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高齢者の便秘に効果的な対策とは?
「食べてないのに満腹感がある」「ときどき吐き気を感じる」…こんな症状があるときは便秘かもしれません。排便には個人差がありますが、便秘になると大腸がんなどの疾患にもつながりかねません。
そこで、シニア世代の便秘を予防・解消する具体的な方法をご紹介します。
食生活の簡単な見直しで便秘予防ができる
少なすぎる食事量は問題
高齢になると腸の機能は衰えるものですが、それに加え、食べる量も減っていきます。食べる量が少ないとおのずと便の量も少なくなり、便秘になりやすい状態に陥ります。
そのため、まずはしっかり食べることを心がけましょう。たくさん食べることで便の量が増し、スムーズに排便できるようになります。
便をやわらかくしてくれる食物繊維
食物繊維が便秘の解消に効くということは多くの方がご存知だと思います。食物繊維には不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があります。腸のぜん動運動を助け、排便を促す働きがあるのは不溶性食物繊維です。
おもに豆類や穀物類、野菜に含まれています。果物や海藻類に多く含まれる水溶性食物繊維は便を柔らかくする作用があるので、どちらもうまく摂り入れるのが便秘解消には有効です。
腸内環境を整える食品が大切
食品のなかには腸内の環境を整える作用をもったものがあります。ビフィズス菌や乳酸菌には善玉菌が含まれているため、これらを含んだ食品を摂取することで効率よく腸内環境を整えることができます。
代表的なものはヨーグルトですが、ほかにも納豆やみそ、キムチ、チーズなどにも多く含まれています。
適量の油が効果的
高齢者はあまり油を摂らないほうがいいイメージがありますが、油は腸の動きを高める潤滑油のような働きをします。
そのため、料理には適量の油を使いましょう。油に含まれる脂肪酸が大腸を刺激することもわかっています。
高齢者の便秘が改善する食べ物はとは?
便秘改善に効果的な食品といえば食物繊維を含んだ野菜や果物、乳製品や豆類などが思い浮かびますね。そのなかでも特にお勧めのものをご紹介します。
- ヨーグルト
- ヨーグルトは腸内フローラを増やす食品です。腸内フローラは腸内環境を整え、免疫力の低下や便秘の抑制に効果的だと言われています。
また、食物繊維が豊富なバナナなどにかけて食べると効果が高まります。 - 寒天
- 寒天には腸の動きよくする不溶性食物繊維と、腸内環境を整える善玉菌を増やす水溶性食物繊維が含まれます。そのため、便秘改善効果が非常に高いです。
- えごま油
- えごま油は腸の動きを活発にするだけでなく、血行もよくして便秘の解消を促します。スプーン1杯分を寝る前に飲んだり、サラダなどにかけて摂ると良いでしょう。
なお、加熱すると効果が低下するので要注意です。 - 黒酢
- 含有されている有機酸が腸を刺激し、消化を促進します。
便秘改善効果が期待できますが、黒酢が体質的に合わない人もいます。まずは少量から試してみましょう。
便意がなくても決まった時間にトイレにいく
便意を促すには、排便のリズムを作ると効果的です。便意を感じたらすぐにトイレへ行くことはもちろん、便意を感じなくても1日1回は必ずトイレに座るようにしましょう。
朝食後や散歩の前など決められた時間にトイレで座るようにすれば、自然と排便リズムが身につきます。和式トイレのほうが出やすいですが、洋式トイレでも少し前屈みで座ると便が出やすくなります。
コップ一杯の水を定期的に飲む習慣をつける
水をたくさん飲むと便が柔らかくなり、便秘の改善につながります。高齢者の場合は夜中にトイレに行くのを嫌がり、水分量が少なくなる傾向があります。便の7~8割は水分です。
朝、目覚めたときに必ずコップ1杯の水を飲むようにするなど、水分補給のタイミングをつくりましょう。理想的な1日の水分摂取量は料理の水分も含めて1,500mlです。それを目安にしてくださいね。
筋力低下を防ぐ便秘解消のための運動
加齢によって運動量が少なくなり、筋力が低下したり、姿勢が悪くなったりすることが便秘の原因になります。
筋力が落ちたり、猫背になったりすると、大腸が下がって狭い腹腔に押し込められ、ぜん動運動がスムーズにできなくなるからです。
適度な運動で筋力をつけて、正しい姿勢を維持できると便秘解消につながります。運動といっても、仰向けになって身体を起こすだけの腹筋運動や、軽めの散歩などで十分に効果が得られます。
環境の変化によるストレスに気を付ける
年齢を重ねるほど、ストレスを感じただけで腸の働きが低下し、便秘になりやすくなります。なかでも高齢者は環境の変化に敏感なので気をつけましょう。
介護施設に入所したり、デイサービスを始めたり、家族と同居するようになるなど、環境面で大きな変化があるときは要注意です。
それって慢性便秘?便秘の3つの種類を解説
慢性便秘になると排便の回数が少なくなることはもちろん、たとえ出たとしても便が硬くてなかなか出ないなどの症状が現れます。
特に60代以上の高齢者の方にみられる症状ですから注意しましょう。また、一口に便秘といっても「弛緩性便秘」「直腸性便秘」「けいれん性便秘」の3種類に分けられ、それぞれ症状や特徴が異なります。
- ①弛緩性便秘
- 若い女性にもよくみられる症状ですが、大腸の動きが低下して、便が溜まりやすくなっている状態です。腹筋力が低下したり食物繊維の摂取不足が原因と考えられます。
- ②直腸性便秘
- 便意を我慢しすぎて、排便がしづらくなる状態です。便意を我慢する習慣があると感覚が鈍くなり、排便のタイミングが掴めなくなります。
- ③けいれん性便秘
- 精神的に追い詰められたりストレスを感じたときに腸内の働きが悪くなり、便がスムーズに出づらくなります。たとえ出たとしても腹痛を伴います。また、残便感があったり、下痢と便秘を繰り返すようなこともあります。
便秘が高齢者に多い原因とは?
高齢になると、どうして便秘になるのでしょうか。2016年に厚生労働省が実施した国民生活基礎調査によると、便秘の自覚がある男性は全体の約2.5%、女性は約4.6%という結果でした。
70歳以上になるとその数は増え、80歳以上になると男女とも実に10%以上の方が便秘を自覚しているということでした。つまり、年齢が上がれば上がるほど、便秘の人が増えているということです。
高齢者が便秘になる原因はいろいろありますが、まず考えられるのが大腸の働きやその周辺筋肉の衰えです。
年を取ると大腸の周りにある腹筋の力が衰え、大腸から便を送り出す「ぜん動運動」がうまくできなくなります。それが便秘の原因になります。
また、先述したとおり、食事量の低下も原因になります。食事の量が少なくなると当然のことながら便の量も少なくなります。便が少ないと大腸の動きも弱くなり、結果的に便秘になってしまいます。
また、トイレ介助が必要な方はまわりに遠慮して便意が伝えられず、結果的に便秘になることがあります。最後に考えられるのは、薬の副作用です。抗うつ剤や抗生物質などは副作用で便秘を引き起こすことが知られています。
便秘の原因が大腸がんの可能性もある
”たかが便秘“と侮ってはいけません。便秘の陰に大変な疾患が隠れていることもあります。その代表的なものが「大腸がん」です。
便秘は大腸がんの症状のひとつですから、たとえば今まで一度も便秘になったことがいない高齢者が便秘になったら要注意です。できれば早めに検査を受けましょう。
大腸がんは進行するまでのおもな症状は便秘以外にありません。そのため、健康診断での検便(便潜血)や内視鏡検査などをきちんと受けることをおすすめします。
たとえ大腸がんでなくても、便秘は快適な老後生活を妨げるものです。今回ご紹介したようなことに気をつけながら、快食・快便の気持ちいい毎日を過ごしましょう。