ボクにとって
トイレは一苦労

今回はおむつについて書きたいと思う。前にも書いたが、ボクは病気になってから尿意を感じなくなった。正確に言えば、出るのがわかるのか、出たのがほかの部分に当たって(触って)出たのがわかるだけなのか、自分でもよく理解していない。

便意もあるのかないのかそれもはっきりしないが(軟便は知らないうちに出てしまうことがある)、硬い便のときは力んでいるので周りの家族にはわかりやすく、「パパ、トイレ?」と聞いてくれれば頷く。

厳密に言えば、便意に気づいた家族が大急ぎでトイレに連れて行ってくれて、トイレでできているだけの話だ。便が出ればお尻が気持ち悪いので「出た」とわかる。皮膚に当たった感覚はわかるのだと思う。正常ではないことは確かだ。まあ、おむつがなければ生活はしていけないわけだ。

人間が当たり前にできる機能は
最後まで残しておきたい

家族は、人間が当たり前にできる機能はできれば最後まで残しておきたいと考える。トイレに行くこともその一つだ。

ボクだってもちろん「おむつなんです」なんて人には言いたくない。1歳の孫だっておむつにしてしまったりおねしょしてしまったりしたことを「恥ずかしいこと」ともうすぐ思うようになるだろう。それが当たり前の姿だ。

体が動かないボクをトイレに連れて行くのは並大抵のことではないだろうに。それでも家族はトイレに連れて行ってくれる。そこで大便ができれば大きな仕事を成し遂げたような気になる。

人としてできることはなるべくその機能を残しておきたいと思ってくれる家族に応えるべく、トイレにせっかく来たときは出せればいいなあと思う。

でも、そううまくいくときばかりではない。結局、フライングで終わってしまうことも少なくない。しかも、トイレには小一時間かかる。大変だ。

おむつは今のところボクには必須なアイテムで、家族も発病後の10年余りいろいろ研究してきたと思う。おむつ問題は食事に次いで大きな介護の関心事となっている。

結構な金額も毎月かかる。だから、おむつ選びにも慎重だ。それに漏れたり肌荒れしたり、ひどくなれば褥瘡(じょくそう)もできたりとか、おむつの悩みは多い。「肌に優しい素材でなければいけない」と妻は言う。

おむつについて
白十字株式会社に聞いてみた

そこで今回は、おむつの専門的知識を学ぶため、白十字株式会社で「おむつフィッター」の資格もお持ちの棚橋さんにおむつについて詳しく伺うことにした。

いろいろな会社や場所でおむつについて何回か話を聞いたこともあったが、今回はボクが日頃感じている一般ユーザーとしてお話を聞くことにした。

おむつの説明を受ける

まず、どんなおむつがあっているのか、どんなサイズがいいのか、悩む方も多いと思う。一般的に、サイズは大きいものを選びがちだ。

以前、ボクにあっていると言われたサイズはMかML。けれど、入院した病院も、うちに来るヘルパーさんも「Lを用意してください」必ずそう言う。

現場のプロが言うのだから、こっちも自信がなくなる。体格が良く見える(骨格は大きいのかも)ボクは、LかLLかと思われがちだ。

大きいサイズの方が使用している紙の量が多く、吸収力が大きいと思ってしまうんだろうか?パッツンパッツンのギリギリサイズなのも、お腹周りがキツくってダメかもしれないが、テープ式だったら横の部分が重なりあっていれば(止める役目のテープ部分がペタペタ止める部材にしっかりと届いていれば)大丈夫なはず。

おむつの使い方で大切なのは
体とのフィット感

一番重要なのは、上側の吸収体あたりを持って尿道口に密着させること。股の両脇をしっかりフィットさせること。テープは、下のテープから先に止める。次に、反対側の下のテープ。そして、上のテープを止める。上も下も中心に向かって斜めに留めるのがポイント。

よく見るとおむつのテープを止める部分にはテープを止める向きのラインが付いている。それに従ってテープの向きを止めればいい。テープは上下平行に止めると漏れの原因になる。

太ももの肉がおむつに挟まれていないか、ギャザーがしっかり肌に密着しているか、確かめる。おむつやその中のパッドと肌に隙間があるとその隙間から尿が通って漏れが生じる。だから、隙間を作らないことが一番だ。

余談になるが、妻が白十字株式会社の商品で気に入っているパッドに「サルバ 尿吸収シート」というのがある。テープ式の中にもう1枚パッドを敷き、2枚重ねることになる。

白十字株式会社のサルバ尿吸収シート

普通、パッドは片面が吸水面。片面は防水になっている。でも、これは両方が吸水面になっているので、パッドとテープ式おむつの間に使ったとしてもふたつの間で尿を中継してくれる。まさしく隙間を伝わって流れる尿をストップさせてくれるという優れもの。

「『肌にパッドが密着してないな』と感じるときに必要なアイテムだ」と妻は言う。もし、自宅で心当たりのある人は使ってみるのもいいと思う。

しかし、念のために言っておくが、棚橋さんによればテープ式の中のパッドが1枚であってもちゃんとフィットしていれば普通は問題ないとのこと。「サイズもパッドを重ねることもしっかりフィットさせていれば問題ないはず」ともおっしゃる。

ぼたぼたパッドを重ねたってダメなんだ。だいたいよく見かける重ねすぎたおむつやパッドでは見栄えもカッコ悪い。いっぱい付けていれば漏れないってことは決してないわけだ。

パッドの商品表示にだって「おしっこ吸収の目安2回分」と書いてあるんだから、これ1枚で2回の尿には耐えられるはずだ。何枚も重ねる必要はない。

そうなると、ほぼあて方の問題になってくる。おむつを敷くとき、お尻の割れ目が中心にくるようにあてる。おむつの高さは腰骨あたり。そこから太ももと太ももの間にある紙おむつを摘んで、そけい部(尿道口)にしっかり密着させる。ギャザーも立てる。

おむつを腰の部分にしっかりあてる
おむつを敷くときはお尻の割れ目が中心にくるようにあてる

そして、お腹まであてたら下のテープを上向きに斜めに止める。下のテープ2つを止めたら上のテープ。そのとき、おへそ周りに余裕ができても大丈夫。逆にキツすぎるのが良くないそう。

おむつのテープを上向きに斜めに止める

あれこれ書いたが、ポイントは2つ。

1.テープ式のおむつのテープは下のテープから上向きに斜めに止める。お腹には少し余裕を持たせる。上のテープは下向きに斜めに。上下のテープはクロスするようになるはず。

2.股間のパッドは1枚ずつ摘んで尿道口にしっかりあてて隙間を作らない。これが重要だと改めて学習した。

おむつは自分一人でできるわけではなく、誰かにやってもらわないとならない。尿漏れなどは外出先では致命的。自宅でだって介護してくれる人にとっては何倍も重労働になる。正しいあて方を学べば少しは楽になってもらえるのかもしれない。

家族やヘルパーさん
「いつもありがとう」

プロのヘルパーさんでも家族でも、誰かにおむつを替えてもらわなければならないのはちょっと恥ずかしい。当たり前のことだ。「ああ、出ちゃってるよね」と、おむつを開けてもらってボクはそっと目をつぶる。

やってもらわなければならないことだけど、いつまでも慣れることはない。出ていることに気が付かず、しばらくそのままになってしまったときなどは、肌がすぐに赤くなる。肌は弱い方である。

すると、妻は「ごめんね、気がつかなくって」と言う。「ごめんね」は、ボクの方だ。「ありがとう」と、いつも言わなければならない。

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