認知症のおじいちゃんに“背負い投げ”されて気づいたこと。老人ホームは人生の学校だ!

介護業界で20年以上働いた経験から、そのリアルな情報をSNSで発信している、てれたす®︎(@teretasu)さん。ツイッターのフォロワーは9月8日時点で約1.3万人。特に反響を呼んでいるのが、自身が勤務していた介護施設での入居者とのやり取りを振り返ったツイートです。140字に収まりきらなかったエピソードの裏側を聞きました。老人ホームでてれたすさんが学んだこととは。

介護はつらいことばかりじゃない

―― まず、介護業界に入ったキッカケを教えていただけますか。

生まれつき視覚障がい(右目はほとんど見えず、左目はメガネをかけて0.5)があり、車の免許がとれず、新卒で就職できたのが商品先物取引の会社でした。営業の仕事で、小金持ちをターゲットにして、テレアポを1日300~400件くらいかけていました。でも、お客さんが損をする姿を見ることも多くて…。マネーゲームではなく、シンプルに人の役に立っていることを実感できるような仕事がしたいと思い、介護業界に入りました。

―― ツイッターで介護の情報発信をするようになった経緯は。

昨年アカウントを開設して、最初は特に目的を持って運用をしているわけではありませんでした。意識が変わったのは、起業してからですね。そこから介護・福祉についてリアルな正しい情報を伝えていこうと。

介護はつらいことばかりじゃなくて素敵なエピソードも沢山ある。また認知症を初めとして、誤った認識をされているものも多い。あと、自分と同じ視覚障がい者の方に「障がいを持っていても人生終わりじゃないぞ」ということも伝えていきたいんです。

認知症のおじいちゃんに“背負い投げ”されて…

―― 様々な角度でツイートされていますが、とくに施設の入居者とのエピソードが印象的でした。79歳のおじいちゃんに”背負い投げ”されたのだとか。

20年ぐらい前、私が働いていた老健でのエピソードです。今だと考えられないのですが、各部屋がカーテンの仕切りもなく丸見えなんですね。私がおばあちゃんのオムツ交換をしている所におじいちゃんが通りがかり…オムツ交換を嫌がっているおばあちゃんを私が襲っているように見えたようです。お二人とも認知症の方でした。

―― そして”背負い投げ”されてしまった。怪我などはなかったんですか?

大丈夫でした。おじいちゃんが黒帯で上手く投げてくれたので(笑)。僕も柔道を高校の授業でやっていたので受け身が取れました。

―― どんな気づきがありましたか?

「これまで認知症の人は感情や物事の理解力がなくなっている人」という意識が心のどこかにあったのですが、認識が変わりました。感情は豊かに残っているし、人としての尊厳は何も変わらない。何より正義感から背負い投げしたおじいちゃんを”かっこいい”と思いました。

「もう死にたい…」に先輩はなんと答えた?

―― 他にこれはというエピソードはありますか?

こちらですね。職員目線で印象的なエピソードです。

「死にたい」と言う入居者の方は結構いるんです。私もアルバイトで介護を始めた時からこう言われると困ってしまっていました。その点、この先輩は上手く切り返して、おじいちゃんが元気になりました。介護は身体のケアだけじゃなくて、心のケアが大事だなと気づかされました。

人生の本質を突かれた言葉

―― 「お給料がなくなる」とは強烈ですが、優しさを感じますよね。こちらのツイートについても教えてください。

実際に介護が必要になると、まずお金の問題が出てきます。趣味や仲間がいることも大事、認知症予防になりますから。ちなみに僕は、この言葉を聞いてからサックスを始めたんですよ。

―― 楽器のサックスですか?

はい。老人ホームのハッピーバースデーをピアノではなくサックスでやったら面白いなと。今では、サックスの仲間ができて発表会に出るようにもなったんですよ。趣味と実益を兼ねています。

老人ホームで働き「思いやりの心」を学んだ

―― あらためて振り返って入居者の方々から学んだことは何でしょうか?

幾つになっても人の役に立ちたい。という想い、相手に関心をもって接する思いやりの心です。それが「愛」だと学びました。

―― 最後に、これから介護に直面する・現在直面している「みんなの介護」の読者にメッセージをお願いします。

介護は突然やってくるので、そのためにしっかりと準備する。準備とは知識を持っておくことです。お金のことや、遺言書の手続など、事前に知っているだけでずいぶんちがいます。

介護保険サービスは、私達が支払っている税金と介護保険料で運営されています。病気になったら病院に通うように、介護が必要になったら迷わず「老人ホーム」も含めた介護サービスを利用していただきたいと考えています。あなたと、あなたの大切な人の人生が幸せなものになる為に利用していただきたいです。

―― ありがとうございました。

お話を聞いた人

てれたす®︎(@teretasu)さん
20代から介護業界で働き始める。老人専門病院(療養型医療施設)、老健を経て特別養護老人ホームに転職。特養には10年以上勤務し、介護課長から施設長も務めた。その後起業し”ケアする人をケアする”を掲げた、「Care Call」を設立。 さらに二つ目の事業「フリーランスラボ」を今年6月に立ち上げた。「フリーランスラボ合同会社」の代表。