え?ボクの車椅子は体に合ってないの?
どうりで安定しないしお尻が痛いのか…

国際福祉機器展に行った。あるブースの前を通ると「その車椅子、体に合っていませんよ」と声をかけてくれた福祉用具のメーカーの方がいた。もう退院から6年以上も使っている機種だ。お尻が痛くなったりして何回かクッションの見直しをしたり、微調整はしたりしていた。

「この車椅子に乗っていたら体がどんどん前に滑っていくし、足も安定しない。背もたれも合ってないからお尻だってすぐに痛くなるでしょ?」とボクの悩みを言い当てた。心の中の悩みを言い当てた占い師みたいだ!

そうなのだ。前にずるずる滑っていくから何回もお尻を引っ張ってもらって体を後ろに戻してもらう。前のめりに座っているからお尻もすぐ痛くなる。麻痺側の足が安定していないからぶるぶる震える。なんだか居心地が悪かった。「そうか、合ってなかったのか…」。なにか話を聞いて「そうだったのか!」としっくりきたという妻は車椅子の研究を始めた。

まず、車椅子を借りている業者の担当に電話する。すると、その担当が本当に急にやめてしまったという。「え?やめたの?いつ?」。お互いにわりと気さくに話せる担当者だったので何も言わずに辞めてしまったのは意外だった。それも後押しとなってその業者に限らず他の業者にもあたってみることにした。(妻がだけど)

車椅子フィッターってすごい!
体に合う車椅子は1,000倍も生活しやすい

いろいろと相談をして、車椅子フィッターという方が我が家に来てくれることになった。そんな職業があることも知らなかった。最近ではレンタル業者でも車椅子フィッターがいる事業所もあると聞く。毎日の生活が車椅子と一緒の人にしてみたら、しっくりくる車椅子に座れることは今までの1,000倍も生活しやすくなることだろう。

「今の車椅子で神足さんに合うようにするならば…」と背もたれの具合を上にゆったり、下をきつめに締める。座面もさらに張りを持たせて真ん中が垂れ下がらないように調整。車椅子フィッターのおかげで座面が上がったのでこれまでの厚いクッション(お尻がすぐ痛くなるので最上級のクッションに替えていた)は合わなくなり、とりあえずではあるが付属品の薄いクッションに戻した。などなど、今できる最適というものにセッティングしてくれた。

本来ならば車椅子を替えるなど、座面幅を狭くしたり足置きもエレベーティング機能のついた物に替えたほうが良いとのこと。今回はいわば苦肉の策。けれど今までの車椅子をちょっといじっただけなのに、座った感じは以前とは全然違う。心地良い。

前にズルズルというのがなくなった。背中もぴったり添えるようになった。まあ、座高が高くなってしまったので食卓の高さと合っていなかったりで「ずり落ちない程度の急ごしらえ、ちゃんと合う車椅子に替えた方が良い。」と言われた。

元の車椅子に戻された…
え?ダメなの?

それから、その車椅子でいつも通っているリハビリデイサービスに出かけた。事情を知らないそこのリハビリ科の人が「だめですよ、これ」と言って、ベリベリとマジックテープを緩めて今までどおりの車椅子に戻してしまった。リハビリ科からケアマネにも連絡が入り「どうしてああなったんですか?あれじゃだめです」と言われたそうだ。あれはだめだったのか!?とりあえずお尻は安定したように見えたけど。

そこのリハビリ科の中村さんという理学療法士さんはボクが大好きな療法士さんだ。絶大の信頼を置いている。「その人のいるところがダメだと言うんならよくないのかもしれないなあ」。なんだ。だめなのか?

ついにNew車椅子!体にフィット!!
もっと利用者も自らで声をあげなきゃ

そこで、ケアマネさんに来てもらって相談した。ここ最近で起こった車椅子での出来事を話してみた。「今までと違う業者さんに車椅子のレンタルを頼んでみましょうか?」

そういってケアマネさんが提案してくれた業者と、フィッティングしてくれた人がすすめてくれた業者が偶然にも一致した。「タカノ」というクッションも開発しているメーカーだった。事務機器の椅子なども開発しているとのことで、いわば座ることのプロ中のプロ。まあ、偶然ではないのかもしれない。「この業者は良い!」と噂をされるところはそんなにはないのだろう。

そこのクッションと他社の車椅子のレンタルを頼んでみた。座幅を狭くしたりクッションも新しくした。足置きも斜めにできるエレベーティングにした。この前の車椅子フィッターの方からも情報がすでにタカノさんにも届いていた。「この業者さんなら車椅子の調整をバシッと決めてくれますよ」。そう複数の方から推薦してもらっただけある。車椅子とクッションはしっくり、食卓の高さも大丈夫。

さて、リハビリ科の意見も聞いてみた。すると我が家のご意見番の中村さんもお墨付き。しかし、車椅子一つ選ぶことがもう何年もうまくいっていなかったなんて自分でも驚く。

うまくいってなかったことも気がつかず生活していた。「なんか、座りづらいぞ…」。そう思っていたのに「そんなものか?」とあきらめていた。もちろん、意見を取り入れ微調節を何回もしてくれていたがうまくいっていなかったのか。見る人によってもそれぞれ意見も違う。どれをどう信じて良いものか…。が、もっと利用者も声は出すべきなのね。