最先端の技術を体験できる!
車に目がないボクの血が騒ぐ

NTTドコモからこんな案内があった。「愛・地球博記念公園における自動運転の実証実験に関するご案内」。

愛知県は将来の自動運転サービスの実現を目指して、2016年度から自動運転の実証実験を行っている。

その一環として、2月に愛知県長久手市にある愛・地球博記念公園(モリコロパーク)で、トヨタ紡織が開発した自動運転コンセプト車両「MOOX(ムークス)」に試乗したり、記者発表を聞いたりすることができる機会があるというのだ。

最近、最新の車の情報からちょっと離れていたが、昔は日本カー・オブ・ザ・イヤーの審査員まで務めた男だ。この機会に最新情報を確かめておきたいと、急遽参加することに決めた。

ボクがこの案内に食指を動かしたのは、案内文に「車窓のAR(拡張現実)映像に合わせ音響、振動、香りをもたらす装置」や「試乗車のジェスチャーによる操作に対応した映像コンテンツ」、「乗客の体温、心拍数のモニタリング」、「深紫外線を用いた自動除菌システム」など、とにかく最先端な実証実験であることがわかる言葉が散りばめられていたからだ。

夜間には、MOOXに搭載したプロジェクターで、プロジェクションマッピングを車両前方に投影することで自動運転車輌を活用した夜間エンターテインメントの可能性を探るという。

安心、安全な車内で観光の誘導を目的としたバーチャルツアーが体験できる、トヨタ自動車の自動運転コンセプト車両「SQUAL(スクォール)」や、LIXILと共同開発した移動式バリアフリートイレ「モバイルトイレ」も展示しているという。

最近ボクは、VRなどを体験しているが(Facebook傘下のOculusが販売している「Oculus Quest2(オキュラスクエスト2)」なんかで体験している)、最先端なものを体験できるといういい機会だ。行くしかない。

当日、駐車場をちょっと間違えてしまい、大きな公園の中をぐるぐると移動して会場についた。自動運転の車の試乗の時間になるまで、ほかの展示物の説明を聞くこととなった。

MOOXと記念撮影するコータリさん

「SQUAL」を体験!
まだ先と思っていた末来が今目の前に

SQUAL体験では車椅子のためのスロープも準備されていて、快適な空間を体験できた。可変型車室空間により必要な機能を必要な場所に届ける「空間配達」をコンセプトにしているそうだ。

SQUALは、NTTドコモが開発している「新体感観光サービス」による観光地案内が特徴だ。この「新体感観光サービス」は、位置情報に応じて最適な観光情報を提供する機能に、XR(AR/VR/MRなど)を組み合わせたサービスだという。

3面の窓をXRの画像が取り囲む。5Gの環境下での体験。デジタルコンテンツを使用するときにはネットの環境がモノをいうが、そういう点では一番安心できる環境というわけだ。

さらにすごい最新の技術は、ジェスチャーでのスイッチコントロール。ディスプレイに映し出されるものは、非接触のジェスチャーで操作できるのだ。

それと、画面で行き先を選んで、喫茶店で飲み物の注文をする。降りるとその注文したモノをロボットが届けてくれている。

SQUALを体験するコータリさん

それ以外にも、最新の技術は詰め込まれていて、全部挙げるときりがないほどだ。指を宙で摘んだりすると画面上のスイッチと連動する、そんなアニメで見ていたような世界がここにあるなんて…。

もう未来はそこまできている。このコロナ禍では、非接触で行えるジェスチャースイッチコントロールは、エレベーターのボタンなどいろいろなスイッチのON・OFFにも活用できそうだ。

こうした技術を研究されてきた方々も、普及はまだちょっと先と思っていたかもしれないが、思わぬところで世の中の浸透が早まってきた。すごいなあと思う。

外出先では欠かせない!
移動式バリアフリートイレ

そして、今回ボクが特にいいなあと思ったのは、メインのものではなかったかもしれないが、バリアフリーの移動式トイレ。最初のリーフレットの段階からボクとしてはこれが気になっていた。今回はこれを詳しく取材してみようと思う。

モバイルトイレとコータリさん

この「モバイルトイレ」はトヨタ自動車とLIXILが共同開発したものだ。車椅子の人が外出先で安心して使える移動式バリアフリートイレだという。

バリアフリートイレについては昔から何回も書いてきたが、「誰がどのように考えて作ったバリアフリートイレなの?」そう疑問を持つお仕着せのバリアフリートイレも少なくない。

車椅子に乗ったことのない人や、子どもを持ったことがない人が設計したんだろうなあと思うような、そんな多目的トイレもかなりの確率で存在する。

せっかく特別にバリアフリートイレ(多目的室)を設けてくれるんだったら、もうちょっと考えてくれればいいのにと思ってしまう。

こんなところに赤ちゃん用のベッドや椅子を作ったら、赤ちゃんに「手を伸ばして鍵を開けてください」って言ってるようなもんだよなとか、この位置では「蛇口をいたずらしてください」って言ってるようなもんなんだよなとか、この位置にベッドがあったら車椅子もベビーカーも置いとけないけどね、とか。

ものすごくかっこいいスタイリッシュな最近の商業ビルでも、まだそうなっているところが多くて驚く。昔のビルならともかく。

このトヨタ自動車×LIXILのモバイルトイレは、パラアスリートや福祉の専門家、さまざまな車椅子ユーザーに意見を聞きながら開発されたようだ。見ればいろいろな意見が組み込まれているのがわかる。

トイレの内部は車椅子が十分に回転できる広さもある。真ん中には仕切りのドア(しかも引き戸)があり、ドアの手前の前室には壁に収納できるベッドがある。このベッドっていうのは、バリアフリートイレであってもまだまだ少ない。

トイレのベッドに横たわるコータリさん

統計があるわけではないが、ボクの感覚的な感じではバリアフリートイレ全体の10%ぐらいだろうか。

実際、ボクが外出先でトイレに行こうと思ったら、ベッドがなければ本当に苦労する。なければ相当困る。ないのでトイレには行けないことの方が多くなる。ベビーベッドを使用できなくなった(成長した)幼児の障がい者などは、車に簡易型のキャンプで使うようなベッドを積んでいると聞いたことがあった。ベッドはちょっと小さめではあったがあることがありがたい。

ボクにとって必要な手すりでも
ほかの人には要らないものかもしれない

このモバイルトイレを使用してみた妻は、ボクをベッドから車椅子に移乗するときに支えになるバーや手すりがあるともっといいのになあと言っていた。だけど、これまたいつも問題になるのだが、障がいっていうのは千差万別、100人いたら100通り。

こっち側に手すりがあった方がいい、こっちがいいと人によってまったく違う。手すりがたくさんあるのが邪魔になることもある。で、結局ない方がいいのかってことにもなる。

それで、ボクも考えた。ベッドの側面に埋め込み式の手すりをつけたらどうだろう。必要に応じて手すりが側面に2ヵ所ぐらい出てくる。横になって胸ぐらいと膝ぐらいの位置かな。壁のない方は転がって落ちない小さい柵の代わりにもなる。

壁側にもつける。両方についていれば、ベッド上で体を移動する本人もそこを持って力を入れやすくなり補助できる。ベッドの柵は結構必需品なのだ。柵まではいかなくても、10cmぐらいの手すりでいいと思う。体を起こすのを介助する妻も、そこを持てば力が入りやすくなると思うんだよね。

久々によく考えられてるなあっていうトイレに出合ったので、意見にも力が入る。

まず、トイレに入る段差問題がある。このトイレは、そこが緩やかなスロープで解消されている。誰かに押してくれるならともかく、一人でトイレに入ることを考えれば緩やかなスロープがいい。

手を洗う蛇口も数ヵ所を用途によって使い分けられる。トイレに座ったままでも車椅子に乗っていても膝がすっと入る設計にちゃんとなっている。

ベッド側の前室にも洗面化粧台がついている。机が引き出すと出てくる設計。トイレというか、お化粧みたいなちょっとした作業だってできる居心地がいい部屋だ。

モバイルトイレに入るコータリさん

あと、いつも悪いなあと思うことにトイレの時間が健常者に比べてかなり長いことがある。これもよく思うんだけど、外で待っている人のためにあと何分ぐらいかかるっていう表示が出せればいいのになって思う。

あと15分かかりますとか、電光掲示板かなんかでタイマーになっているとか。そうすれば、外で待つ人も今入ったばかりで時間がかかるのか、もうすぐだから待っていようとかわかる。

これはすぐにでも実用化してほしい。普通のバリアフリートイレにも採用してほしい。ボクからの要望だ。

ボクのように一人ではトイレにも行けない障がいを持つ人もいれば、自力でトイレに行ける車椅子ユーザーの方もいる。そういう方は一人でいかにトイレを楽に済ませるかというのが問題になる。課題は人によって全然違う。

「トイレが出向く」という発想はすごい
外出の幅も広がりそうだ

モバイルトイレは、障がい者や高齢者がトイレのことを考えて外出が億劫になってしまったり諦めたりすることがあると聞いて、それなら「トイレがそこに出向いていけばいいじゃないか」という発想からできたらしい。

どんなところにモバイルトイレは出向くのだろう。イベント会場や、もしかしてオリンピックの外部会場なんていうところに設置したらと想定していたのかもしれない。これがあれば安心できる。

今までバリアフリートイレがないから諦めていたキャンプ場や公園、土手にお花見に行ったり海辺に夕陽を見に行ったり海水浴をしたり…。夢は無限に広がる。

大体、バリアフリートイレがないところには、障がいや高齢者など、バリアのある人は来にくいだろう。「トイレがこれだと行けないな…」と断念してしまう場合が多いのだ。だけど、そんな場所にバリアフリートイレが設置されるだけで「行ってみようかな」と思うに違いない。

今回のモバイルトイレのように牽引式の大きなトレーラー(L5300×W2500×H2900)もいいのだけれど、2m×3mぐらいの牽引式トイレがレンタルなんかできたら、車で引っ張ってどこかに行きたい。シャワー付きもいいな。

ベッド付牽引式トイレ、ぜひトヨタレンタカーかなんかでオプションでレンタルをしてほしいものだ。この1年、車で日本中に仕事をしに出かけた。イベント会場や観光施設、名所旧跡を車椅子で歩き回ったが、いつもトイレとシャワーのことばかり考えていた。

バリアフリーと謳っていても、ボクが使えるものはなかなかない。高速道路上にはベッド付きのバリアフリートイレもかなりの確率で完備されたが、街ではほとんど見かけない。

車椅子で入れるベッド付きトイレと、シャワーを一緒に連れて歩ければ最強だ。今回の自動運転の未来型車両の試乗会で、このモバイルトイレを拝見して新しいトイレの妄想が止まらなくなった。

『コータリン&サイバラの 介護の絵本』

神足裕司[著] 西原理恵子[絵] 文藝春秋社 (2020/8/27発売)
9年前にくも膜下出血で倒れたコラムニスト コータリさんと、漫画家 西原理恵子さんがタッグを組んだ連載「コータリさんからの手紙」が本になりました!
現在好評発売中です!