町の再発見プロジェクトに参加
チームの中で、ボクは若い方から2番目だ

11月1日、渋谷駅直結の「渋谷スクランブルスクエア(東棟)」という複合施設がオープンした。そこの15階に「SHIBUYA QWS」という会員制の共創施設ができた。

最初は「コワーキングスペースのようなものなのかな?」と思っていたが、オープンから5日間利用してみて、それとはちょっと違っていた。

まず、ボクがどうしてここを利用することになったかをお話ししようと思う。

最近ボクの活動のひとつとなってきた、東大稲見・檜山研究室の登嶋さん率いる「先進的なシニアによる町の再発見プロジェクト」が、「QWS」のチャレンジプロジェクトに採択された。

そして3ヵ月もの間、この場所を使用できることになったのだ。

チームに参加しているコータリさん

ボクたちのプロジェクトでは、普段は世界中を撮影して回っている平均77.6歳の元気なシニアたちが、渋谷の町を再発見していき、VR(360度カメラ)で渋谷を撮影して紹介する。

映像を見ていただくのは、外出できない施設や病院、お家にいるこれまた高齢者のみなさんだ。

このチームの中には91歳の方もいて、ボクは若い方から2番目だ。ボクは入退院を繰り返しているから、撮る側だけじゃなくて、故郷の広島や各地の360度映像を病室で見せてもらう側にもなる。

チームの皆さんはFacebookもVRカメラもiPhoneなどを使いこなすことはもちろん、映像の編集もこなしてしまう。

"VR"はまるでその場にいるような感覚だ
渋谷は今、ソフト面・ハード面で変わりつつある

VR映像の良いところはビデオとは違い、カメラマンが撮ってきた方向だけでなく、自分が右を向けば右の風景、上を見上げれば空が見えたりすることだ。

まるでその場所にいるような感覚になる。そんな映像をささっと旅先で撮ってきて見せてくれるのだ。

今回のプロジェクトはせっかく渋谷で行うのだから、渋谷の町を再発見しようということになった。

1964年の東京オリンピックの話も出た。当時すでに社会人だったメンバーもいれば、高校生だったために学校をサボって見に行ったというメンバーもいた。まだ4歳だった当時、マラソンの旗を沿道で振った思い出を語るメンバーもいて、オリンピックひとつとっても、渋谷にまつわる話はかなり盛り上がっている。

「QWS」のオープニングパーティーで、渋谷区長の長谷部健さんがこのように話しておられた。「“ちがいをちからに変える街、渋谷区”を基本構想にして、人種、性別、年齢、障害を越えて渋谷区に集まるすべての人の力を街つくりの原動力に変えていく」のだそうだ。

今、渋谷はソフト面もハード面でも変わりつつある。

渋谷は可能性の交差点
ボクたちも、若い人たちの養分になれば嬉しいなぁ

渋谷は、数年前に男女平等と多様性を尊重する条例に基づき、同性カップルへのパートナーシップ証明書の発行など人間の多様性を切り開いてくれるシステムをつくって話題にもなった。

障害も性別も年齢も、この地上に暮らす人々の多様性を受け入れて世界に発信していく街づくりだそうだ。

その渋谷区にシンボル的な建物「渋谷スクランブルスクエア」ができた。そこの「QWS」もまさしく「渋谷から世界に問いかける可能性の交差点」ということらしい。

登嶋さんと一緒に撮るコータリさん

ここはオフィスというよりも、人と人をつなぐ場所といった方が良いかもしれない。

会員やプロジェクトのメンバーが、今やりたいことを公表し、一緒にやっていく仲間や支援者を募ったり、自分たちをより高めていったりできる、そんなスペースだ。

ボクたちのプロジェクトは、もちろん年齢層がグッと高い。ほかのプロジェクトは学生さんや若者がほとんど。

ほかのチームでは、「エスカレーターの片側使用をなくすには」「超情報化が生み出す鏡像世界『ミラーワールド』ではどんな価値が生まれるんだろう?」「父親が自分の子どもの未来に対してできることは?」…などがテーマに挙がっている。

難解に聞こえるものや、ほんわかするものまで多種多様。熱いのは会員だけでなく、サポートしてくれる企業や大学などもそうだ。

もしもやりたいことがあるのであれば、人間と人間の交わる「QWS」に来てみても悪くないと思う。ボクたちも会員として、若い人たちの何かの養分になれば嬉しい限りだ。

取材協力:SHIBUYA QWS 公式サイト / facebook