「Clubhouse」がはやっているらしい
誰かボクを招待して!

1月初旬、「“Clubhouse(クラブハウス)”っていうSNSがはやっているらしいよ」と息子から聞いた。「なにそれ?」

そういって考えていると、昨年アメリカでかなりの資金調達をして話題になっていたあれか、と気がついた。

それから数日経つと、あれよあれよという間にTwitterでフォローしている著名な方が「Clubhouse始めました」なんていう書き込みをし始めた。

「へえ、なんだろう」新しもん好きで一応流行を追って仕事をしてきたボクとしてはのぞいてみたいではないか。

ところが、Clubhouseには誰かに招待してもらわないと入れないらしいと知る。1人の会員で招待できるのは2人まで(招待できる人数が増えた人もいるみたい)。「おお!なんたること!」誰かボクを招待してくれる人はいないか?

音声でコミュニケーションをとるSNS
喋れないボクには天敵?

Clubhouseは音声版Twitterのようなものといわれ、音声でコミュニケーションをとるツールだ。だから喋れないボクには天敵みたいな存在でもある。

Clubhouseは2020年3月にアメリカのAlpha Explorationという会社が始めたという。まだ1年ちょっとなわけだ。日本語版はなく表示は英語。Clubhouseがこんなにも注目を浴びているのには巧妙な戦略があるという。

まず「招待制」であるということ。今のところ、すでにClubhouseを利用しているユーザーからの招待でなければ入れない。なかなか入れないとなると、余計入りたくなるわけだ。

だから、ユーザーからの招待を待つしかない。もしくは、息子から教わったのだが、「まずClubhouseに登録する→すると自分が電話番号を知っている知人の中でClubhouseに登録している人がいると、その人に通知がいく→その人たちの中で枠を譲ってくれる人を待つ」っていう方法が良いらしい。しかも今はiOSのみ。Androidでは利用できない。

これはどうにかしてClubhouseに入らなくてはとアプリをインストールし、登録もしてみた(ユーザーネームの登録だけは先にできる)。若い知人2、3人に「周りにClubhouseをやってる人いない?」と聞いてみた。

「いないですねえ」そうか、まだダメなんだなあ…。まだそんなに使っている人がいなかった1月の始め。まんまとClubhouseの戦略にハマっていく。

登録したその日にFacebookとTwitterで呟いてみた。「Clubhouseに入りたい!」すると1日も経たず知人から「招待送ります」との連絡。言ってみるもんだ。「ありがとう!!」うれしかった。

ラジオみたいだけど参加型
ざっくばらんな話で盛り上がる

加入した夜、スマホに通知が来た。知人のエッセイスト(タレントでもある)が「寝る前にちょっと話しませんか?」というルームを立ち上げるというので、入ってみることにする。事実上のClubhouseデビューである。

この通知はフォローしていると出るらしい。ボクにとっては彼女は互いにフォローしあっているまだ数少ないユーザーの一人だ。入ってみると有名人だけあってかなりの人が彼女のルームに入ってきて聞いている様子。

Clubhouseを楽しむコータリさん

モデレーター(ルームの主催者)の彼女が司会のように話し始める。続々と入ってくる人の中で彼女が「神足さんも聞きにきてくれてる!ありがとう」とか気遣いも見せてくれる。

フォローしあっていると別枠のところに入室したことが表示されるのでわかるのだ。モデレーターが、入ってきた中で数人一緒に話す人(スピーカー)を指名して話を始める。その日のスピーカーも元雑誌編集長だったり、占いの著名な方だったり面白いメンバーだった。Clubhouseのメンバーなら誰でも聴ける。いいねボタンとか文字でのコメントはできない。

モデレーターが質問を投げかけたりすると、多くのリスナーたちが「手のひらマーク」を押して「挙手」をし、モデレーターが指名したらその人が話す。話したこともないテレビで見かけるような人と普通に話せる。

彼女たちがたまたまメジャーなメディアに露出していることもあったかもしれないが、なんかラジオを聞いているみたいだなあと思った。しかも公開リスナー参加型。何を発言されるかわからないという危険性もあるわけだが、まあ公共の電波ではないので、生放送でNGワードを喋ってしまって大惨事というような危険性は回避される。その分ざっくばらんな会話ができるわけだと思う。

SNSでよく問題になっている批判や攻撃が実際の音声でどれほど行われるかはわからないが、一応登録は実名。別名というところでクリエイター名を記入できる。ボクの場合だったら「コータリン」とかも入れられるワケだね(まだ入れてないけど)。

紹介ということもあり、今のところ治安は良いように感じる。鼠算のように利用者が増えていくのであろうから、今後どうなっていくかは未知の世界。ほかにも、相互フォローしているミュージシャンのルームにも入ってみた。

彼も同じ頃Clubhouseを始めた新人。こちらはマニアックな会話がなされている。好きな人が集まり好きな話をする。彼のファンは当然のことながら、ニッチなテーマの話を聞きたい方も楽しめることだろう。

議論が白熱して喧嘩になったりしないんだろうかと、退出してから余計なお世話なことを妄想したり、初日のClubhouseめぐりは収穫も大きかった。ファンとの距離がこんなに近いのもすごいことだなあと思う。

例えば今後何かのプロモーションでタレントがルームを立ち上げるなんてことがあるのか?招待枠がプラチナチケット並みになってしまって、大騒動になるかもしれない。今でも招待枠がネットショップで売り出され、消去されたなんて話まで聞いた。「ちょっとしたブームだね」どころの話ではないのかもしれない。

かつてはチャットやmixiも
いろんな出会いがあったなあ…

そういえば、15年前ぐらいには「mixi」というのもはやった。それにも似ている。mixiはコミュニティを立ち上げて、その中でのやりとりを楽しむ。当初は招待制だったのも似ている。Clubhouseよりも閉鎖的だったのか、親しい仲間で楽しむのが中心だった。

それより前に、まだ電話回線でパソコンを使っていた頃はチャットが流行っていた。これこそ招待制ではないが、Clubhouseのようなもので、世界中の人とつながっていた。妻はよくヨーロッパの知人と会話していた。エヴァンゲリオン好きな人が集まってルームを作ったり(考えてみればその頃はTV版エヴァンゲリオンの時代だったな)、行き当たりばったりで集まったり。

出会い系として利用されて問題にもなった。その頃、東京在住の知人が沖縄の人と結婚すると聞いて、どこで知り合ったか聞いたらチャットで知り合った人と結婚したなんて言う。新しい時代だ!と、おじさんとしてはかなりビックリした。

その方は、チャットで毎日会話して電話もするようになり、写真を交換したという。そして中間地点の名古屋で開催された「愛・地球博」ではじめて会い、その日のうちに結婚を決めたんだそう。

すごい世の中になったなあと思ったが、母は「昔はまったく知らん人と結婚式当日に会って結婚しとったんじゃけん」とも言っていた。

みんな「リアルな会話」に飢えている
これからどうなっていくのか楽しみだ

これだけ変化の激しい時代に生きているのはすごいことだなあと思う。「チャットで知り合った人とリアルで会う(オフ会)のはどうか?」なんていう原稿も書いたなあ。

Clubhouseをきっかけに、そんな古いツールのことを思い出した。ボクが30代、40代の頃の話だから、若い人は知らないかもしれない。

いろいろなツールがあったが、なんで衰退していったのか。閉鎖空間での会話よりも、より多くの人に発信できるTwitterやFacebookが優位に立った時代の流れだったのだろうか。

衰退していくツールには時代背景の訳もあるのだろうが、出てくるものにもやはり当たり前だが訳があるに違いない。

戦略が巧妙だという点のほかにも、Clubhouseの流行の背景には、やはり世界中の⼈がリアルな会話に飢えているという背景も影響しているのだとボクは思う。実際に会って話せない分、余計に。

それにさっきラジオみたいと言ったが、作業をしながらの「ながら聞き」ができるのだ。これまでSNSをクルーズしていた時間で、会話に聞き入ってみてもいいかなと思う。すぐ飽きるんだろうか?

誰かが言っていた。「セレブな方々の会話を盗み聞きしてるみたいなの」と。そんな使い方もあるんだろうな。有名な評論家が真面目に討論を繰り広げていたり、海外のセレブがたわいもない会話をしていたり。

人の声が聞こえる。ボクは話せないので今のところ聞く専門になっているが、ルームを立ち上げたりもしてみた。

たくさんの人が来てくれた。声が聞こえるのはうれしい。しかも音声状態は良いと感じる。

コータリさんのClubhouseルーム

アメリカではClubhouseの使用者の年齢は結構高めで、仕事のために使用している人が多いとも聞いている。日本では落語を聴かせるルームや、絵本の朗読をするルームができて、聞くのが専門の人が入っていたりだとか、日本独特のClubhouse方式ができあがっているとも聞いている。

モデレーターの力量がものを言うようにも思う。これから日本のClubhouseができあがっていくのだろう。

今回のClubhouseのこの記事を書くのにいろいろ調べていたら、Twitter社でも音声チャットのデモを始めているらしい。Twitterも会話で!の日も近いのではないかな。Twitter社の戦略は成功するのか?その頃Clubhouseはどうなるんだろうか?この記事が公開になる1ヵ月後は、Clubhouseももうメジャーになっているんだろうなあと思う。そんな勢いがある。楽しみだ。

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