撮影当時の関口監督の心境は?

本音を見せてくれるようになった母にびっくりしたり、楽しかったり

私ごとで恐縮ですが、オーストラリアに渡ったのは、20代前半。それから30年近く居住し、オーストラリアは“第2の故郷”となりました。20代から50代まで、人としての骨格をオーストラリアでつくり上げたと言っても過言ではありません。

なぜこのようなことを書くかと言うと、日本人にありがちな<建前>と<本音>の使い分けに慣れない!いまだに<面従腹背>(めんじゅうふくはい:服従している素振りを見せながら、内面では反対していること)に驚く!面と向かってガチンコ・トークが多かったオーストラリアの文化で生きてきたので仕方ありませんよね。そして、我が母は、この<ザ・日本人>だったわけでして、それが急に本音を見せてくれるようになったので、びっくりしたり、楽しかったり。

動画のキャプチャー1

母は、認知症のおかげで取りつくろうことができなくなり、建前だけでなく本音も見せてくれるようになったんですね。そして私は、そのことをとてもいいと思いました。そんな私の思いが母にも通じたから、母も惜しみなく本音をさらけ出してくれたんだと思います。

当時、私は母のことを<ジキルとハイド>と呼んでいたことを思い出しましたよ。

そのとき関口監督がとった行動は?

母を受け入れて、<他人の助け>を上手に活用しながら楽しく過ごす

「母のありのままの姿受け入れること」と「そのときそのときを楽しむ」ということでしょうか。現にこの動画の中で、私はケラケラ笑っていますよね!

ここでもう1つ大事なことは、母の気持ちや感情は、ずっと長くは続かず、「近いうちに忘れる」という事実です。私から見れば、随分とコロコロと変わる母の感情ではありますが、母にしてみれば、瞬間瞬間、自分の気持ちに正直であるということになるかと思います。

そんな風に、自分と母とでは、物事の捉え方がいつも違うことを理解したうえで、母とのつき合いや会話を楽しむ。ここに尽きるのではないでしょうか。

そして、<他人>の助けを借りる。この<他人>を探し求めることは、なかなか時間がかかることであり、また、あくまでも母にとって適材適所の<他人>ということになりますね。決して私にとっての 動画のキャプチャー2

今回の介護福祉士の浜崎さんに関して言えば、私が即断した理由は、浜崎さんの眼が大きく、母好みであったからでした(笑)。<随分と皮相的な理由でスミマセン…>

母が自ら変わることは、もうできない。そうであれば、ひとえに私がそんな母との生活を受け入れ、どう楽しみ、<他人の助け>を上手に活用し、介護者である自分を追い込まないようにするかだと考えます。

関口監督から読者へ伝えたいメッセージは?

「明日は明日の風が吹く」。変化に動じず、心の余裕を持ちましょう

1人で抱える介護は、いずれ必ず行き詰まります。介護の日常は(そして人生もですが!)ときに、ドラマチックなエピソードや小さな決定の積み重ねです。

また、本人の気分が今日よくても、明日はどうなるかわかりません。常に「明日は明日の風が吹く」状態です。そこで慌てず、動じない。自分の心の余裕を保てる行動を心がけるようにしておきましょう。

私の心の余裕は、母が落ち着いているときに生まれます。だから、認知症である本人が落ち着く要素を探し当て、ときには今回のように<イケメン介護福祉士>を動員して、その人にあったケアをすることが大事になってくると思います。

動画のキャプチャー3
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