ちょっと前に退院したのに…
長い、長ーい検査のあと、今回は腎臓の病気で入院だ
思いのほか長い入院になってしまった。くも膜下出血でも、がんでもない。最近悩まされていた逆流性食道炎でもない。
日曜日の夕方に高熱を出した。先日退院したばっかりだったのに。
消化器内科の先生に「まだ胆嚢はとっていません。大丈夫だとは思いますが熱とか出たらすぐ病院に来てくださいね」。
そう言われていたので、妻は大学病院の救急にボクを連れて行った。
妻「いつもの発熱と違って、ぐったりしてるんです」。
そう伝えたものの、トリアージュ(治療の優先度を決めること)を行う医師は「あまり緊急性はない」みたいなところに丸をつけたようだった。
そしてずいぶん待ってから、まず研修医とみられる若い医師はインフルエンザの検査をする。
そしてまた待合室に。インフルエンザは陰性。次は血液検査。また待合室で待つ。
ようやく周りがバタバタし始め、別の先生に変わった。尿検査。CT検査。次から次に先生も変わり、また血液検査。病院に着いてからもう3時間以上たっている。
結果、腎臓という新しい分野での入院となった。それもまだ定かではない。消去法で一番可能性があるという診断だった。長い、長い診察だった。
これまでは入院中に原稿書けたけど
今回は起き上がれない。目を開けることさえ億劫だ
こういうときの救急科の様子はさまざまな科の先生が喧々諤々と部屋の隅で立ったままの緊急会議、「ああでもないこうでもない」。
何時間も車椅子の上でおしりが痛い。すぐにでも横になりたいと思っているのに、職業病だ。そんな先生たちの様子をなかば取材しているかのような気分で聞いていた。
家族もボクも「ちょっと高熱が出ちゃった、まさかインフルエンザ?」。そんな感じの受診だったので「今すぐ入院しましょう」と言われたときはビックリだった。
病気慣れ、病院慣れしているつもりだったが「ああ、また違う病気かあ」とちょっと絶望感を味わう。
しかも実際、今回は身体の元気が出ない病状だ。目さえ開るのだって億劫だ。
「ああ、病気になった」。そう実感できる。
いつもは病室にいたって原稿をささっと仕上げた。今回は起きることさえできない。

それでも10日たった頃、抗生剤が効いてきたのか食欲も戻ってきて、病院内でリハビリできるようになってきた。
もちろん、入院した直後から、状態が悪化しないようにリハビリがセットで組まれていたが、なかなかどうして病気のだるさが勝ってしまって動けない。
ごはんだって喉を通っていかない。これではすぐにでも文字通りの寝たきりの人間ができてしまうのはわかっている。ものの1週間もかからない。実証済だ。
寝たきりの人間を作るのは簡単だ。麻痺側の足や腕はみるみるうちに固まって、しかも湾曲してくる。
普段の地道なリハビリで得た効果も1週間ぐらいで無意味だ。
だからこそ、今回の入院でリハビリをメニューに入れてくれるのは大変ありがたかった。
ちゃんとリハビリを続けられてたら…
また自分の足で歩けるようになっていたかもなあ
リハビリを担当してくれた福田先生は、「おうちに帰ったときに『前よりひどくなってるね』って言われないように頑張りましょうね」と最初に言ってくれた。仕事が好きなんだなと一目でわかる。
足をマッサージしてこわばりをなくし、自宅ではなかなかできない平行棒を使った重心移動の練習や装具を使っての立つ練習。かなり本格的だ。
大学病院などのしっかり設備が整っている病院だからこそできる。
自宅でも週1回リハビリ施設の整ったところに通い、プールにも通い、さらには週に3回マッサージにも来てもらっている。
この訪問マッサージの牧野先生がいなかったら、まっすぐに座ることもできなくなっているであろうことはわかる。
けれど、こんな施設でリハビリを続けることができていたなら、もしかしたらまた自分の足で歩けるようになっていたかもなあ、と思う。
通常、ボクのような(くも膜下出血の)場合、発病後は急性期の病院に入院。そこで落ち着いたら回復期の病院に移り(ボクの場合はリハビリ病院)でみっちりリハビリをする。
それを希望しない場合や無理な場合は療養型というところもあるらしいが、回復期までは寝たきり防止のために頑張ってリハビリをする。
それから、慢性期という治る見込みがない期間に入ったとみなされ、健康保険上の都合でリハビリは打ち切りになってしまう。
それを聞いた家族は、「え?もう終わりですか?入院じゃなくても、通いでリハビリできないですか?」と、見放されてしまった絶望感を味わったらしい。
そうなったからといって何にもできないわけではない。いろいろな方法を使ってそれからもリハビリは続けている。
自宅で生活しながらリハビリ施設に通ったり、マッサージをお願いしたり、ロボットを使ったリハビリや電気治療など、さまざま試してきた。
慢性期になると治る見込みがないなんてきっとウソだ
ボクは声も出せるようになった。旅行にだって行ける
倒れてから8年近くになるが、くも膜下出血直後と比べたら見違えるほど変わった。少なくとも寝たきりではない。
もうよくならないと言われてから言葉も出せるようにもなった。
ごはんだってひとりで食べられなかったが、今は食べられる日だってある。旅行にも行けるようになった。
それはこの8年間、地道にリハビリを続けていたおかげだと思う。
そんな十把一絡げな感じで本当にいいのだろうか?この期間が過ぎたら終わりでいいのだろうか?
膨れ上がる高齢者の医療費問題の一環なんだろうが、こうしてリハビリができて健康でいられる方が医療費もかからないんじゃないだろうか?と思ってしまう。
自分が希望するならばやった方が絶対にいい。リハビリはその頑張り、努力には絶対応えてくれる。
治る見込みがなくなるなんてきっとウソだ。