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勝間和代「インターネットの時代だからこそ、多世代の交流ができるようなリアルに集まれる場所が必要」

最終更新日時 2016/05/23

勝間和代「インターネットの時代だからこそ、多世代の交流ができるようなリアルに集まれる場所が必要」

アメリカの経済誌『ウォール・ストリート・ジャーナル』において「世界の最も注目すべき女性50人」にも選出された才女・勝間和代さん。「マクロ経済学を学ぼう」、「優先順位のつけ方を学ぼう」など多数の著書をはじめ、各種メディアでの発言が常に注目を集めている。勝間さんが取り上げるテーマは主に少子化問題やワークライフバランス、ITを活用した個人の生産性向上などだが、今回は介護…なかでも特に、自身も真剣に取り組んでいるという介護予防について語ってもらった。

文責/みんなの介護

頭と体の健康は密接に結びついているのに、体に気を使っても、頭の健康に気を使わない人が多い

みんなの介護 勝間さんがメディアで介護や社会保障について話されているのは、あまり聞いたことがないのですが、ご自身で介護の経験は…。

勝間 私自身が介護をしたということは、まだありません。ただ、20年くらいでしたけど、父が脳卒中で倒れて麻痺が残り、母が5年くらい自宅で介護をしていた時期がありました。家をバリアフリーにしたり、下半身がマヒしていても運転できる車に買い替えたりして。私は結婚して家を出ていたので、母は大変だったと思います。父につきっきりでしたし、父は父で自分の思い通りにならないからイライラしていましたし。

みんなの介護 20年前というと、介護保険もまだない時代ですよね。

勝間 ありませんでした。当時20代だった私は、母の愚痴を聞いて「はい、はい、はい」と…。

みんなの介護 認知症診療の第一人者、長谷川和夫先生は以前に『賢人論。』で「介護者のフォローは「大変だね」と共感するだけじゃダメ。介護していることを褒めてあげなきゃ」とお話くださいました。

勝間 確かに、それはいいですね。私も褒めてあげたら良かったですね。でも、その経験もあってか、私自身、要介護者にならないように、ものすごく気をつけています。頭も使うようにしていますし、よく歩くようにもしています。仕事でテレビ局に行く場合でも、基本的に送り迎えは断って電車で通うようにしているんです。あとは頭の健康にも気をつけていますし。

みんなの介護 勝間さんは麻雀のプロテストに合格されていますが、麻雀や囲碁は認知症予防にいいと言われていますよね。

勝間 でも、基本的には頭というのは、脳だけじゃなくて全身の五感の刺激で成り立っていますから、できれば麻雀だけとか囲碁だけとかいうよりも、バランスよく楽しんだ方が、いろいろな刺激があっていいかもしれませんね。

みんなの介護 じゃあ、今日は麻雀、明日は囲碁、明後日はトランプ。2時間くらい楽しんだら散歩に行こうか、みたいな感じですかね。

勝間 そんなイメージですね。頭を使うスポーツという意味で、マインドスポーツという言葉もありますよね。インスポーツという言い方もしますけど。あとは、“ゲーミフィケーション”という言葉があって、実生活の物事をゲームのように考えて、1個ずつ進めていくと頭にいいし、モチベーションアップにもなるらしいんです。

頭の健康と体の健康というのは、すごく密接に結びついているんですが、みなさん体の健康に気を使っても、案外頭の健康に気を使わないんですよね。例えば、不特定多数の人と会って話をするということも、すごく頭にいいんですよ。

「賢人論。」第15回(前編)勝間和代さんは「高齢者だけで集まるんじゃなくて、若い人のように着飾って、出歩いて、そこで若い人と話をすることが大事」と語る

頭の健康にとって良くないことは、同じことばかりを繰り返すこと

みんなの介護 太り過ぎだったり、タバコを吸ったり、過度にお酒を飲んだり、肉体的に健康に良くないことは広く知られています。同じように頭の健康に悪いこともあるのでしょうか?

勝間 一番悪いのは、同じことばかりを繰り返すことだと思います。頭の同じ部位しか使わないような。同じ人に会う、同じ作業ばかりをする、同じルートで通勤するというように、頭を使わなくていいことだけをひたすら繰り返す。緊張感のない中でルーチンワークをするというのが一番頭に悪いです。

みんなの介護 脳に負荷をかける、ストレスをかけるということですよね?

勝間 そう。それも、軽いストレスですね。ストレスをかけ過ぎると精神的に良くないので。自己肯定感や自己高揚感と言うんですけど、これができるという自分に対しての“やればできる感”。そういうマインドセットができるといいですね。新しいことにチャレンジし続ける気がいをもてますから。

高齢者でも新しいことをどんどん始める方もいれば、若いのに全然何もしない方もいますよね。つまり、気持ちの若さも重要ということでしょう。あとは、見かけ上の若さというのは、実は寿命に響いているらしいんです。見かけが若いと本当に寿命も長いんですって。

みんなの介護 確かにテレビを観ていて、おじいちゃんおばあちゃんがインタビューを受けていて、え!この人90歳に見えない!という人もいますね。見た目も若くて、お元気そうで…見た目にも気を使うということが大切なんですね。

勝間 若々しいということですよね。地味な服を着て、高齢者だけで集まるんじゃなくて、若い人のように着飾って、若い人のように出歩いて、それから若い人と話をするということは大事ですよ。違う年代の人たちと話をすること。

みんなの介護 老人ホームでも、そういう取り組みが少しずつ行われてきていますが、まだ一般化されていないのが現状ですね。

「賢人論。」第15回(前編)勝間和代さんは「現代は、年代別に文化が分断されているのが問題。高齢者も若い人の文化に飛び込む勇気が必要だと思う」と語る。

インターネット時代こそ、リアルに集まる場所がほしい

勝間 年代別に文化が分断されていると思うんです。まず、それが良くないですし、高齢者も若い人の文化に飛び込む勇気が必要だと思います。不特定多数の年齢の人たちがいるコミュニティに、積極的に属してみるといいと思うんですよね。趣味でもいいですし、何かのイベントでもいいですし、ボランティアでもいいですし。

みんなの介護 実際、年齢の離れた人が入っていくと、冷めた目で見られたりはしないのでしょうか。

勝間 そんなことないと思いますよ。今回、取材場所としてお招きした『ウィンウィン』は私がプロデュースしているゲームスペースなんですが、親子くらいの歳が離れた人たちが、一緒にゲームしたりしていますよ。

みんなの介護 こういうスペースもそうですが、具体的にどういう所が交流の場になると思いますか?やはり一番手っ取り早いのは、趣味を見つけることでしょうか。

勝間 趣味のつながりは大きいですね。ここも高齢者の方に是非、使っていただきたいんですけど、まだ今はあまりいらっしゃっていただいていないのが現状です。こういう所に高齢者の方がどんどん来ていただけたら、20代30代の人たちがたむろしているのでいい交流の場になると思うんですけど。

みんなの介護 テーマがゲームというのは、とっつきやすいかもしれませんね。

勝間 何でもいいとは思うんですけど、何かテーマがあったら、とっつきやすいですね。共通の話題も生まれますし。ここは、この取材の後、囲碁教室になります。先生もいらして、10人くらいの方が囲碁を習うんです。

みんなの介護 先日AIと名人が対局したことがニュースになりましたが、囲碁は未知の世界ですね…参加者というのはおいくつくらいの方ですか?

勝間 千差万別ですね、20代~40代くらいで。先日の対局も、この場所を使ってモニタービューイングで20~30人くらいの方が観戦しながら、プロの解説を聞く会を開いたんですよ。そういう場に高齢者がいて、20代くらいの囲碁に興味がある子がいたりしたらいいですよね。

みんなの介護 この場所がそういう風になっていったらいいなと思いますし、そういう場がもっともっと広まっていけば、社会は変わるんじゃないかと感じました。

勝間 そう思っています。特にインターネット時代こそ、リアルに集まる場所がほしいなと思って。

理想は老老介護。介護業界が抱えている人材についての問題の解は、そこにしかない

みんなの介護 今回の取材は勝間さんがプロデュースされているカフェ&ボードゲーム『ウィンウィン』で行っています。こちらはどなたかからの要望があって作ったんですか?

勝間 そうではないのですが、海外ではこういうゲームスペースが結構流行っていて、日本にはあまりないので始めました。私は、何か直感でやりたいなと思ったら、すぐ始めちゃうタイプなんで。

今は一般的になっていますが、私がSNSを作ったのが20年くらい前なんですよ。ワーキングマザー用の「ムギ畑」というもので、当時はSNSだとは思っていませんでしたが、今考えるとSNSだなと。

みんなの介護 勝間さんは、やはり経営コンサルタントというイメージが強いですが、たとえば介護をビジネスとして考えたときに、どういうモデルを考えますか?

勝間 私は老老介護がいいと思っています。介護が必要な高齢者を、元気な高齢者が介護する。私は介護業界が抱えている人材についての問題の解は、そこにしかないと思っています。

みんなの介護 力が必要で、高齢者にはきつい仕事もあると思うのですが。

勝間 そこはロボットですよ。少し別の話ですが、AIつきのショベルカーを建築機械メーカーの『コマツ』さんで見せてもらって、操縦させてもらったんですけど、すごく楽しかったですよ。普通は2年も3年も訓練しないとできない操作を、女の子が3日くらいでできるようになるんです。GPSからデータをとってあって、地形が分かっていて、それに合わせて「こういう整地をしたい」という司令をするボタンを2つ3つ押せば、私でもできるようになっている。すごいですよね。

みんなの介護 肉体労働みたいなものは、ロボットやテクノロジーに置きかわるということですね。

勝間 大体、そうなるべきだと思っています。昔は考えられなかったでしょうけど、今は洗濯やお皿洗いも機械がしていますよね。

みんなの介護 確かに洗濯は、みんな手で洗っていました。本当に革命です。でも、それが家事という分野ではできて、介護ではできないわけはないということですね。介護にそういった革命的なロボット技術が入ってくるとしたら、人間が介在するところは、どういう部分でしょうか。

勝間 コミュニケーションであったり、心のお世話の部分であったり、そういう部分は人間が介在しなければならないでしょうね。あとは機械に指示を出す部分は人間の仕事です。たとえば、洗濯をする時には「これはウールだから」「コットンだから」などと人間が判断をして、洗濯モードのボタンを押します。それからお天気を見て、干すのは人間ですね。機械だけではできない部分があります。

「賢人論。」第15回(中編)勝間和代さんは「職業について考えるとき自分が人のために役に立てると実感できれば、それ以上の報酬はない」と語る

日本人は、職業に関する感覚というものを変えた方がいい

みんなの介護 老老介護の話がでましたが、勝間さんは定年についてはどうお考えですか?

勝間 まず前提として、定年という制度自体がなくてもいいと思っています。とはいえ現状、日本には定年制度があって、定年を迎えた方たちはその後どうするの?ということになったときに、介護職が一番ふさわしいと思っているんです。

みんなの介護 それはどうしてですか?

勝間 仕事にこだわらず、趣味でも、ボランティアでもいいですが、老後の時間の過ごし方のバリエーションのひとつとして、介護という選択肢を入れてほしいんです。誰よりも、高齢者の気持ちがよくわかるんですから。

みんなの介護 「オレは今まで、それなりの会社で役職まで勤めあげたんだぞ」みたいなプライドが邪魔をする部分はないでしょうか?

勝間 日本人は、職業に関する感覚というものを変えた方がいいと私は常々思っています。金銭的な価値や、プライドで職業を考えすぎだと思うんです。私は、ここで普通にカフェの店員もやっていて、机を動かしたり、掃除したりしていますけど、相手が「ありがとう」って言ってくれれば嬉しいじゃないですか。

自分が人のために役に立てると実感できれば、それ以上の報酬はないと思っています。大企業にお勤めだった方は、それなりの年金をもらっているでしょうから、金銭的な報酬がたくさんいるわけではないでしょうし。

みんなの介護 人と接することで、自分自身の介護予防にもなりますよね。

勝間 あとは例えば、介護に携わってくれた人たちを、優先入居できるようにする、その働いているお金を入居代金に積み立てられる、本人にも事業者にもメリットがある仕組みをつくっていくことも大切です。

みんなの介護 そうですね。一方、現役で働いている世代からは老後が不安だという声があります。そういう世代は、どういった準備をしておくべきでしょうか?

勝間 考えられることはふたつあって、ひとつは積立投資をしておくことです。月々1万円、2万円でいいと思うんですけど、投資信託の積立をする。その習慣をつけるというのがひとつ目。

ふたつ目は、何らかの形で自分でお金を稼ぐ手段を持っておくということです。週末起業でもいいですし、人に何かを教えられるというのでもいいですし、オンラインショップの運営でもいいんですけど。会社の給料とは別に、何か収入を得る術を持っておくことですね。

「賢人論。」第15回(中編)勝間和代さんは「できれば20代のうちから「要介護にならないための生活習慣をつけること」を考えて欲しい」と語る

若い世代に言いたいのは、「要介護者にならないための生活習慣をつけることが大事」だということ

みんなの介護 定年を迎えても何か収入を得る術を持っていたら、金銭面での安心感がありますよね。でも、それを見つけるのが難しそうな気もしますが…。

勝間 若いうち、元気なうちに、それを見つけるために勉強しましょう。そして、チャレンジするんです。とりあえず、やってみる。やってみてダメだったら考えればいいと思いますよ。「借金しなけりゃ、ノーリスク」というのが私の持論でして、今はインターネットもあるから、コストをかけずにいろんなことを始められますしね。

みんなの介護 確かにインターネットを使えば、色々なことがコストをかけずにできるし、学べますよね。

勝間 あと、若い世代に言いたいのは「要介護者にならないための生活習慣をつけることが大事ですよ」ということ。私は30代くらいから始めましたが、できれば20代のうちから考えたいですよね。

基本的に私は、お酒も飲みませんし、タバコも吸いません。様々なリスクが高いので。特にお酒は、認知症のリスクが高いです。お酒もタバコも中毒性という意味では、どちらも強いんですけど、タバコは死ぬほど吸ったって、せいぜい1日40本。でも、お酒は制限なく飲めちゃいますから、気をつけないといけないですよね。

みんなの介護 水だったら、その量は絶対飲めないですよね。

勝間 マヒしてるから、飲めてしまうんです。飲み過ぎは、胃腸も痛めますし、お酒を飲んだ瞬間に、頭も体も動かなくなりますよね。脳には当然悪いですし、肥満にもつながります。

私も20代の頃は、飲んで騒いでギャーギャーしてましたけど(笑)、だんだん勉強して、リスクがわかってくると、ちょっと怖いなと思い始めましたね。

みんなの介護 この『賢人論。』にご登場いただいた方も、自分の健康をどう守っていくかということに対しての意識がすごく高い方が多い気がします。例えば堀江貴文さんも「介護のない状態をつくるのが理想」で、口腔ケアをすることの重要性をお話くださいました。

勝間 確かにそれも重要ですね。私は、極力階段しか使わないようにしています。エスカレーター、エレベーターは使えば使うほど、介護の足音が忍び寄ると思っていますから。電車に乗るときは常に立っています。皆さん、私を見習ってください(笑)。

ロボットは本当に便利。実際にロボットと接してみることで、抵抗感が薄れていくのでは

みんなの介護 介護予防を心がけているというお話を伺いましたが、意識的に運動をしようと心がけていらっしゃるんですか?

勝間 運動をする時間を作るのがもったいないと思っているので、しっかりと自分の足で歩く、自分で食事を作る、電車の中で立っている、日常生活の中でできたほうがいいと思っています。

みんなの介護 勝間さんのお話を伺っていて、意志をもってやろうとすると続かないので、日常生活の中に取り込んでいく工夫を学びました。

勝間 日常生活こそが実は“生活”だということに、もう少し多くの方が気づくといいんですけどね。

料理は本当に頭を使いますから、いいですよ。私は、美味しいものが好きなんですけど、美味しいものを外食で食べようとすると、とてつもないコストになります。でも、自分で作れば1食300円くらいで作れる。美味しいものをリーズナブルな値段で食べようとすると作るしかないです。

みんなの介護 そして、すごく頭を使うと。

勝間 そういうことです。でもスーパーに行って見ていると、皆さん、お惣菜などできあがっているものをたくさん買われるので、もったいないと思います。頭を使うチャンスを放棄しているんですもん。

この食材の組み合わせでどうしよう、この香辛料とこれをどう組み合わようかと考えますよね。3品~4品作るのに、同じ時間にできるようには…と考えながら作るわけです。さらに、手と足も使います。料理をする間、座っている人はあまりいないですよね。買い物にも行くので、歩きますし。

人工知能やロボットというのは本当に便利。介護に対する考え方を柔軟にした方が良い

みんなの介護 ところで、ビジネスでは高齢者に関わるような、コンサルティングをされたことはあるのでしょうか?

勝間 ほとんどないですね。病院のコンサルはしたことがあるんですけど。私の専門がハイテクだったので、なかなか介護とは縁遠くて。

みんなの介護 なるほど。でも現在は介護の現場もそういったテクノロジーを使って、ロボットを取り入れようという動きが徐々に始まっています。ただ、その一方で「ロボットなんかに介護ができるわけがない」という意見があるのも現状です。

勝間 人工知能やロボットというのは、本当に便利ですよね。最近は家電量販店などでも見かけるようになったペッパーくんなんかいい例だと思うんですけど、実際にロボットと接してみるしかないと思うんですよね。

ロボットに対する抵抗感もですが「家事は労働じゃない」「老々介護は変だ」という意識を、ちょっと変えた方がいいと思うんです。もう少し柔軟性をもった方がいいですよね。それこそゲームなんかいいと思いますよ。頭がかたいと勝てませんから。

みんなの介護 確かに、考え方が一辺倒ではゲームは勝てませんね。

勝間 この前、面白いなと思ったのが、新聞で紹介されていた“コミュニケーション麻雀”という麻雀です。麻雀牌がタワシ位の大きさで、1人だと牌を引いたり積んだりするのが難しくて、2人1組か3人1組で協力しないとできないんです。頭も使うけど、心も体も使って…それを高齢者と若者とでやったら面白いですね。

「賢人論。」第15回(後編)勝間和代さんは「ビジネスの目線で見れば経済的に余裕のある高齢者向けの付加価値の高いサービスを提供するのも良いでしょう」と語る

特別なものより、最後にどれだけ楽しい友だちや仲間に囲まれて、快適な暮らしができるかが重要

みんなの介護 最後に、介護にかかる財政について、勝間さんの見解を伺いたいと思います。

勝間 国としてもどうしたらお金のかからない介護ができるか、もう少し考えていかなければならないと思います。

公的な制度を使った施設と、そうでない施設とがあるべきだと思うんです。例えば病院でも保険がきく診療とそうでない診療がありますよね。特別料金のかかる個室で、美味しいご飯が出て、有線放送が流れていて…みたいな部屋もあるじゃないですか。

高齢者も経済的に余裕のある方がいらっしゃいますから、そういう方向けに付加価値のあるサービスを提供するのもいいと思います。

みんなの介護 どのような付加価値が考えられると思いますか?

勝間 当事者も一緒につくれば、何を望んでいるのかわかると思います。お金のある高齢者が、自分たちの欲しいサービスを作るのが一番簡単な方法ですからね。

でも、恐らくですけど、そんなに特別なサービスが欲しいわけじゃないんだと思います。普通においしい食事が出て、便利な立地もあって、あとはコミュニティです。この人がいるから、私はここにいたい。一緒に住む人というのは大事だと思います。

みんなの介護 モノ的な価値ではなくて、ヒトが介在する価値ですね。

勝間 特に高齢者になって一人暮らしだと寂しいじゃないですか。配偶者がいたとしても、どちらかが先に死ぬわけです。一人になって、最後にどれだけ楽しい友だちや仲間に囲まれて、快適な暮らしができるかが重要ですよね。

みんなの介護 そういうサービスをどう展開するかというと、先ほど仰っていた発想の転換に鍵がありそうですね。

社会から分離して、何から何までお世話してもらってたら衰えてしまう。だから多世代交流ができるコミュニティが必要

勝間 できることは、なるべく自分でするようにした方がいいと思います。私は今、『ウィンウィン』というボードゲームを楽しめるカフェを経営していますが、店づくりでこだわったのは、セルフサービスにしようということです。自分で好きなタイミングに、好きなものを、好きなだけ飲みたい。それと、雀荘とは違って、ゲームをしたら全部自分で片付けるんですよ。ゲームを片付けて、飲み物を片付けて、机を拭くんです。

介護施設は、自己規律がしっかりした人のためのものが、まだ少なく感じますね。お世話は最低限でいいんです。介護も、なんでもかんでもやってあげちゃうと、その人の能力がどんどん落ちていってしまいます。

みんなの介護 介護者の「お世話しなきゃ」、要介護者の「お世話してもらうのが当然」みたいな従来的な感覚から、根こそぎ変わらないといけないという感じですね。そうなるともう、老人ホームという感じではないですね。

勝間 コミュニティと言ったほうがピンとくるでしょうか。シェアハウスの高齢者版というか、年齢を高齢者だけに寄せないほうがいいと思います。概念的なものを取っ払って、シェアハウスに幅広い年代の方が住んでいて、そこにいる高齢者がたまたま要介護者だった、くらいの感覚。先ほどお話しましたが、文化的に分離してしまうのが一番よくないと思っていますので。

みんなの介護 本来は一般的な“社会”というのは、文化的に分離していないですし、分離した途端に衰えていってしまうというケースはよくありますよね。

勝間 社会から分離して、何から何までお世話してもらってたら衰えますよ。

みんなの介護 勝間さんが高齢者という立場になったときに、どういう風に過ごしていきたいですか?

勝間 私は、まず要介護状態にならないように気をつけています。でも、もしもなったときにも、ある程度、自立を促してくれるようなカフェテリアメニューのように「この介護をお願いしたい」「これは不要です」といったことを選べるようにしてほしいですね。

何度も言いますが、私は介護予防に人一倍気をつけていますからね(笑)。

撮影:公家勇人

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森田豊
医師・医療ジャーナリスト
2022/11/07
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