今年こそ出合うぞ、理想の車椅子に!
ボクもすっかり「国際福祉機器展」の常連だ

今年も国際福祉機器展に行ってきた。今回は、車椅子と乗用車などの乗り物に焦点をあてて回ろうと心に決めていた。

というのも、ずっと追い求めている車椅子に、一向に出合わないからだ。

車に関しては、ボクが言い続けていたこと(外車に福祉車両がないこと)が、昨年の国際福祉機器展でお披露目された。

今年はそのブースもじっくり見ようと思った。

倒れてから数年後、はじめて国際福祉機器展に訪れたとき、「ここは異文化だ」と感じた。

今まで出合ったことのない世界で、こんなに熱い業界があったのかと驚いた。

あまり関心を持たなかった世界でもあるが、知らなすぎた。それを恥じた。

その約5年前は、介護福祉機器も過渡期にあり、新しいものがどんどん生まれていた。

日本を席巻し始めたAIというものや、ロボットを搭載したさまざまなものが並んだ。

車椅子もWHILL(※注)が生まれ未来を感じた。

(※注 WHILL…モーターで走行・回転・段差の乗り越えなどができる画期的な電動車椅子のこと)

お金持ちが乗る車椅子かと思ったら…
ボクの憧れた車椅子は、今ではみんなが乗っている

WHILLにはじめてであったのは、それが世に出始める頃だった。

災害時に活躍するJINRIKI

川崎で、創業に携わった3人に話を聞いた。

まだ若いが、有名な企業にいた面々が独立して立ち上げた会社だった。

ちょうどそのころ、初めてつくった50台が予約で完売したと話していた。

試作機に乗せてもらったが、デザインも、スマートフォンと連動できるシステムも、タイヤの構造も、何もかもが今まで知っている車椅子とは一線を画していた。

未来を感じたし、福祉用具の概念も逸脱していた。

「こんな車椅子に乗ってみたい」。見た瞬間にそう思った。

実際に、ボクの家で乗るとしたら?と想像してみた。

玄関から門までの階段、そして部屋の構造などの都合によって、ボクは介助用車椅子を使用している。

それを踏まえると、介助用の機種がない、購入金額も高いなど、WHILLはボクにとってなかなか難しいようだ。

やっぱり無理か…と頭の中の想像を打ち消した。

しかし、これに乗る人はどんな人なんだろう。

きっと六本木ヒルズかなんかの高層マンションに、ゆったりと暮らしている人に違いないと、そう記事にも書いた。

当時は「憧れのもの」と感じていたが、それから1、2年ぐらい経つと、介護保険でレンタルできる機種もでき、さまざまな空港や場所で見かけるようになった。

会社もあっという間に大きくなり、世界でWHILLは名をとどろかせた。

しかも、我が家の近くのショッピングセンターでも、乗っている方などを見かけるようになった。

ボクの想像をはるかに超えて、一般に浸透していった。

やっぱりかっこいいものはかっこいい。それを越える車椅子にはなかなか出合わない。

何度も乗りたいと思って、ブースにも足を運んだ。

そのたび、今まで「こうだったら良いのに」と思っていたようなことが改善され、ますます身近にも感じた。

例えば、かなり重くて持ち上げることは不可能だったが、ある程度まで分解できて車に乗せられるとか。

それでも、ボクには条件が合わないところがあり乗れなかった。

こんなに好きなのになあと毎年思っていた。

だから、最近では自分の好きな車椅子を作ったらどうだろうと思うようになってきた。

そういう気持ちで、今年は車椅子を見てみようと思った。

遊びに付き合ってくれる、かっこいい相棒がほしい!
難しいのもわかってるんだけどね

ボクのほしい車椅子はまず、かっこよさがなければいけない。かっこいい車椅子。

そしてボクのわがままな遊びに付き合ってくれること。

乗り心地も、お尻が痛くならない車椅子が必須で、とにかくアクティブ最優先。

車椅子に乗る人は身体が悪いことが多いからか、アスリート系の車椅子以外ではなかなかそういう車椅子は見かけない。

育ち盛りのお子さんの車椅子だったら、どうなんだろうと常に考える。

河原でバーベキューをする、海に行って砂浜を歩く、山道を歩く、旅行に行って風呂に入る、またはシャワーを浴びる。

できればプールにも海にも入りたい。

少しぐらいの段差を乗り越えられれば、押している人も楽である。

その用途用途に合った車椅子はあったとしても、もちろん1台ですべてをクリアすることは不可能だ。

でも、ボクはそんなことが1台でできる車椅子がほしい。

水に濡れても、悪路でも、遊びに日常に付き合ってくれる。で、絶対的にかっこいい。そんな相棒。

車椅子をつくっている会社の方にも、「こんなのどうだろう」と聞いてみたことがあるが、ボクが言わんとしていることをわかってもらえなかった。

「それだと規格がだめなんです」とか「そういったデザイナーをたてる風習がない」とか、最初から否定された。

車椅子はもちろん、安全第一。耐久性や素材やサイズなんかも取り決めがあり、難しいらしい。

ボクをまっすぐ立たせる車椅子がすごい!
立てることが楽しい、嬉しい、気持ち良い!

今回の展示会では、permobil(ペルモビール)というブースの車椅子がかっこいいなとまず目についた。

下見してから取材をしようと思っていると、以前から会いたいと思っていた、車椅子で世界一周した三代達也さんから電話があって合流。

なんと、そのpermobilにかかわっているという。早速案内していただく。

Permobilはスウェーデンで生まれた。

特徴は、以下の3つである。

  • 見た目が美しいこと
  • 最新のスマートフォンや情報通信ネットワークを駆使したサービスを提供していること
  • さまざまな座位変換機能が付いていること

 

会場でも目を引いたデザインの良さ。

災害時に活躍するJINRIKI

それにこの数年、車椅子乗りのなかで人気の“立ち上がる姿勢”になれる車椅子なのだ。

本棚の本を取ることや、キッチンで料理を作ることだって可能な高さになる。

足の裏を地面に向けて立つ姿勢というのが、どんなに健康につながるのか、その姿勢になれない今だったらよくわかる。

リハビリをやっても腰が立たずヘナヘナのボクは、展示場でpermobilに乗って立ち上がった姿勢でそのあたりをぐるぐる見回したが、楽しくて嬉しくて仕方ない。

まっすぐ立っている姿勢での移動が、こんなに気持ちの良いものだということを忘れていた。

立つことがごく普通だった頃は、それに気づいてもいなかった。

デザインがとがっている車椅子を発見!
ボクが選ぶ車椅子部門の特別賞はこれだ! 

災害時に活躍するJINRIKI

もうひとつ、そのブースで目についたものは、車椅子用の電動アシストユニット「スマートドライブ」だ。

手動の車椅子に簡単に取り付けることができる、脱着式電動アシストだ。

デザインも良い(ここ大事)。簡単に脱着できる。

介助者でも困難な坂道なんかも、ちょっとした凸凹道も吸収してくれるという。

手持ちの車椅子が、必要なときだけ電動になる。

ぐるぐる会場を回ったが、なかなかほかに目に留まるものはない。

そんななか、今回の一番とがった車椅子はこれ。

「アトラクショントラックチェア」不整地走行用レジャービークル。

災害時に活躍するJINRIKI

車椅子と呼んで良いのかという風体である。キャタピラつきタイヤ。

泥沼のようなところでも雪上でも進んで行く。

これまたスタンド機能つき。立ち上がった状態も走行できる。

水陸両用車の日本販売正規代理店であるサポートマーケティングサービスで取り扱っているだけある代物だ。

どこか悪路でぜひ試してみたい。

「個人の方で購入した方いらっしゃるんですか?」と聞く。「おひとり」と言う。

キャンプが大好きな方といっていた。

我が家にも1台とはいかないが、今回の国際福祉機器展H.C.R.の車椅子部門の特別賞を、ぜひ差し上げたい。魅力的な車椅子だった。