鈴木亘「今の高齢者は、インフレ分を考慮して今の金額に換算しても6分の1しか年金を払っていない」
学習院大学の教授である鈴木亘先生は、年金をはじめとする社会保障に関する著書も多数。そのラインナップ、「年金は本当にもらえるのか?(ちくま新書)」「社会保障の『不都合な真実』(日本経済新聞出版社)」
などからもわかるように、まさに“社会保障のプロ”。さらに、橋下徹氏とともに大阪市の改革にも携わるなど、行動派の経済学者である。そんな鈴木先生へのインタビューでは、日本の社会保障の問題点のみならず、大胆な改革の提案など、多岐にわたって話を聞いた。
文責/みんなの介護
日本には1600兆円もの暗黙の債務がある
みんなの介護 鈴木先生は数多くの社会保障に関する著書を出されていますが、今の日本の社会保障について、どのようなところが問題だと感じていますか?
鈴木 今の日本の社会保障制度が持続不可能であることは、ほぼ明らかだと思います。国と地方を合わせると、社会保障給付費は約117兆円にも上ります。これに対して、実際の保険料収入は約65兆円くらいですから、実は約50兆円もの穴が空いているんです。
みんなの介護 その穴は税金で埋めているんですよね?
鈴木 建前はそうなんです。ただ、その税金自体が日本ではあまり徴収できていないので、ざっと計算して、50兆円の半分くらいは借金で賄っているなんです。つまりは、若者や子どもたちへのツケ回しです。
もはや、日本の社会保障制度は、ビジネスモデルとして完全に破たんしています。持続不可能であるとともに、その負担は若い人やこれから生まれてくる日本人にしわ寄せされています。
これからも日本がどんどん成長して、若い人たちがこれから豊かになっていくのであれば、「高齢者たちのために、ちょっと我慢してよ」と言えるかもしれませんが、現実はその逆です。高齢者のほうがお金を持っていて、若い人は給料が低くて非正規で働いている人も多い。今後はさらに日本が成長しなくなる時代に突入するので、むしろ、高齢者が若者を助けるべきというのが現実です。
みんなの介護 負担をまわすというのは、保険料が上がる、年金受給額が減る、増税といったことですか?
鈴木 その通りです。しかし、私はもはや、そうした負担増すら政治的に実行できなくて、日本の財政がいずれ破綻する可能性のほうが高いと思っています。実際、保険料や消費税を上げたり給付をカットしたりするのは、政治的に極めて難しい。今の政治家たちが高齢者に対して「負担してください」と言ってしまうと、選挙のときに高齢者を敵にまわしてしまうので、改革を口にできません。そうすると、借金がどんどん膨れ上がってゆき、いずれ財政は破綻します。
すでに、日本の借金は1200兆円くらいになっています。日本人が年間に稼ぐお金の総額であるGDPが500兆円ぐらいですから、我々が飲まず食わずで2年半くらい働いて返さない限り、既に返済できない金額になっています。我々の稼ぎの2年半分にあたるという水準は日本の歴史上、過去最大です。
第二次世界大戦の末期でもこんな水準に達していません。今のギリシャやイタリアと比較してみても、稼ぎの2年半分というのはダントツでトップですよ。さらに、社会保障においては、「暗黙の債務」というものが発生していて、これまたすごい金額なんです。
みんなの介護 暗黙の債務とは?
鈴木 今、日本政府が抱えている借金は1200兆円くらいですけれども、これとは別に、「これから社会保障としてお払いします」と、すでに高齢者に支払いを約束している債務額が1600兆円あります。まだ、赤字国債として目に見えるものではありません。しかし、これから払うと日本政府が約束している以上、存在する債務なので、暗黙の債務と呼ばれています。
みんなの介護 その数字というのはちゃんと公表されているんですか?
鈴木 年金だけは公表されています。年金の場合は積立金がありますので、それを引いた純債務額を厚生労働省が発表しており、2009年の時点で800兆円としています。しかし、厚生労働省は自分の管轄だと思っている厚生年金と国民年金の分しか試算していないので、共済年金も合わせ、医療保険、介護保険分も加えると、1600兆円という途方もない暗黙の債務額となります。
みんなの介護 金額が大きすぎてイメージできないです…。
鈴木 どういうことかというと、日本政府は医療、年金、介護の社会保障制度を運営しています。これは、今いる高齢者たちに対して、死ぬまで社会保障はお支払いしますと約束していることと同じです。
例えば年金について言うと、「国にお金がないからといって、75歳になった人には年金の支払いをやめます」と、いきなり高齢者を切り捨てるわけにはいきません。彼らには、どんなに国庫にお金がなくても、死ぬまで年金を支払うと約束しています。医療も同じで、死ぬまで医療保険が適用されますよね。高齢者の場合は1割負担なので、実に9割を現役世代が保険料や税金で払っています。介護保険も同じ仕組みです。高齢者に対して、死ぬまでに払うことになる金額は、日本人の平均寿命を考えると大体いくらと予想できますよね。それを高齢者の数だけすべて足し合わせた額が社会保障の純債務額で、それがけっこうな金額になっているわけです。
みんなの介護 高齢者の方の医療費、介護費の9割を現役世代が払っているわけですからね。
鈴木 ところが、保険料として高齢者から徴収してきたお金がどれぐらいかというと、年金だけでも債務額の6分の1くらい。医療や介護はほとんどとっていません。介護なんて最近できた制度なので、ほとんど払ってもらっていません。高齢者から今払ってもらっているお金もありますが、そんなのはもう微々たるもんですよ。
例えば、有料老人ホームに入るときにかかる入居金などは自分で払うお金ですが、入居後にかかるお金、つまり介護サービス費用については、彼らの払っている保険料では全然足りないことは明白です。つまり、高齢者に「これから社会保障としてお支払いします」と国が約束しているにもかかわらず、高齢者からとっているお金は微々たるものです。ということは、その差額は誰かが払わなければならないでしょう。その差額が1600兆円あるわけなんですよ。
みんなの介護 年金だけみても6分の1というのは、昔の貨幣価値を含めてですか?
鈴木 それを含めて、です。昔払った金額はインフレ分を考慮し、利子率で運用されていると考えて今の金額に換算しても、6分の1くらいしか払っていないことになります。
地震が何年後に来るのか断言できないのと同じで、財政は10年後に破綻するか20年後に破綻するかわからない
みんなの介護 なぜ、これほどの財政難に陥ってしまったのでしょうか。
鈴木 少し難しい言葉ですが、今の日本は「賦課(ふか)方式」の財政方式で、年金や医療保険、介護保険を運営しています。要するに若者が高齢者を丸抱えという制度で、高齢者たちに支給する年金を、そのときの現役世代たちが払う制度になっています。でも、わりと“知られざる不都合な真実”なんですけども、もともと「自分のことは自分でやる」という積立方式で始まっているんですよ、日本の年金制度は。
みんなの介護 途中で変えてしまったんですか?
鈴木 積み立て制度とは要するに、自分たちが老後に使うお金を自分たちで払ってください、という制度なので、収支が均衡しているんですが、1970年ぐらいに、積立方式から、高齢者たちへの“大盤振る舞い”を始めてしまい、自転車操業の賦課方式に変えてしまったんです。
その大盤振る舞いを決めたのは田中角栄で、もう生きていないので責任を問えません。ま、政治家を擁護するつもりはないですが、田中角栄の頃って今よりも高齢者が少ないんですよ。だいたい現役10人に対して、高齢者1人くらいの割合だったので。高齢者1人分の年金を10人で割ったら大した金額じゃありません。
みんなの介護 それは、どんどん高齢者が増えて若者が減っていくことがすでに予想されていた時代の話ですよね。
鈴木 そうですね。今まさにそうなんですけれども、若者が少なくなってくる時代に、大盤振る舞いの賦課方式をやってしまったらどうなるかは予想できたはずなんですが、やってしまったがために、現状の惨状になってしまっています。あと100年くらいは高齢化が進むので、ますます惨状が続く。それを象徴する金額が、先ほどもお話した1600兆円という金額なんです。
みんなの介護 良くない状況がますます進むと、「働いて払ってきたものがもらえないとはどういうことだ」「だったら払うのをやめるぞ」といった風潮になりかねない気も…。
鈴木 まず、真実が明らかになっていないのが問題ですよね。それが一番、困っちゃうんですよねえ。「このままいくと、こうなります」「あと30年くらいで年金が終わってしまう可能性があるので、年金制度を伸ばすためには荒療治が必要です」と政府が正直に言うんだったら、みんな「うーん」って考えますよね。でも、政府は絶対にそんなことは言わず、「100年安心です!」だなんて言っている。国民が何も知らないうちに、莫大な暗黙の債務が作られ、負担が先送りされてゆく。
みんなの介護 それでどんどん先送りになっているっていう状態で、やっぱり国を支えるのは労働者であって…。
鈴木 本当ですよね。どこからこの糸をときほぐしたらいいのか、簡単にはいかない問題なんですけれども。例えば原発の場合、安全神話で我々は生きてきました。原発は危ないと言うことすらタブーという感じでね。「危ないなんて言ったら、何も知らない国民にまで波及して慌てるじゃないか」「国民が反対するかもしれないから、一切、もう言うな」と。「危険なんかなかったことにしよう、いかなる可能性も考えることすらだめだ」と。で、震災が起こって、「なんだこれは!」という事態にみんな、はじめてびっくりしたわけです。
みんなの介護 真実を隠すことで次世代へのツケとしてまわすことになっている…と。それは年金も同じ、ということですか?
鈴木 同じどころか、もっとひどいです。原発は、爆発するかメルトダウンするか、地震が起きない限り隠し通せる可能性がありますが、年金の金額の場合、借金が確実にどんどん積み上がっています。10年後に破綻するか20年後に破綻するかわからないですが、確実にやってくる破綻のシナリオを隠しているというのは、極めて不誠実です。いったい、どういうことなんですか?って思いますね。
本来は政治家に責任を問うべきでしょうけれど、田中角栄は亡くなっていますから。もちろん正確に言うと、田中角栄だけのせいじゃないですけどね。田中角栄が首相だった頃は高度成長期の終わりくらいだったので、まだバラ色のシナリオを描いていたのは、ちょっとしょうがないかな、という面もありますって。問題は、石油ショックのあと、経済成長率が半分くらいになって、バブルのあともさらに半分になっていますけれども、その期間の政治家や官僚たちが何もしなかったことです。確実にまずいことがわかっていて、まずいとわかってからもう40年くらいたちますけど、その間に何もしなかった人たちの責任が一番大きいと思います。
実は、国も、現状をまったく発表していないわけではないんです。年金でいうと、800兆円の純債務があることは厚生労働省も認めており、300ページぐらいある分厚い年金数理レポートの真ん中あたりにちらっと書いてあります。それを素人が見つけろっていうほうが無理なんですが、常に官僚は正しいんですよ。批判されたときのために、きちんと計算しましたというアリバイだけは必ず残している。しかし、問題は、国民がそれをみつけられず、事態の深刻さに気付かないということです。
第三者機関を作って、国民に社会保障財政の現状を明らかにすべき
鈴木 だから私は、政府内に第三者機関を作って「現状はこうなっていて、今のままいくとこうなります」ということを、国民に分かりやすく、明らかにしてほしいと思っているんです。国民が、「このままいくとまずい」ということがわかっていれば、「では何ができるか」という改革議論が始められます。だけど“100年安心です、大丈夫です”と言われたままで、ある日突然その災難がやってくるのは、あまりにまずいんじゃないんかと思います。
みんなの介護 正しい情報をわかりやすく国民に提供するのは、官僚や政治家の仕事ではないんですか?
鈴木 厚生労働省の官僚にとって、それをする動機はゼロですよ。事実を公表したとしても、マスコミや国民から叩かれるだけですから。正直に公表したら、みな激怒して「お前ら責任とれよ」ということになる。だから、まず、「官僚に事実を発表しても、責任をとらなくても良い」という仕組みを作ってあげなければなりません。そのうえで、事実を公表させる。厚生労働省が自分自身で事実を公表すれば、それをわかりやすく国民に説明するのは我々や政治家ができます。厚生労働省が発表した内容に基づいて議論や解釈をするのですから、国民に対する信憑性が違います。国民の心に届くものになると思います。
みんなの介護 事実がわからない限り、正しい判断はできないですからね。
鈴木 ただ、官僚は終身雇用、年功序列の世界。死ぬまで縛られて生きているようなもので、途中で責任をとらされる羽目になると大変な損失になるわけですよ。幹部になって組織の上にいけばいくほど、守るべきもの、背負っているものだらけです。特に、どんどん大きくなる退職金や年金、天下り先を背負っているので、身動きできずかわいそうなものです。下手に改革になんかに手を出して全てをパーにしないように、極端な事なかれ主義で生きていますから、リスクを負うことなんかできないですし、しようとはしないでしょうね。
みんなの介護 出世するほど抱えるものが大きくなって、保守的になってしまうんでしょうか。
鈴木 もともとそういう安全志向の人が上に行く社会です。担当官庁である厚生労働省の官僚がリスクや責任を取れないのはよくわかっているので、私が言っているのは、会計検査院や、総務省の行政評価局、公正取引委員会など、当事者ではない官庁が一つになって監査を行い、事実を発表するということです。こういうことはアメリカもGAO(アメリカの会計検査院)がやっているし、イギリスにもそういう仕組みがあります。当事者じゃない政府機関に、「こういう状況が現状です」と言ってもらうしかないんです。それは、政治家が決断すればできると思いますよ。
みんなの介護 第三者の監査を入れるということですね。
鈴木 今挙げたような官庁が合併して巨大官庁を作れば、そこに権限と予算がつくので、会計検査院や公正取引委員会も自分の利益になります。事実を明らかにできるとなると、厚生労働省の官僚自身も、実はホッとすると思いますよ。責任を取りたくないので自分からは言いだせないのだけれど、ほんとはこのままではまずいと思っていますから。他の政府機関が勝手に言ってくれるのであれば、仕方がないとあきらめもつきます。でも、社会保障財政の現状が明らかになれば、少なくとも政治家は無茶なバラマキを厚生労働省に求めることができなくなります。それは、厚生労働省にとっても得なことです。
そして、ホッとするのは厚生労働省の官僚だけでなく、与党の政治家も同じだと思います。与野党の政治家も「事実を明かしたら負け」みたいなチキンレースをやっていますから。政府の第三者機関が事実を明らかにすれば、他人がやったことですから、それは仕方がないと受け止められます。現状の財政の厳しさがわかれば、「あれをタダにしろ」なんて有権者から言われることは減るだろうし、与党の政治家も実は助かります。このように、第三者の機関を作って事実を明らかにすることは、実は皆にとって得なのです。このあたりから、解決の糸口ができるんじゃないかなと思います。
政治家や官僚がリスクをとれるようにならないと社会保障改革は進まない
みんなの介護 先ほど、アメリカやイギリスでは第三者の監督庁が国の財務状況を公表していると伺いました。日本でも、そのような機関を作れないのでしょうか?
鈴木 まず、その前段階として情報を公開する習慣や義務がないですよね、日本には。
みんなの介護 ということは、諸外国の人たちと比べると、日本人はブラックボックスに置かれているような状態なのですか?
鈴木 まさに、ブラックボックスにいる状況です。特に、年金に関してはブラックホールですね。
例えばアメリカの場合、カリフォルニア州の公務員の共済年金や、私学共済年金などでは、投資先は自分で選択するんです。国債で安全運用してほしいとか、株でやってほしいとか、一応は選べるんですよ。そして随時、「収益データが出ました」「あなたの年金は将来減らされる可能性があります」などと、レポートが届きます。アメリカは自己責任社会ですからね。
みんなの介護 他国で社会保障の問題をうまく回避している例はありますか?
鈴木 スウェーデンの年金改革は非常に参考になると思います。年金に関しては、どうせ国民にとって不都合な真実を明らかにした上で厳しいことを言わなければいけなかったので、「この際、与野党みんなで責任をかぶりましょう」ということになったようです。与野党が政争の具にしないことを協定し、超党派の改革論をまとめて、思い切った改革をやったんです。
相当批判されましたが、みんなの責任ということにしたので「俺たちは違う」という政党はいないわけで、改革がうまくいったんです。金額をばっさり切ったり、積立方式を一部取り入れたり。いろいろな国のお手本になる抜本的な改革ができました。
みんなの介護 日本でも、同じようにできないんでしょうか?
鈴木 これは非常に重要な話なんですけど、スウェーデンの場合は、あらかじめ情報をきちんと公開していたんですよ。スウェーデンという国は、医療や介護も全額税金でやっていて、年金はちょっと違いますけど、とにかく常に情報を国民に公開しています。その情報を知り、国民もうすうす“やばいな”と思っていたところなので、正しい改革ができたんです。
日本の場合、出発点として情報公開をまったくしていなくて、原発村みたいに安全神話になっているから、「まずいですね」と口にした途端、言った人が批判されるでしょ?まずは事実が国民の中で浸透していないと、その上にどんな改革をしようとしても、実現はできないでしょうね。
みんなの介護 事実が明らかにされれば、スウェーデンのような改革ができるかもしれないですね。
鈴木 もうひとつ重要なことがあります。改革をやるときは、リスクをとれる人間を制度的に作らないとダメですよ。官僚がリスクをとることはあり得ないので、政治家がそうあるべきなんだけど、今はしょっちゅう選挙をやっているでしょ。改革しましょうなどとリスクをとったら、次の選挙で当選しないわけだから、現実的には無理。政府の中にいる有識者の場合は、まったく権限が与えられていませんし。勇気をもって言ったとしても、私のように“屋上の狂人”扱いされるだけです(笑)。
まずは政府内にリスクをとれる人間がいないとね。要は、正しいことを言っても、その人の立場が危うくならないような仕組みを作らないと、日本では抜本的な改革なんて無理だと思います。
大阪・西成区の改革は、罵声や怒号が飛び交う中で連日行った
鈴木 私は橋下さん(橋下徹前大阪市長)の大阪の改革を、ブレーンとしてずっといっしょにやってきたので、目前で彼のやり方を見ています。彼の何がすごかったかというと、まさにリスクをとる人間だったということ。自ら一番はじめに突っ込んでいくんですよ。はじめは官僚たちも彼の急進的改革に抵抗していましたが、橋下さんが自分たちの代わりにリスクや責任をとってくれる人間だとだんだんわかってきたんですね。途中から、「大阪を立て直そう! 子どもたちの将来のために!」と、改革に協力してくれるようになりました。
橋下さんがなんでそんなことをできたかというと、彼の思想やパーソナリティーが改革向きだったこともありますが、彼は弁護士で年間数億円も稼いでいた人間なので、リスクをとる余裕があったという点も見逃せません。責任をとって辞めさせられても、いつでも弁護士やテレビで稼げますからね。
例えば、ギリシャ時代にさかのぼれば、独裁官(ディクタトール)という、ローマを救うためなら半年間どんなことでもやっていい職がありました。権限を与えて、リスクをとれるようにフォローすることを制度で補完する仕組みを作ると、橋下さんのようにリスクをとって改革にまい進する人が出てくる可能性はあります。
彼は、大阪市長の本来の給料を半額にして8年間やったので、はっきり言って経済的には大損しているわけです。年間に何億も稼いでいた人が、年収600万円くらいで8年間も職に就いていたのですから。それで7人の子どもがいるわけなので、もう大変ですよ。
みんなの介護 鈴木先生は大阪でどのような改革に取り組んだのでしょうか?
鈴木 私が主に担っていたのは大阪市西成区の大貧困地域の立て直し改革でした。人口の4割くらいは生活保護を受けており、ホームレスもたくさんいる「あいりん地域」というところです。日雇い労働者のまちでもあり、「釜ヶ崎(かまがさき)」とも呼ばれています。
橋下さんから改革を任されて、まずは犯罪の一掃とまち中にあふれるゴミの一掃を行いました。それから、ホームレスたちには街をきれいにする仕事を与えて収入を得られるようにし、環境問題の改善と貧困問題の改善を同時に行う一石二鳥の施策もつくりました。当時は外国人観光客向けのビジネスがチャンスだったので、観光客向けのホテルが商売できやすい環境をつくって、そこでの収益アップがまちの経済を潤すことも目指しました。
みんなの介護 すごくハードルが高そうですが…実現したんですよね?
鈴木 やったんですよ。4年もかかりましたが。でもね、たとえ地域のための活動とはいえ、東京から来た外部の人間が何を言っても最初は無駄ですよ。まずはコツコツと様々な事業を実施し、地域の人々を巻き込んでいきました。まちの主だったキーパーソン200人ぐらいに一人ひとり会って、ひざを付きあわせて話をして、徐々に信頼関係を作っていったんです。彼らと一緒に事業を立ち上げ、小さな成功体験も積み上げていきました。
その上で、大きな改革に着手するために、地域の人たちに小学校の体育館に大勢集まってもらって、どうやってまちを改革してゆくのかという大論議を、罵声や怒号が飛び交う中で連日行いました。毎回、200人ぐらいが参加していて、まさにギリシャ時代の直接民主制(アゴラ)に戻ったかのような修羅場の体験でした。
何回も何回も話し合いを重ねていって、「よし、これでいこう」と、人々の意見をまとめました。そして、その地域の合意案を橋下市長と松井大阪府知事に認めさせて、今はそれに基づいた大きなまちづくり改革が、官民協働で進んでいます。
みんなの介護 まさに、お互いが話し合いを繰り返したことによって、実を結んだのですね。
鈴木 日本は、誰かがリスクをとらないと改革できない社会だし、全員賛成じゃないと物事が進まない。だから、リスクをとり、人々の間の調整に汗を流すミドルマンが絶対に必要なんです。
もう一つ、西成の場合は、崖っぷちの状況が幸いしました。みんな貧しいし、人口も急減しているし、こどもは全然いないし。「このままいったら路頭に迷うぞ」「日雇い労働だっていつまでもあるわけじゃない」「みんな歳をとっているし、どうするんだ」と。
それに、住民の4割くらいが生活保護ですからね。町内会や簡易宿泊組合の人たちは「このままいくと、街が消えるぞ」というような危機感があったのだと思います。追いつめられた背水の陣的な雰囲気がありました。
みんなの介護 地域の人たちにも、街を変えたいという思いはあったんですね。
鈴木 みんなわがままを言っている場合じゃないわけですね。背水の陣の状況だったからこそ、これほど大勢の合意形成や利害調整が可能だったのだと思います。あいりん地域のように難しい地域でも、改革をやろうと思ったらできるんですよ。
私の場合、重要なターニングポイントだったのは、区役所や市役所の心ある官僚たちがついてきてくれたことです。当然、改革に反対するだろうと思っていたんですが、官僚たちだって、この地域を何とかしたいという思いはある。修羅場に立ち向かってリスクをとり、官僚たちに代わってやるべきことを前のめりでやろうとする人間には、彼らも価値を認めるんですね。
ですから、話を戻しますけど、私のようにリスクと責任をとれる人間を制度として作るべきです。そうすると、リスクをとって改革をやるという人間が必ず出てくると思いますよ。私の場合は大学教師という本職があって収入面には心配がないので、4年間、東京から大阪に週3回通って、火中の栗を拾い続けることができました。もっとも、橋下さんが辞任したときには、正直「ああ、これで私も辞められる」とホッとしましたが(笑)。ほとんどタダ働きの上に、体も心もボロボロになり、もはや限界でしたからね。
みんなの介護 改革後、現地の方はどのようなことをおっしゃっていましたか?
鈴木 今でもたまにあいりん地域に行くことがありますが、この間、日雇い労働者のリーダー格の人々と飲んでいたとき、「鈴木さんのおかげで、とにかくみんなが集まれた」「お互いに反目し合っていた連中が一同に介して、まちの将来について話し合う場ができたということだけでも、あんたの功績は大きい」と言ってくれました。正直、うれしかったですね。
小さなまちの小さな改革かもしれませんが、とにかく、みんなで話し合う場を持つことが本当に重要なことだと思いました。民主主義の原点ですからね。そして、それをやったからこそ、私がいなくなってもきちんと皆で話し合いを続けて、改革がいまだに機能しているんです。まちの様々な人々を口説いて、信頼関係を作って、大勢の人々に集まってもらうのは大変な手間でしたが、こういう手間を惜しんでは改革は長生きできません。
年金を県単位にするなど、社会保障は地方の裁量に任せるべき
鈴木 今、私は安倍政権の国家戦略特区の委員をやっていて、毎週毎週、官僚と規制緩和を巡って闘っています。国家戦略特区は特区として、岩盤規制を穴をあけて突破し、日本に新しいビジネスチャンス、成長の種を広げるという仕組みです。そこで働いていると、既得権団体を打ち破って改革しているリーダーが、意外に世の中にたくさんいることが見えてきます。
例えば、兵庫県の養父市なんかは全国の見本となるような大改革をやっています。農協を突破して、株式会社に農業をやらせる改革を決断した首長がいるんですよ。あとは、夕張の鈴木市長とかね。彼は、各集落をまわって全員の意見を聞いて、説得して、財政改革をやっているわけです。彼らのような地域のリーダーたちが、今後、我々が見習うべき成功モデルだと思いますよ。地方行政という範囲で見ていくと、崖っぷちから改革に乗り出し、成功している地域は意外に多いと思います。
実は、社会保障も地方分権をして改革を進められないかと思っています。社会保障という国の大きな仕組みを通すと、誰が払って誰に分配されているのかよく見えず、みんな勝手なことばっかり言う。しかし、市町村単位、コミュニティ単位でやれば、かなりよく見えてきます。老人にお金を大盤振る舞いしちゃうと、地域のこれからを支える子どもの保育が不足する、教育が不足するというように、みんなによくわかります。
例えば、橋下さんは“シルバーパスを廃止します!”と言ったことがありました。結局、廃止にはできなくて一人あたり50円を取ることにしたんですが、そのかわりに “西成の子どもたちの育成にお金を使います”と言えたわけです。こんなふうに、コミュニティ単位で地方の改革をやると、社会保障改革の突破口のヒントが見えてくると思いますよ。
みんなの介護 先生もコミュニティ単位で改革をしたんですか?
鈴木 西成区の改革はまさにコミュニティの改革です。犯罪をなくし、環境を良くし、他の区からも集まるような優れた学校を作ったり、塾代を助成して子どもたちのためになる施策を打ち出しました。
興味深かったのは、地域の高齢者たちが「この地域の子どもたちのためになるなら、敬老費ぐらいは我慢しようか」とか、「同和対策で使われている事業も、子育て対策に回るならば見直してもいい」と言ってくれたことです。地域から子どもたちがいなくなっていくのを日々見ているから、高齢者たちも「子どもたちのためなら仕方がない」と妥協する余地が生まれるんですね。
日本の社会保障の場合、国全体の話だから範囲が広すぎるじゃないですか。誰にお金を払ったかも全然わからないし、自分が払った保険料が誰に使われているかも全然わからないし。そうじゃなくて、社会保障は地方の裁量に任せるべきだと思いますよ。年金も県単位ぐらいに運営を分割する。医療や介護、子育て対策ももっと地方の裁量範囲を広げ、権限を譲り、そして見える化する。“ここにお金が行くんだったら、こっちを減らさなきゃいけない”ということがわかると、先ほど言ったように、高齢者たちが妥協できる可能性があります。
社会保障の地方分権にはもう一つ良いところがあります。借金できる金額に限度があるということです。国が借金をすると「総無責任体制」で野放しされるというか、とにかく財政破綻まで突き進むわけですよ。ところが、地方の借金には金額に上限があるので、借金できずにやりくりしようとします。税金を上げるといっても、あまり上げすぎると地域住民が他地域に移住してしまうので、無理はできません。
それよりも、支出の方を効率化しようとします。 “消費税を大阪だけ25%にします”ということになったら、誰も大阪に住もうとしなくなるでしょう。むやみやたらに税を増やさず、今あるお金でやりくりすることを考えますよね。
みんなの介護 自治体ごとの市場原理に近づいていくんですか?
鈴木 一種の競争原理ですけどね。地方と地方の競争があるので、おのずと健全化していくと思いますよ。地域のコミュニティだとお互いに顔が見えるわけだから、その間でミドルマンとして地域の多くの人々をつなげる役の人が出てきたら、調整もしやすいわけです。国全体の調整をするのは大変だけれど、コミュニティの単位だったら、どうにかして一人ひとりと話をつけられると思います。
本来のコストがわからなければ、国の制度の裏に莫大な税金がつぎ込まれていることを実感できない
みんなの介護 先ほど、アメリカの共済年金などでは、年金の投資先を加入者が自ら選ぶと伺いました。例えば、盲腸になると数百万もかかるアメリカの医療費と比べると、日本は健康保険一つとってみても恵まれていると思うんです。
鈴木 利用者から見れば安く医療を受けられて恵まれているわけですが、その裏では実際に費用がかかっているんです。借金として先送りしているから恵まれているように見えるだけで、いずれ、そのツケは支払わされます。
アメリカは、加入する保険を自分でチョイスできます。「保険料が高くても、なんでも保証してくれる保険がいい」と言う人がいれば、「最低限の保証でいいから保険料は低いほうがいい」と言う人もいます。アメリカでは、どちらがいいかを国民が自分で考え、選べるんですよ。その分、コスト感覚が正常で、ある意味、「ゆでガエル」の日本より優れている面があります。
みんなの介護 ということは、諸外国の人たちと比べると、日本人はブラックボックスに置かれているような状態なのですか?
鈴木 まさに、ブラックボックスにいる状況です。特に、年金に関してはブラックホールですね。例えばアメリカの場合、カリフォルニア州の公務員の共済年金や、私学共済年金などでは、投資先は自分で選択するんです。国債で安全運用してほしいとか、株でやってほしいとか、一応は選べるんですよ。そして随時、「収益データが出ました」「あなたの年金は将来減らされる可能性があります」などと、レポートが届きます。アメリカは自己責任社会ですからね。
みんなの介護 日本の健康保険とは違いますね。
鈴木 これが何を意味するかというと、アメリカの国民はよく勉強するし、何が自分にとって一番いいかを必死に考えるということです。そして、医療費の高さがわかっている。手術に数百万かかるなら、“自分の数か月分もの給料がかかる手術なんだ”と認識できるということです。例えば、3回も心筋梗塞になってしまったら、“これは破産するぞ”と危機感を持つわけですね。だから、どの保険に加入しようかと必死に考えるようになります。
日本の場合、自己負担を除いた金額は、保険料以外に国が大量の税金をつぎ込んで負担しています。本当は手術に数百万もかかっているのに、実際のところ数万円しか払わなくていいというのは、保険と国が肩代わりしているからです。でも、自分で保険を選んでいないから、当人にはそのありがたみがなかなかわからないですよね。
みんなの介護 海外の健康保険事情を聞くと、日本の制度のありがたみがわかるというか。
鈴木 我々日本人は、はっきり言って医療費のコスト感覚をほとんど持っていないでしょう?高齢者の自己負担額は1割だし。1割どころか、入院や手術には高額療養費制度があるので、高齢者は何百万円もかかる手術をしても、だいたい月4万円を超える自己負担を払わなくていいんです。というか、4万円を超えれば、あとはその月にいくら医療費がかっても、まったく追加自己負担が発生しません。その分は費用ゼロと同じわけです。それじゃコスト感覚がなくなるのも当たり前ですよね。
誰かが払ってくれている保険料と税金によって、恩恵を受けていることを実感するということは、とても重要なことです。保育料でも同じことが言えます。例えば、親たちが支払っている保育料は平均でが毎月2万円ですが、本来はそれだけじゃ済まないんです。ちゃんとコストとサービスの対価を考えればわかることですが。こどもを保育園に預けると、本当は月15万~20万円くらいかかるところを、補助金として国と自治体が10万円以上払っているから、2万円の保育料で済んでいるんです。だから、まずは15万~20万円かかっていることを知らせないと。すると、“本来は15万かかっている保育コストだけれども、国と自治体が、10万円以上をサービスしてくれているんだ”と親がわかるわけです。
今は、なんだかわかんないけれども、「平均2万円でいいです」というだけになっている。その裏には、莫大なお金がつぎ込まれているんですよ。それがわからなければ、「なんだ、2万円のサービスだし」「これは国がやっている制度でしょ。だったら私、払いませんよ」なんていうように、軽々しく滞納する人が出てくるわけです。
国の財政を含めて、こういった事実を高齢者に知ってもらえば「年金は半額でいいわよ」と言う人も出てくるんじゃないかと思います
みんなの介護 「国が払って当然だろ」と、権利ばかりを主張していては…結局のところ、誰かが払ったお金が公的サービスに投入されていますからね。
鈴木 医療費をたくさん使っている人に対しては「あなたはリスクの高い人物です。だから、保険料を倍に値上げします」というようなお知らせが送られてもいいのではないかと思います。まずは自分の財布から払うところを実感できなければ、“こんなに医療費がかかっているけれど、国が払ってくれているんだ”なんて、自覚しにくいでしょう。
問題は、保険を使う本人がコストをわかっていないことです。実際、今の制度がもし破たんすれば、社会保障制度の恩恵を受けていた国民の保険料や自己負担は何倍にも膨らんでしまいます。そんなことになってしまうんだったら、健康のために“運動でもしようかしら”とか、“酒も飲み過ぎないようにしようか”って思うでしょう。破たんする可能性を、きちんと身近に感じさせなければなりません。
みんなの介護 健康を維持しなければ、結局は医療費が高くついてしまいます。
鈴木 そうですよね。年金も、「あなたが払った保険料に見合った年金はこれです」と最初に提示しておいて、「若者たちが寄付しているから、あなたの年金は6倍になっているんです」といった感じにしたほうがいいと思うんですよ。「あなたがこれまでに払ってきた金額に見合った年金は1万3000円です」とかね。でも、「若者たちが無理して払ってくれているから、8万円になっているんです」ってね。
国の財政も含めて、こういった事実を高齢者に知ってもらえば、「俺たちは損したくない!」と意固地になるのではなく、余裕のある人は「これまずいんじゃないの、いくらなんでも」とか「年金が余って貯蓄に回しているんだけども、そんな状況だったら、私の年金は半額でいいわよ」という人も出てくるんじゃないかと思います。
みんなの介護 とは言っても、高齢者の人たちにそう思ってもらうのは難しいんじゃないかと…。
鈴木 簡単にはいかないでしょうけどね。日本の財政破綻は高い確率で起こり得るんだけれど、それが10年後なのか20年後なのかはわからない。ひょっとしたら今の高齢者たちはこのまま逃げ切れるかもしれないし、逃げ切れないかもしれない。リアリティーを感じないので、なかなか説得としては難しいとは思います。財政破綻したとしても、どれぐらい生活が苦しくなるかは想像できないでしょうし。
みんなの介護 だから自分の事として感じられないんですね。
鈴木 感じられないと思いますよ。高齢者を説得するためにも、まずは事実を公表しないとね。それから、私が考えるもう一つの手は、将来の財政状況が今の利害に反映される仕組みを、社会保障制度に組み込んでしまうというものです。例えば、金融商品の先物のような、将来の年金財政の市場予想が、今の年金額に跳ね返ってくる方法を取り入れたらいいんではないかと。
※先物とは……先物とは、将来の値段を予想された物のこと。値段が上がると予想できればその商品を購入する契約を結び、一定の期間後に商品を売って利益を得ることができる。
どういうことかと言うと、みんなが“将来の日本の財政が破綻する”“今後の保険料が減る”と市場で予想していたら、それと連動して今の年金額を減らすんです。こういった仕組みにしてしまうのは、一つの手だと思います。
政治家がバラマキをすると、今の年金額が減る仕組みにしてしまったほうがいい
みんなの介護 今の年金額を減らしてしまうんですか?
鈴木 例えば政治家が選挙目当てに「バラマキします」と言ったときに、“ますますやばいな”と市場が予想するわけです。財政に連動した先物の価格が今の年金額に反映されるようにしておけば、高齢者たちが受け取る今の年金額が自動的に減りますよね。自分の年金が減ってしまうんだから、当然、年金受給者は「政治家は何をやっているんだ!」と怒りますよ。「将来のためにきちんと年金改革をやれ!」とね。
みんなの介護 それは怒ると思います…。
鈴木 今のように、低所得高齢者に対する3万円の給付のような選挙対策をやると、今の仕組みでは、高齢者たちにとってウェルカムなわけです。でも、バラマキをやった結果、市場が“年金が破綻しそうだ”と思ったら、自分の今の年金が減る仕組みにしておくと、本来の選挙対策とは逆の効果になるでしょ。
みんなの介護 税金の使い方に対して、国民がシビアになりそうですね。
鈴木 また、日本の公的年金の運用はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が担っているのですが、今の政権は保有する株式の投資を増やした結果、かなりの運用損失を出しています。損を出したら、今の高齢者たちの年金額を今すぐ直接減らす仕組みにしておけばよい。現状では、いくら損を出しても、今の高齢者たちにとっては全然関係のないことなので、運用損に無関心です。高齢者は、もらえる年金の金額が既に決まっていますからね。
みんなの介護 その失敗のツケを払うのは、やっぱり若者たちになるんですか?
鈴木 そうなんですよ。つまり、今の高齢者たちはリスクを背負っていないんです。賭けをやるんだったら、みんな平等に同罪ということで。2015年度は5兆円も積立金が減ったんですが、その後の株式相場の低迷、円高を考えると、今年もまた何兆円か損失が出ると思います。それなら、減った分だけ年金の金額を減らさせてください、という仕組みにすべきです。
実はこれは、カナダ(CPPIB;公的年金運用機関)がやっていますから、日本もやったらいいんですよ。他国にできて、日本にできないなんていうことはないでしょう。日本でもできるようになれば、つまりは、今の自分の年金額に影響があることですから、国民のチェックも厳しくなるでしょう。とにかく、まずは、高齢者を説得するためにも、国が財政状況の真実を公表するべきですけどね。これは、必ずやってくれると信じたいところです。
撮影:公家勇人
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