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堀江貴文「現状に不満があるならみんな辞めちゃえばいいんですよ」

最終更新日時 2015/09/24

実業家としての活躍だけでなく、社会問題に関する言説でも多くの人の注目を集めるホリエモンこと堀江貴文氏。そんな彼が、様々な媒体で「興味が無い」と断言するのが介護ビジネスの分野。堀江氏はなぜ、介護ビジネスに興味がないのか? その理由から、超高齢社会まっただ中にいる私たちが今すべきことまで、“ホリエモン流”の言葉で切れ味鋭く語ってもらったインタビュー。前編となる今回は、介護事業の現状について率直な印象を伺った。

文責/みんなの介護

介護職員の給料は上がらないと思いますよ。これはもう、構造的な問題ですから

みんなの介護 ストレートにまずお伺いしますが、介護業界全体が抱えている現状として、従事している人たちの給料が平均的に安く、現場の従事者たちからも不満が出ている……という現状があります。この現状に関して、堀江さんはどう思われますか?

堀江 はっきり言ってしまうと、給料は上がらないと思いますよ。構造的に上がることは難しいでしょうね。

みんなの介護 ……かなりストレートなお答えですね。

堀江 そもそも介護報酬って、介護保険で決められていますよね? あとこういうことを言うと身もフタもないかもしれませんけど、介護って「誰でもできる」仕事なんですよ。「誰でもできる」仕事は、報酬が高くなる可能性は低い。だから、これからは省力化、ロボット化がより進んでいくと思います。外骨格スーツやパーソナルアシスタントロボットは、これからどんどん普及していくんじゃないかなと。

みんなの介護 サービスも報酬も、ルールとして制度化されているというのはその通りですね。現場からしたら収益をあげにくいシステムになっているのは間違いありません。ただ、その点を言われてしまうと我々としては辛いですけど……。

堀江 でも、労働市場ってそういうものですよ。他人ができない付加価値があるから給与というのは上がっていくわけで。なのでそれがロボットに取って代わられていくのか、外国人労働者に取って代わられていくのかはわからないですけど。だから現状にもし不満があるなら、究極の選択はみんなで辞めてしまえばいい、ということなんですけどね。

特別インタビュー「賢人論。」第1回(前編)堀江貴文氏は「“死”に向かっていくビジネスには正直、興味がないんですよ」と語る

介護の現場の省力化、ロボット化は進んでいく。これは避けられない流れだと思います

みんなの介護 では、例えば介護ロボットを使いこなせるようになるとか、職員をマネジメントする能力を持つとか、そういった能力を身につけていけば、介護職を続けていくことに意義を見出だせたり、給料アップにつながったり……という可能性も出てくる、と。

堀江 可能性としてはあるでしょうね。あとは一方で、そうした人手不足の状態が生まれると同時に、介護ロボットの方の技術革新がそれまでよりも早く進んでいくとも考えられます。それを使いこなす技術は必要になるでしょうね。

みんなの介護 介護用のロボットを現場に取り入れるための補助を自治体が行うという動きは一部出てきていますね。堀江さんはビジネスとしてそちらに参入しよう、という想いはありませんか?

堀江 まあロボットは、僕がやらなくても誰か他の人がやるんじゃないかなと思いますよ(笑)。

介護事業は「利幅は薄くても確実に利益が見込める」と考えられなくもない

みんなの介護 外国人労働者に関してはどう思われますか? 円安や受け入れ側の問題、いろいろな課題があってなかなか進まない、というのが現状のようですが。

堀江 ビザの発給要件を緩和するべきだと思いますよ。僕が思うに、現状のビザの発給要件って厳しすぎると思うんですよね。

みんなの介護 堀江さんは、長野刑務所での作業で高齢受刑者の介護を経験されたそうですが、経験としてはいかがでしたか?

堀江 意外と“慣れる”んだなと思いましたね。割とすぐ慣れましたよ。一番最初は抵抗感はありましたけど、「これはもう、作業だな」と。

みんなの介護 以前からいろいろな媒体で「介護ビジネスには興味がない」ということをよく仰っていますが、先ほどのお話のように介護保険などの構造的部分が理由なんでしょうか?

堀江 いや、そういうわけではないです。単純に、終末ビジネスといいますか……死に向かっていく人たちを身近に見るビジネス、それをやりたくないんですよ。儲からないからではなくて、そこが大きいんです。

みんなの介護 お金の問題ではないと。

堀江 逆に言うと、介護保険でガチガチには固められていますけど、利幅は薄くても確実に利益はあげられる収益物件と考えて、介護事業に取り組んでいる知り合いは僕の周りにもいっぱいいるんですよ。大儲けはできないけれども、堅いビジネスであるということは自覚していますから。僕のメルマガの読者からも「なんでこれから伸びていく分野なのに、介護ビジネスをやらないんですか?」ということをよく聞かれるんですね。でもそれは単純に、マインドの問題と言いますか……“前向き”と言ったら変かもしれないですけど、そういうビジネスのほうが個人的に興味があるから、ですね。

みんなの介護 今後の社会問題として高齢化社会は避けられないですよね。そのあたりはどうお考えですか?

堀江 僕としては、理想は「介護が必要ない状態」だと思うんです。実際、それはできると思うんですよ、例えばアルツハイマー病。僕はアルツハイマー病は将来治せる時代が来ると思うんです。原因はだんだんわかってきて、脳細胞のなかの不要になったタンパク質を切って排出するための酵素が上手く働かないのが原因でβアミロイドというアルツハイマー病の原因となる物質がつくられてるのでは、と言われている。それを上手く働かせるための薬というのも今研究されてきていて、かなりいいところまで来ていますよね。これが進めば、アルツハイマーにならない未来というのが可能なのでは、と思うんです。

みんなの介護 それが現実になったらすごいですよね。

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ガン保険には入っててもガン検診は受けないという人、いますよね。バカじゃないか?と(笑)

堀江 僕が大事だと思っているのは、何よりも「予防」です。検診とか受けてない人、多いと思うんですよ。僕は刑務所にいた時に周りの人たちを見て実感したんですけど、病気を予防する意識が低い。例えば60歳で歯が完全に無い人がいたんですけど、これってほとんどが歯周病のせいですよね。でも歯周病って、定期的にきちんと歯医者さんに通っていたらならないんですよ。

他にも、身体を鍛えていないから足腰が弱ってしまう人も多い。自分の足で歩けないとすぐ寝たきりになる、寝たきりになるとボケも加速していき介護がより必要になる。健康への意識が低いたちがいて、そういう人たちが結果的に介護のお世話になっている、という状況はあると思うんです。

みんなの介護 堀江さんは今、マラソンなどもされていますし、以前から健康面への意識が高いんですね。それは予防という観点からなのでしょうか。

堀江 あ、マラソンは健康管理云々とは関係無いんですよ。あれは単なるダイエットです(笑)。

みんなの介護 そうだったんですね(笑)。国が今抱えている医療コストなどに関して、「こうあるべき」と考えられていることはないですか? 現状、財源がどうしても厳しくて回らない、というところが多いですよね。

堀江 そこはやはり、個々人の取り組み、という話になってくると思うんですよ。だって運動してない人も多いし、検診もみんな行かないし。そこに力を入れるべきだと思うんですよ。がん保険は入るのにがん検診は行かない人、いるでしょう? バカじゃないかと(笑)。

高齢になっても自分で立って、動いて、働く。そういう人が増えていく世の中になって欲しい

みんなの介護 でも、そうやってみんなが予防に気を遣い長生きすると、健康寿命と平均寿命の差というのが問題になってきませんか?

堀江 僕が言ってるのは「健康寿命を伸ばしましょう」という話なんですよ。誰もが介護が必要な状態になるわけでなく、本当に健康な人は、かなり高齢になっても自分で立って動いているわけですよね。そういう人たちを増やしたい、という話。それは税金をかけずにできるんですよ。

例えばさっき言った歯周病予防ですけど、歯周病って万病の元なんですよね。自分の歯で食べられるか食べられないかでQOLは変わってきます。高齢になっても自分の歯で食べられる人って、QOLがすごく高いんですよ。日本歯科医師会が「8020運動」というのを提唱していて、これは「80歳になっても自分の歯を20本以上保っておきましょう」という運動なんですけど、全然可能なんです。

みんなの介護 歯を健康に保って、きちんと自分の歯で食事をする。これは大切なことですよね。

堀江 歯周病菌は歯茎から体内に入って、他にもいろいろな病気を引き起こす。じゃあどうすればいいかというと、年に2回歯医者さんにきちんと通って歯石を取ってもらったり治療をしてもらうことで、歯周病のリスクはグッと減るんですよ。例えばデンマークやスウェーデンではどうしているかというと、年に何回か決められた回数歯医者さんに行って歯石除去を受けないと、歯科にかかっても保険が適用されないんです。行かないと、いざ虫歯になった時、自費診療で高額になってしまう。その仕組みを作ること自体は、税金を使わずにできることですよね?

あとは、健康診断も同じように義務化すればいいんです。年に最低1回は健康診断を受けること、そうしないと保険が適用されない、というシステムにするとか。

みんなの介護 そうするとみんな健康診断を受けますよね。

堀江 風邪を引いただけで、薬代で1万円超えるとか嫌ですもんね(笑)。これも税金をかけずにできるはず。やっと胃カメラも健康診断のメニューに入るようになりましたけど、胃カメラだったら初期胃がんの発見率も高いし、そのまま切除もできる。胃がん患者を減らすことが可能になっていくかも、ですよね。

みんなの介護 ちなみに、細胞再生医療や延命治療など、そういう部分にビジネスとして興味をもったりはしませんか?

堀江 そこはありますね。延命というよりは、若い状態をずっと継続する、という話になります。

みんなの介護 先ほどの健康寿命を伸ばすという話とも通じますね。

堀江 若く健康でずっと生きてる分にはいいじゃないですか(笑)。そのあたりの分野に関しては、ビジネスとしての投資も考えているんですよ。

最低賃金を撤廃すれば、「働きたい」高齢者の社会参加を可能にする

みんなの介護 堀江さんは、家族や社会のあり方に関して今思われていることはありますか?

堀江 僕が今システムとして必要だなと思うのは、最低賃金の撤廃ですね。だって撤廃しないと、高齢者の人が働けないですもん。

みんなの介護 最低賃金のラインが無くなれば、高齢者の雇用はもっと増える、と。

堀江 そうです。時給800円は払えないけど、時給300円、200円だったら働いてもらいたい、という状況はありうるわけです。よく高齢者の働く場所がない、という話が問題として上がりますけど、これは最低賃金を変えないと、働く場所は増えないと思うんですよ。

みんなの介護 でも、そうなると若者たちの雇用も奪ってしまうのでは……という懸念もありませんか?

堀江 それは仕方ないですよね。

みんなの介護 厳しいですね(苦笑)。

堀江 でも僕は最終的に、そういう高齢者の人たちに「負の所得税」(注・累進課税システムの一つ。一定の収入がない人々は政府に税金を納めず、政府から給付金を受け取るというもの)を与えるのが効率として一番いいと思うんですよ。時給は200円かもしれないけど、他の収入は「負の所得税」のような一定収入で賄う、と。

みんなの介護 いわゆるベーシックインカム(注・政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想)も、その一種ですよね。

堀江 例えば、年収が100万以下だったらあと100万円保証しますよ、と。結局そのほうが、最終的な社会保障費は削減できるんじゃないかなと思うんですよね。

みんなの介護 でもそうなると、労働への意欲をそがれる人が多くなりませんか?

堀江 そうなると思いますよ。でもね、それでいいんじゃないですか?

みんなの介護 社会保障費自体はそちらのほうが減る、と。

堀江 今、社会保障の制度って本当にたくさんありますよね。厚生年金、国民年金、厚生年金基金や401k(注・確定拠出年金)、介護保険や雇用保険、生活保護……全部バラバラで、監督官庁も違う。そんなことをやるんだったら、負の所得税に一本化する、もしくは生活保護に一本化する、というのがシンプルでいいんじゃないかと。

あと、高齢者の最低賃金を下げることは、「働きたい」という意欲を持った高齢者に働き先を提供することで、絶対ボケ予防になると思うんですよ。人間というのは社会的な生き物なんです。介護が必要な状況になっていくのは、そこの部分も原因だと思うんですよね。

みんなの介護 そういうお話ですと、やはり政治という枠組みの問題が大きくなりますよね。再度政治の世界に挑戦という気持ちにはならないんですか?

堀江 政治家にですか? なりません(笑)。

特別インタビュー「賢人論。」第1回(中編)堀江貴文氏は「高齢になるほど違う世代の仲間とのコミュニケーションに慣れることが大事」と語る

高齢者が若い世代とのコミュニケーションに慣れることが要介護者を増やさないことにつながる

みんなの介護 「みんなの介護」 としてはお伺いしておきたいのですが、堀江さんは老人ホームに関してはどう思われていますか?

堀江 僕、老人ホーム反対派なんですよ。入りたくないですもん。

みんなの介護 そうなんですか!? それはまた、なぜなんでしょう?

堀江 なんで同じ世代の人達ばっかりで固まるの、と。僕だったら嫌ですよ。だって、若い人たちと一緒にいたいですもん。だから今後必要だなと思うのは、そういう“場”づくりですよね。社会の中に老人も混ぜてくれよ、って思うんです。

みんなの介護 高齢者の雇用を増やす、という話にも繋がりますよね。

堀江 老人になったら老人ホームに入る、と思い込んでる事自体がおかしいんじゃないかと。昔は家庭にいたわけですし。

みんなの介護 老人ホームの良い点として、同世代で一緒にいられるのは気楽ですし、メリットと感じる人が多いのも現実ですが……。

堀江 そういうことを言ってるからダメなんですよ(笑)。

みんなの介護 厳しいですね(笑)。でも高齢者の絶対数が多くなってくることで、介護が必要になる人が増えてくるというのはどうしても仕方のないことで。今、国としても地域包括ケアシステムなどでそのあたりを解消しようと試みていますが、それを考えると施設に入るほうがスケールメリットは大きいと思うんです。移動コストを考えると、在宅医療が増えていくのは厳しいのではないか……とも考えられますし。

堀江 でも、その考え方だと余計に要介護者が増えると思うんですよね。例えば、日本人の大半が60歳、65歳で定年になり、その年齢になったら強制的に社会から遮断されてしまうわけです。その時点で、その世代の何割かが介護予備軍になってますよね。でも最低賃金を下げて社会の中で仕事を続けていくことで、その状態は変わるわけです。

要介護者にならないためには、もちろんさっき僕が言った病気の予防も大切ですよ。でも、社会の中で老人が役割を与えられて生活をする……そういう“社会生活”の中で予防ができると思うんです。例えば仲間を増やす、しかも世代が違う仲間とのコミュニケーションに慣れてもらう。これも要介護者を増やさないことに効果的だと思うんです。

みんなの介護 「同じ世代の人といるのが楽」という考え方自体をしないようにする、と。確かに最近、同じ建物の中にサービス付き高齢者向け住宅とファミリー向けのマンションが共存していたり、若者と高齢者が共生するコミュニケーション型のシェアハウスができたりと、多世代交流型の住まいも徐々に出現しはじめています。指摘された課題は、解決への道を歩みはじめている感じがします。

インターネットやSNSが進んでいる今の時代、高齢者が同世代で固まる必要はない

堀江 僕、教育制度の問題もあると思うんですよね。おかしいと思うんですよ、小学校とか。家族と過ごすよりも長い時間を6年間、同じ世代の子供たちと同じメンバーで過ごすわけですよ。異常でしょう?

みんなの介護 そう言われると、そうかもしれませんね。

堀江 これは何のためのシステムかというと、軍隊を作るためのシステムなんです。国民国家の義務教育制度は全部そのために作られてますし、日本は明治維新の時に導入したその制度をずーっと使い続けているわけです。今の日本の義務教育というのは「あなたは日本人です、国を守らなくてはいけませんよ、男子は軍隊に入りなさい」という考え方から成り立っている。だから同じ世代の人達と集団生活をして、規律ある行動をとれるような人格を形成するんです。これは国のため、軍隊のためなんですよね。

でも今はグローバル化が進んで、インターネットやSNSが進んでいる時代です。同世代で固まる必要はないんですよ。でもずーっとそういう教育をされてるから、同世代と居たほうが楽だと思っちゃうんですよね。

みんなの介護 なるほど……。

堀江 同世代とばっかり一緒にいるから、余計ボケるんだと思いますよ。若い子たちと交流してたらなかなかボケないです。僕の周りにいる老人ってそんな人多いですよ。80歳になるのに毎日ワイン飲んで、若い30代の彼女とか作ってたり(笑)。

特別インタビュー「賢人論。」第1回(中編)堀江貴文氏は「高齢者だからってスマホやタブレットを使えないわけじゃない」と語る

テクノロジーの発達が超高齢社会を変える

みんなの介護 でもそのあたりを変えるとなると、先ほどのお話にも出ましたけど、やはり社会制度自体を変えなくてはいけない、という話になりませんか?

堀江 もちろん社会運動的に変える必要性もありますけど、今はそこまでしなくても自分の生活を変えられるんですよ。なぜならネットツールが発達したから。注文すればなんでも家に届くし、外に買いに行く必要がない。バリアフリーのアパートも増えているし、コミュニケーションはFacebookなどのSNSがありますよね。SNSを覗けば、いろんなイベントが開かれているわけです。そこに自分から足を運べばいいんですよ。僕、このあいだ元部下の結婚式に行ってきたんですけど、そいつが奥さんと知り合って結婚したきっかけは、彼がFacebookで立てたイベントに奥さんが参加したからだと。そういう時代なんですよね。

知っている人がいないパーティーでも、足を運べばいい。そこで話をして、友達を作ればいい。そういうことやってると、まずボケないですよ。

みんなの介護 ただ現状は、SNSなどネットツールを使いこなせない高齢者が多いかも、と思うんですが……。

堀江 なぜ「使いこなせない人が多い」という話になるか、がおかしいと思うんです。だってスマホやタブレットってめっちゃ使いやすくないですか? 単純な思い込みで、自転車に乗るのと一緒。自転車ってみんな、最初は「倒れちゃうじゃん、これ」って思いますよね。でも練習すればみんな乗れるようになる。それに近いですよ。

みんなの介護 普及するにともなって、リテラシーも必要になってきませんか?

堀江 そんな必要ないと思いますよ。タブレットやスマホを使うのは、高齢者でも全然大丈夫だと僕は思います。特別なことでも何でもないですから。

みんなの介護 そうなると堀江さんは、高齢者向けコンテンツビジネスの可能性とか考えませんか?

堀江 だから、そこで“高齢者向け”っていう風に限る必要はないと思うんですよ。逆に聞きたいんですけど、高齢者になって出来ないことってなんですか? と。「高齢者はアビリティが低い」と決めつける、その考え方自体がダメだと思うんです。ターゲット層とかコンテンツの内容を高齢者に向けて……とか、合わせなくていいんです。僕はそう思いますよ。

“孤独ではない老後”を得るためには?

みんなの介護 地方移住を国が推進していく中で、ネックになっているのが新しいコミュニティを一から構築することに不安を感じるという人が多いという部分なんですよね。でも堀江さんが先ほど言われたように、SNSなどで積極的に関わっていけばそれは解消できますよね。

堀江 僕は、住むところも固定せず、「住み慣れた場所」を作らない方がいいと思うんですけどね。「保守的にならない」というのが重要な事で。老人になると2種類の人に分かれていくと思うんです、どんどん偏屈になっていく人と、どんどんオープンになっていく人。これ、どちらも慣性がついて、どんどんその傾向は深まっていくんですよね。

みんなの介護 なんとなくわかります。

堀江 でもその2つが分かれていくのって、ちょっとしたきっかけなんですけどね。ちょっと偏屈になったらどんどん偏屈になっていく。これはプライドの問題だと思うんですよ。「ジジイになったからつまんない見栄は捨てて自由に生きるぜ!」って人はどんどんオープンになっていって、すごくいいお爺ちゃんになっていく。でもプライドとかを捨てられない人は、どんどん話しかけづらい存在になっていくわけです。いわゆる“偏屈ジジイ”ですよね。

みんなの介護 一度そうなってしまったら、一体どうすればいいんでしょう?

堀江 加速すると無理ですよ。で、誰からも話しかけられないし、誰ともコミュニケーションをとらないから、どんどんボケていくわけです。だからそうならないよう、若いうちにクセをつけないとダメですよね。僕ら世代でも考え方にはかなり差がでてきてて、すごく世間体を気にする人っていますもん。そういう人は予備群なのかなと。僕なんか歳をとればとるほど、どんどんつまらない見栄を意識的に捨てていってますから。

みんなの介護 その「意識的に」というのをできるかできないか。そこが重要なんでしょうね。

「賢人論。」第1回(後編)堀江貴文さんは「サラリーマンの皆さんはイヤイヤ仕事を辞めるべき」と語る。

定年という考え方は捨てるべき

みんなの介護 ちなみに堀江さんご自身は、ご自身の老後の生活に関して、ビジョンや理想など今考えていらっしゃいますか?

堀江 まったく持たないです。だって、そんなこと考えても何一つ楽しいことないですから(笑)。今より動けない自分、今より老けた自分とか想像したくないですね。未来に希望はないし、そんなことを考える意味はない、と思っちゃうんですよ。

みんなの介護 では、老後のことは考えない、と。

堀江 考えないです。一番考えたくないことですね。「考えろ」って言われても、「嫌だ」って言います(笑)。

みんなの介護 でも一般の多くの人は、将来の不安から保険や貯金などの行動を取る人が多いですよね。堀江さんはそこもない、と。

堀江 それはね、僕は前からよく言ってるんですけど、「あなたはお金しか信用できないんですか?」ということなんですよ。僕、本当にお金のことなんて考えてないですから。

みんなの介護 今、年金の問題だったり社会の情勢だったり、若い世代がすごく将来に対して不安を抱えていますよね。でも今年の3月、近畿大学の卒業式で堀江さんが卒業生たちにスピーチされた「未来を悲観することはない」という言葉がすごく印象的でした。

堀江 そう、不安な未来とか考えなきゃいいんですよ(笑)。僕、いつも思うのは、サラリーマンの皆さんは今すぐ「イヤイヤ仕事」を辞めるべきです、と。

今の仕事をイヤイヤやってるから、定年後に悠々自適で、仕事なんかしたくない……という発想に繋がるんだと思うんですけど、僕的にはまず「定年」という発想がよくわからないんですよね。だから最低賃金の規制緩和を……という話なんです。楽しい仕事をしてずっと働いていたいな、という人が増えれば、それはすごくいいじゃないですか。

みんなの介護 世代間格差の問題がどうしても今の若者達には大きいと思うんです。年金の格差の問題もありますし……。

堀江 そこは、もうどうにもならないですよね。僕の個人の考えは、さっき言ったように、「年金やめちゃえばいいのに」という。今のシステムだと、どう考えても上がらないですよ、年金は。

「賢人論。」第1回(後編)堀江貴文さんは「介護の問題を他人にとやかく言われる筋合いなんてない」と語る。

プライドを捨てることで楽になる部分もある

みんなの介護 あとお伺いしたいんですが、「肉親の介護は自分でしなくてはいけない」という倫理観が日本では根強く、そこがネックとなって、すぐに介護施設に入所させたり、例えば「みんなの介護」のような紹介事業者を利用したくても利用できない……といった現状があります。それに関しては堀江さんはどう思われますか?

堀江 そんなの気にしなきゃいいんですよ。みんな、周りのことを気にし過ぎなんです。それは、さっきお話したプライドの問題もあると思うんですよね。プライドが高いから、周りのことを気にしてしまう。でも周りの人に何か言われても、「うちはこうですから」とはっきり言えばいい。そこで「う~ん……」と悩んでしまうからつけ込まれるんです。

みんなの介護 ただ、旧来型の地方コミュニティなどでは、やはり他人の目が気になってしまう……という人は多いようです。

堀江 「うちの問題だろ」と、ピシャリと言えばいいんですって。そこで中途半端に言うから陰口とか叩かれるんですよ。うちの方針だから、って言えばいいんです。

みんなの介護 ちなみに、ここまでいろいろお伺いしたので一応再度お伺いしますが、万が一にでも介護業界に参入する可能性というのは……。

堀江 ないですね。

みんなの介護 即答ですね(笑)。ただ、これまでのお話はかなり国のシステムに関することも多く、それらは変える場合かなり時間がかかると思うんです。堀江さんは今話されたことが実現するとして、どのくらいかかると思いますか?

堀江 それはわかりませんよ。僕一人でできることでもないですし、その専門家でもないですし。リーダーが誰かによっても変わりますから。そこは大きいですよ。

みんなの介護 となると、とりあえずは今お話いただいた中で、後は自分たちでできることを進めていく……というのが現実的ですよね。でも「プライドを捨てる」ということひとつを取っても、なかなか堀江さんのように行動するのは難しいのかも、とも思ってしまいます。そこはどうしたらいいんでしょう?

堀江 例えば自分の身の回りの人を変えるとしたら、しつこく言い続けるしか無いんですよ。そこはもう、それに尽きると思います。ダメな社員への対処方法と一緒ですよ、言い続ける! それが一番です(笑)。

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森田豊
医師・医療ジャーナリスト
2022/11/07