アルツハイマー病新薬 レカネマブが日本でも承認へ 認知症対策に革命か?

日本の製薬大手エーザイがアメリカのバイオジェンと共同で開発を進めてきたアルツハイマー病の新薬レカネマブについて、8月21日、厚生労働省の専門部会が承認を了承しました。近日中に厚労相が正式に承認すると見込まれています。

改めて確認 レカネマブとは?



アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβの蓄積を防ぐ作用が期待できる薬剤です。アミロイドβ原材料となる、プロトフィブリルという状態の物質に抗体の“目印”をつけて、免疫の働きで除去するメカニズムです。

臨床試験では、レカネマブを18カ月投与すると、初期段階の患者の症状進行が27%抑制されたとされています。既に蓄積したアミロイドβに働きかけるのではなく、その原材料にアプローチするため、アルツハイマー病に対しては、早期発見し早期投与することが効果的だと考えられています。

一方、副作用については、投与者の12.6%に脳の腫れ、17.3%に微少出血などが現れたと報告されています。

いつから使える?

製造販売承認後に実際の医療現場で使用するには、原則60日から90日ほどかかります。それは、健康保険などの公的医療保険の適用対象とするために薬価を決める手続きが必要だからです。仮に8月中に厚労相が承認した場合、実際に日本の医療現場で使えるようになるのは最短で10~11月ごろになる見通しです。

注目の価格は?

7月上旬に承認されたアメリカでの薬価は年2万6,500ドル(約390万円)です。今後は国内の薬価算定に注目が集まりますが、日本でも恐らく近い金額になると考えられます。

例えば、既に利用されているアリセプト(ドネペジル)の場合、10mgの錠剤を1年継続投与したと仮定すると約19,000円ですので、価格だけを比較するとレカネマブはかなり高価です。

日本国内におけるアルツハイマー病の推定患者数は400万人以上とも見積もられていることを考慮すると(2015年3月発表「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」より)、メカニズムも期待される効果も従来までの薬剤とは全く異なるので一概には言えませんが、医療保険の財政負担が大きな課題となりそうです。

レカネマブの対象者は?



投与の対象となるのは、アルツハイマー病の初期の患者です。検査で脳内にアミロイドβが蓄積されはじめていることを検査した上での投与が必要となります。しかし、検査できる施設はまだまだ限られています。健康診断や定期健診等で診断をすることは、現在の日本の医療体制では困難なため、レカネマブのような新薬を活用するためには体制の構築も必要でしょう。

今後の展望は?

今後さらに研究が進むと、アルツハイマー病に起因する認知症の発症予防にも繋がると期待されています。

現在特に懸念されているのは医療保険の財政負担ですが、もし予防にも繋がるとすれば、治療しながら働ける期間がより長くなる可能性もあります。現在、65歳未満で発症する若年性認知症の方は全国におよそ3万5,000人いるとされていますが、働き盛りで発症した場合、仕事や家族に与える影響は極めて大きいものです。確かにレカネマブは高価な薬剤ですが、こうした暮らしを支える方々に対しての救いとなるかもしれません。