、頭がしっかりしていれば周囲の人やロボットなどの助けを借りて働いているケースが増えているんですね。
みんなの介護 認知症となっても、周りのサポートを受けて働くケースもあります。
和田 はい。かつてのような丸抱えの終身雇用制度には戻れませんから、さまざまな働き手を確保して、新しい働き方を考えなくてはいけません。
私は、「会社」という枠組みをもっとやわらかくして、産業を活性化させていくことが重要だと考えています。
兼業や兼職もどんどん認めて、人材流動化のシステム作りと併せてセーフティネットも整備していけば良いですね。
若い人もシニアも多様な働き方ができるようになれば、産業の活性化にもつながっていくはずです。
みんなの介護 100歳まで生きる方々を支えられる社会の実現、具体的にはどのようにして達成できるのでしょうか。
和田 お年寄りと接することについての事例を積み上げていくしかないと思います。
ボランティア的に日常生活を介助する、お年寄りが作っているものがあれば買ってあげる、あるいはそれらに付加価値をつけて広く売るなど、いろいろなことができると思います。
また、カフェなどでは給与ではなくチップ制にして、お客さんがサービスに対して相応のお金を払うこともできますね。介護さながら、働いて稼げる方をもっと増やせる方法もあるでしょう。
いずれにしろ「未来」はわからないので、不確定なことを否定的に考える理由はありません。
高齢化や人手不足に愚痴を言う前に、新しい社会と文化を作るためにできることはたくさんあると思います。社会を作るのは“人間”なんですから、一生稼いで助け合える社会を目指したいですよね。
年数が制限されている補助金頼みの事業は本当に難しいです
みんなの介護 これまで多くの会社で経営に身を投じてこられましたが、現在の日本の介護ビジネスの状況について、どう考えますか?
和田 詳細はきちんとデータを確認しなければわかりませんが、状況はかなり厳しいようですね。
みんなの介護 はい。東京商工リサーチが発表した「老人福祉・介護事業の倒産状況」によると、2018年の「介護事業」倒産件数は106件でした。
この件数は前年を下回ってはいるものの、倒産件数は過去3番目に多いという状況です。
和田 データでは、倒産までの年数が短くなっていることと、負債総額が低いことが目立ちますね。
これは、零細の事業者が多いことが原因でしょう。
みんなの介護 はい。行政の助成金制度を活用して起業する零細の事業者は多いようです。提出されたデータでも「計画性に問題のある事業者」の存在が指摘されています。
和田 私は補助金について「反対派」です。いろいろな会社経営に携わってきた実感として、補助金が前提の事業計画はマーケティングを間違えた瞬間にアウトとなります。
みんなの介護 介護ビジネスに限らず、マーケティングの見極めは非常に難しい問題だと言われますね。
和田 はい。どの分野においても事業には綿密なマーケティングと計画が不可欠です。
この計画に最初から補助金を入れてしまうと、どうでしょうか。当然ですが、補助金は期限が決まっています。
たとえば2年目まで補助金をもらっていたにもかかわらず、3年目からはもらえないとなると実質的な売り上げダウンになってしまいます。
最初から利益を考えず、「収支トントンで少し儲けが出れば…」というようなビジネスの計画では、3年目に突然売り上げがなくなった途端、ビジネスにかなりの支障が出てしまう。
ですから、補助金頼みの事業は本当に難しいと思います。

「価格差」で儲けるよりは「ビジネスの持続」が必要なのが介護市場です
みんなの介護 おっしゃる通り、補助金頼みの経営では限界がありますね。
また、データが示すように、深刻な労働者不足も背景にあります。
和田 労働者不足を補うために賃金を上げてしまい、かえって経営を圧迫しているケースは他業界でもみられることです。
ここで、一般的なビジネスを考えると、すぐに思いつくのは「価格差」の概念です。
典型的なのは、経費を安くできるアジアなどの海外でモノを生産して、日本で高く売るビジネス。こうすれば価格差で儲けることができますよね。
みんなの介護 そうですね。そんな狙いがあるのか、「経済活動の連携の強化」の観点からインドネシアやフィリピン、ベトナムから「外国人看護師・介護福祉士候補者」の受け入れが始まっています。
和田 ただ、介護ビジネスの場合は「価格差で儲ける」だけでは、ビジネスを持続させるための利益を生み出すのには不十分だと思います。
そこで、もうひとつ重要な概念として「スケール」が出てきます。
介護の分野に限らず、「価格差」と「スケール」の2つを事業の設計に入れなければ、ビジネスとしては成り立ちません。
では、介護ビジネスはどこでスケールさせれば良いのでしょうか。
みんなの介護 それを考えるときには介護分野の”特徴”のようなものをしっかりと把握する必要がありそうです。
和田 スケールはシステムやテクノロジー、あるいはマーケティングなどが考えられますが、介護ビジネスと他分野との相違点は、介護される側に「追加的な収入がない」こと。
なので、これらを織り込んだとしても、うまくはいかないでしょう。
介護ビジネス業界は、循環しない経済を対象としている点について自覚していなかったようです。
その点について改めて自覚的になり、これからは介護ビジネスを循環経済にするためにどうすれば良いかを考える必要があります。
介護されながらでも働ける人はたくさんいますし、最近では重度の障害がある方でもロボットの力を借りて仕事ができるようになってきましたからね。

人間とサイエンスは対峙し合う関係ではないと考えます
みんなの介護 自宅にいながらカフェで動くロボットを自由に操作することも、すでに実現しています。
和田 そんな事例のように、フィジカルな部分はテクノロジーで補えますから、介護されながらでも俳句の指導をしたり、ウェイターをしたりすることは可能です。
大儲けはしなくても、カフェならお客さんからチップなどで稼ぐ手段もありますよね。
みんなの介護 なるほど。そうした利益で施設の利益の補填をしていくことも不可能ではなさそうですね。
和田 はい。私は以前から人間とサイエンスとは対峙するものではないと考えています。
肉体的なハンディや空間や時間の移動はテクノロジーがカバーしてくれるので、いろいろなことができるようになります。
若い頃とまったく同じようには難しくても、お年寄りとなっても社会に貢献することは十分に可能なはずです。
みんなの介護 介護されている方も働ければ、施設や家庭以外に「居場所」を作ることもできますね。
和田 そうです。これからは、テクノロジーをフルに活用して「循環経済じゃない」ところからでも「稼げる経営」は可能です。
介護の事業を計画するなら、こうした視点が大切なのではと思います。
みんなの介護 先ほどお話しいただきましたが、これからは「会社員」という枠にとらわれずに、さまざまな働き方をすることで、「一生稼げる」道ができますね。
和田 はい。そうしてお年寄りも稼いでいければ、介護福祉施設の収益にもなる。老若男女が揃って働けるようになった結果、介護ビジネス業界だけでなく、社会全体が活性化されていくはずです。
AIをどれだけ社会的に認められるか。制度的な議論が進んでいくでしょうね
みんなの介護 少子高齢化を背景とした労働力不足が深刻だと言われる一方、近い将来に「AI失業」の時代が訪れると懸念されています。
和田 たしかにAIのほうが情報を早く処理できる分野は多く、AIに代わられたり、消えたりする仕事もあるでしょう。
しかし、私はすべての人間の仕事が奪われるということにはならないと考えています。
たとえば膨大なデータを迅速に処理することなどはAIの範疇(はんちゅう)です。
一方のAIは「萌え系」のイラストを描くことはできますが、AIに「萌え系」やそれに取って代わるものを新たに発明させることは難しい。
こうしたメタ的な発想もそうですが、経営の場面で重要となる、いわゆる「フレームワーク」は人間が作るもの、むしろ人間にしかつくれないものです。
みんなの介護 人間がするべきこと、人間にしかできないことを精査していく必要がありますね。
和田 これからはAIができることはAIに任せ、人間は一段階上のレベルで仕事をしていけば良いですし、それができる人が生き残っていけるのだと思います。
そもそもAI(Artificial Intelligence)とは、単なるアルゴリズム(手順・計算方法)でしかなく、意識しないだけで私たちの周囲にはAIがあふれています。
たとえばスマートフォンやデジタルカメラにもAIが搭載されていますが、それをもって「私たちはAIに支配されていて窮屈だ」とは言いませんよね。むしろ、そうした機器がないと困るくらいです。
また、長く生活に定着した結果、AIとは呼ばれなくなったものもあります。
たとえば、かつてのワープロ専用機の予測変換機能は「AI変換」と呼ばれていましたが、これがどの機器にも当たり前のように搭載されるようになってからは誰もそれを意識していませんよね。
みんなの介護 課題はどういったところにありそうですか?
和田 社会のありようだと思います。「社会がAIを受け入れているかどうか」ということですね。
病気の診断に関して「医師免許を持っている人の判断」と「精巧なAIの判断」のどちらが正しいかを考えるとき、AIが真に受け入れられて定着している社会であれば、AIの判断も受け入れられるはずです。
でも、AIが社会的に認められていないと、「機械に命の判断をさせるとは何たることだ」と批判されるかもしれません。
今後は、AIを社会にどう定着、実装させるかを実務的に議論し、制度的に機能させていくことが求められると思います。
私たちは字義どおり、AIと”共生”しているんです
みんなの介護 日進月歩のテクノロジー全般についてはどのようにお考えですか?
和田 これまでいろいろな会社を経営した経験から、大きなテーマをいくつか考えています。
なかでも「現状のテクノロジーとフィジカルな部分をどう連携させるか」ということは特に重要です。
以前はAIへのインプットは手作業で行っていましたが、それも最近ではキャプチャするだけで終えられることがあります。
みんなの介護 出力されたデータを別の機器に取り込んで利用する、などですね。
和田 そうです。2012年のことでしたが、米Googleは「AIが大量の画像から『猫』の判別に成功した」と発表しました。
AIには事前に「猫」がどういうものかを教えていなかった、つまりAIが自力で猫を学習したということが、世間を驚かせましたね。その後もAIは進化し続けていて、昔はできなかったことが今はできるようになっているという事例は多いですね。
そもそも人間と機械の接続が受け入れられていくといくことは、歯のインプラントや心臓のペースメーカーが気にならないということから明らかですし、スマホやパソコンに入っている膨大なデータは「脳の一部」と言っても過言ではないくらい人間の機能を代替してます。
みんなの介護 脳の一部…たとえばどのようなことですか?
和田 私が証券会社で営業を担当していた頃は顧客100人の電話番号くらいは暗記していたのでそらで言えました。
でも今はスマホがなければ誰にも電話をかけることができません。それどころか、自分の電話番号もわからないくらいです(笑)。電話もそうですが、それ以外にも私たちは今、スマホに多くのことを頼っています。
データのバックアップを取っておかなければ万が一のときには取り返しがつかないこともありますが、近未来のSF映画のように、私たちはまさにコンピュータと「共生」しているんですね。
医療・介護の領域は、AIによって効率化できることが特に多いはず
みんなの介護 これからはAIで人手不足を補い、人間はAIができない仕事を担当する、つまり“住み分ける”ということでしょうか。
和田 はい。自動車なんかも今は人間が運転していますが、最終的にはほとんど自動運転になると思いますよ。AIにやらせた方が効率的なことは他にもありますが、特に医療や介護の分野は多いと思います。
たとえば肺がんの検査では、今まではCTスキャンの画像データを医師が目視で確認してきました。
膨大な画像から小さな影を見つけるような集中力が求められる仕事などはAIに任せられる可能性があると思います。
みんなの介護 介護の現場でもそのような動きが出る可能性はありますか?
和田 十分にあると思いますよ。本人が曖昧にしか表現できない体調などを血圧や血流、発汗などの大量のデータから素早く察知するのはAIの方が向いています。
こういうことをAIが処理してくれれば、介護職の方は利用者さんとの自然なコミュニケーションに多くの時間を取ることができます。業務だからといって無理やり健康状態を聞き取ろうとしたりすると、人間関係もギクシャクしてしまいますよね。
ポイントは「科学と人間は共生関係にある」という世界観で、どのようにAIを使っていくかということです。
中編でもお話しましたが、身体的なハンディをテクノロジーが補うことで働ける人が増えますし、新しい働き方の可能性も広がっていくと思います。
行政の代行機関として機能した会社のカタチは変わっていく
みんなの介護 代表取締役社長を務めておられるメタップスペイメントは、企業理念として「テクノロジーでお金と経済のあり方を変える」と掲げておられます。
和田 はい。我々はカード決済をはじめ、コンビニ決済や店舗向け端末決済などの決済代行を行っている会社です。
働くという話でいくと、2018年10月からは給与即時払いサービスを「CRIA」という名称でスタートさせました。
これは企業様のご負担なく、従業員が申請すれば給与の中から一定の割合の金額を前払いでもらえる“福利厚生”です。
みんなの介護 給料の「前払い」に着目されたのはなぜですか?
和田 実は、このシステムの本丸は違う点にあります。
会社の行政代行機能がなくなったときに、これに代わって従業員に対するサービスを保証してあげようという試みの端緒です。
従来の会社は、社会保険や納税などについて「行政の代行機関」としても機能してきました。今も社会保険料や所得税、住民税などを会社が天引きして納めていますよね。
しかし、働き方が多様化を続けていくなかで、特定の一社に対してのみフルタイムで働くという人は相対的に減っていくでしょうから、丸抱えしていない社員にはお金をかけたくない会社も出てくることが想像できます。
これからは会社員一人ひとりが自分で確定申告する時代になるかもしれません。
みんなの介護 テクノロジーの進化で働き方が変われば、会社のあり様も変わる。こうした変化のなかで会社のシステムもサポートされるのですね。
和田 はい。「シンギュラリティ(AIが人類の知能を超える転換点)が怖い」と言われることも多いようですが、私はポジティブに未来を想像して、ビジネスにつなげています。
まだ決まっていない未来について、わざわざ悲観的になる必要なんてどこにもありませんからね。
撮影:公家勇人
連載コンテンツ
-
さまざまな業界で活躍する“賢人”へのインタビュー。日本の社会保障が抱える課題のヒントを探ります。
-
認知症や在宅介護、リハビリ、薬剤師など介護のプロが、介護のやり方やコツを教えてくれます。
-
超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている自治体、企業のリーダーにインタビューする企画です。
-
要介護5のコラムニスト・コータリこと神足裕司さんから介護職員や家族への思いを綴った手紙です。
-
漫画家のくらたまこと倉田真由美さんが、介護や闘病などがテーマの作家と語り合う企画です。
-
50代60代の方に向けて、飲酒や運動など身近なテーマを元に健康寿命を伸ばす秘訣を紹介する企画。
-
講師にやまもといちろうさんを迎え、社会保障に関するコラムをゼミ形式で発表してもらいます。
-
認知症の母と過ごす日々をユーモラスかつ赤裸々に描いたドキュメンタリー動画コンテンツです。
-
介護食アドバイザーのクリコさんが、簡単につくれる美味しい介護食のレシピをレクチャーする漫画です。