今回ばかりは頑張れないかも…
そう思ってしまった
病気になると、不安が波のように打ち寄せては、それを自ら振り払おうと感情に蓋をして、潮が引いていくのを待つ。
「大丈夫。なんてことはない」。そう自分を奮い立たせる。
しかし、今回ばかりは、もうそんなおまじないは通用しないかと思った。
落ち着いた今になって考えれば、「もうだめだ」では済まないくらいの領域だった。
今回は吐血をきっかけに入院した。診断は逆流性食道炎。
以前に同じ吐血で入院したときは大腸がんが見つかった。不幸中の幸いだった。
今回の吐血は、胃の中の血管が3本も切れていてクリップ止めをしてもらったのだが、処置をしてもらっているうちに胆嚢や総胆管になにかが見つかったというのだ。
総胆管の方は内視鏡ですぐに除去できるらしく、そうした。胆嚢のはそのままにしてひとまず退院。
それから2週間もしないうちに高熱でまた入院。今度は腎臓だという。
いつものようには元気が出ない。起き上がれない。
病気になったという実感。今回はいつもの入院と違う…。
CRPの値(血中のC反応性たんぱくの数値)がぐっと高くなっていたためか、動けない。仕事もうまくいかない。いつもは笑い飛ばせることも、マイナス志向になってしまう。
自分のなかでは、「今回はちょっと頑張れないかも」。そう思ってしまった。
すごいぞタイガー・ウッズ!
娘さんの言葉にも感動だ
話は変わるが、先日、タイガー・ウッズがマスターズで優勝した。実に11年ぶりのメジャー制覇だ。
2009年には不倫スキャンダルや離婚を経て、多くのスポンサー契約も打ち切られた。腰を痛めて何度も手術をした。
2017年には鎮痛剤の副作用でふらつく逮捕時の映像が世界中に公開された。絶体絶命と言われていた。
「タイガー・ウッズ…。もうだめだろうな」。そうみんなが思っていた。
ところが、彼は舞い戻ってきた。
テレビを見ていると、タイガー復活の引き金だったとされる娘の言葉を伝えていた。
娘のサムちゃんとサッカーの試合を見に行ってFCバルセロナのリオネル・メッシに会ったとき、「レジェントに会えるなんてすごいだろ?」とウッズがサムちゃんに言うと、「私たちはレジェントと住んでるわ」。そう言ったというのだ。
それからウッズは頑張ったという。
家族のためにも、過去の栄光のYouTuberゴルファー(映像でしか見れないレジェント)と呼ばれないように…。
病気をして、歳をとってわかった
頑張れるのはやっぱり、家族がいるから
全盛期のタイガー・ウッズは、自分のためにゴルフをしていたのかもしれない。
強くあり続けるための努力は並大抵のことではなかったけれど、前に進むためにがむしゃらだったにちがいない。
年齢的にもそうだ。20代、30代は自分の目標に向かっていく。ボクにだってその覚えがある。
あの若さとバイタリティーは、いま思えばバカバカしいくらいの無理やりさだった。が、真剣だった。
体を壊すなんて、恐れるどころかそんなこと思ってもみなかった。
年を経て、体を壊して振り返ってみたとき、頑張れる気力は「誰かのため」というのが一番大きい。
何回も書いてきた。
そのたびに、「妻はもうコータリの上をいっている」「子どもたちはコータリからちゃんと独立した」って言われる。
たしかにそうかもしれない。
だが、いまボクが頑張ろうと思える最大の原動力はやっぱり妻や子ども、子どもが独立した新しい神足家だったりするのだ。
ボクが大黒柱として頑張らなくては苦労をかける。悲しませる。そう思う。
少しでも仕事をして妻を楽にしなければと思う。
タイガー・ウッズは復活した
頑張らなくては。ボクだって
若いときにだって、仕事をして家族のために頑張ってきたけれど、この年になって初めてわかる心境だ。若いときとはまた違う。
タイガー・ウッズもそんな心境にちょっと似ていたんじゃないかな…と勝手に推測して、子どもと抱き合う彼を見てほろっと来る。
「よかったなあ」と他人事ながら感情移入する。
今回の入院がそうだったように、自分のどん底から「よし、もう一回頑張ろう」と思える力は家族だ。
僕の場合はどん底でもなんでもなかったのかもしれないが、気力は体力に大きく影響する。
気力がなければ体力はそれについていかない。
タイガー・ウッズは復活した。バリバリバリと硬い殻を破ってまた上り詰めた。
「ああ、頑張らなくては。ボクだって」。