みんなの介護アンケート
介護の悩みのひとつ、それが介護をしている居室の臭いです。大いに困っている介護家族はとてもたくさんいます。
多くは「排泄介助をしている部屋だから仕方ない」「臭いを気にしていたら、要介護者を傷つけてしまうから」と、介護者が我慢して気にしないフリをしているケースも少なくありません。
しかし、臭いの原因が「雑菌」などだった場合は、身体の弱い高齢者にとって病気や感染症の原因になるリスクもあります。 今回は、臭いの原因や対処方法を解説していきましょう。
臭いの原因は主に2つ
消臭力などの消臭グッズで知られるエステー株式会社の調査によると、在宅介護における困りごととして「介護時のにおい」が4位に選ばれました。
介護中に感じる臭いには、主に以下のような原因があります。
体臭の臭い(口臭・汗臭・加齢臭)
一口に体臭といっても口臭や加齢臭などいろいろなものがあります。臭いを感じる部分によって原因はさまざまです。口臭の原因は主に口のなかにいる細菌によるものです。
通常、口の中の細菌は唾液によって洗い流されるのですが、高齢になると唾液の分泌量が減少するため洗い流されずに増え続けます。そのため、臭いがきつくなるのです。
汗の臭いの原因になるのは、汗のなかに含まれる成分をエサにして臭いのもとになる細菌が増えるためです。
高齢になって入浴が減ると、汗を洗い流す機会も減るため、臭いがひどくなると考えられます。また、いわゆる加齢臭の原因は、加齢によって「過酸化脂質」や「脂肪酸」の量が増えるためだと言われています。
排泄物の臭い(尿臭・便臭)
尿や便などの排泄物の臭いは、おむつを使っている方に多くみられます。排泄物の臭いは交換しているとき以外でも、使用済みのおむつをそのまま放置していたり、排泄物がついたパジャマや寝具に付着していると臭います。
排泄物が付着したものはこまめに取り換え、常に清潔さを保ちましょう。
ポータブルトイレが原因になることも
ポータブルトイレは、ベッドから起き上がれても自力でトイレまで移動できない方や、移動できたとしても足元が不安定な方などが利用する簡易トイレです。主に寝室で使いますが、こまめに処理をしないと臭いがひどくて介護生活に支障がでます。
ポータブルトイレでは一般的なトイレ用の消臭剤では効果が感じられないときもあります。そんなときは介護用の消臭剤を利用する良いでしょう。また、ポータブルトイレは乾燥させると臭いが軽減されます。
そのため、夜間だけ利用している場合は、昼間の利用しない時間帯に天日で乾かすなどの対策をとりましょう。それだけでも、臭いは軽減されます。
臭いを消臭・予防するには
介護中の居室や寝室にこもった臭いの対策には、以下のような方法があります。
部屋の換気をこまめに行う
介護中の部屋の換気をこまめに行うことはとても大切です。特に、おむつ交換のあとは空気中に尿臭や便臭が漂っているので、必ず換気を行いましょう。1回の換気時間は5~10分ほどで十分です。
ただ窓を開けるのではなく、空気の通り道を意識した換気をすることが大事です。窓を2つ開けたり、部屋の扉を開けたりなどすることによって空気の通り道を確保しましょう。
冬場だと急激に室内の温度が下がるため、長い時間ずっと窓を開けていると、体調を崩してしまう可能性があります。室内の温度や体温をできるだけ下げないように工夫しながら、十分な換気を行いましょう。
ハウスダストやウイルスも除去できる
適切な換気には臭いを取り除くだけでなく、ハウスダストやウイルスなどを除去する効果が期待できます。ハウスダストというのは空気中に漂うダニの死骸やフン、カビや細菌などのことです。体内に取り込むとアレルギーや喘息を引き起こす原因になります。
また、ウイルスにはさまざまな種類がありますが、代表的なものは冬場に多くにみられるインフルエンザウイルスです。免疫力が低下している高齢者はインフルエンザに罹りやすいため、特に注意が必要です。重篤化すると命にかかわる事態にもなりかねません。
ハウスダストやウイルスはとても軽いため、少し人が動いただけでも空気中に舞い上がります。つまり、換気をしない限り、常にハウスダストやウイルスを含んだ空気に囲まれていることになるのです。
適切な換気をして空気を入れ替えることで、ハウスダストやウイルスを減らすことができます。
空気清浄機を利用する
空気清浄機を利用しているご家庭も多いと思います。最近の空気清浄機には臭いを除去する機能が付いたものがあります。そのような空気清浄機を利用するのも良いでしょう。
ほかにもハウスダストやウイルスの除去の精度を高めた製品もあるので、解消したい問題に合わせて選ぶことをお勧めします。
最近は介護施設でも臭い対策や感染症対策で、空気清浄機を活用しているところが増えてきました。効果は期待できるでしょう。ただし、空気清浄機には二酸化炭素を減らす機能はついていません。そのため、酸素濃度をあげるためには、換気をすることが大切です。
空気清浄機と換気を上手に使い分けて、快適な介護環境をつくりましょう。
口臭は口腔ケアで臭いを抑えよう
介護中は歯磨きなどがおろそかになることがあります。定期的に口腔ケアをすると臭いはずいぶん抑えられます。口臭対策のポイントは舌ブラシやスポンジブラシを利用することです。
口臭の原因のひとつは、舌の上に付着している舌苔(ぜったい)と言われています。舌ブラシを使って丁寧に取り除きましょう。
また、唾液の減少による口腔内の乾燥も臭いの原因になるため、保湿ジェルなどを使って口腔内の潤いを保つようにしましょう。口腔ケアには誤嚥性肺炎を予防したり、味覚を改善したりする効果も期待できますから、毎日欠かさず行いたいものです。
洗濯やクリーニングをする
介護中に限らず、汚れた衣類などをため込むと臭いがひどくなるものです。特に忙しいときは「週末にまとめて洗おう」などと考えてしまいがちです。それでは臭いのもとになる雑菌などが繁殖してしまうので、こまめに洗濯することをお勧めします。
また、特に冬場や梅雨時は天気が悪くて生乾きのまま部屋の中に干してしまう部屋干しも多いと思います。生乾きの臭いは一度発生すると洗っても落ちにくくなります。乾いたあとも嫌な臭いが残ってしまいがちですから、乾燥機などを上手に使いましょう。
最近では生乾きの臭いを抑える部屋干し専用の洗剤なども発売されていますから、天気の良い日に使う洗剤と使い分けるのも良いかもしれませんね。
洗濯機は一度で洗える容量が決まっているため、詰め込みすぎにも注意しましょう。一度に大量に洗うと、汚れがしっかり落ちていない可能性があります。また、お風呂の残り湯はなるべく使わない、脱水後はすぐに干すなど、面倒でも臭いが残りづらい対策をとることが大切です。
排泄物の臭いはおむつの捨て方を工夫
紙おむつを利用している場合、使用済みのものは排便を取り除いた後にビニール袋に入れてからゴミ箱に捨てるなどの対策をとられている方も多いと思います。
しかし、いくらビニール袋をしっかり閉めたつもりでも、わずかなすき間から臭いが部屋の中に流れ込んでくるものです。
そのため、ビニール袋を二重にしたり、新聞紙などに包んでからビニール袋に入れたりするなどの対策をとりましょう。臭いが広がりにくくなります。
また、ゴミ箱には忘れずに消臭剤をつけましょう。
食事で対策する方法も
食品のなかには食べると排泄物の臭いがきつくなるものがあります。以下の食事が、臭いの原因になりやすいものです。
- 臭いの原因になる食べ物
-
- ネギ
- ニラ
- チーズ
- ニンニク
- アスパラガス
- 卵
- 炭水化物
- 肉
- 香辛料
ただし、極端に減らして栄養のバランスを崩しては意味がありません。魚や野菜、果物、乳製品、大豆製品などの栄養バランスのとれた食事を心がけ、炭水化物や肉類などはあくまでも「摂りすぎない」ように注意するぐらいで良いでしょう。
消臭グッズを活用する
臭いに敏感な方が増えたせいか消臭グッズはたくさん発売されています。消臭グッズのなかには介護用のものもあるので、気になる方はいろいろと試してみましょう。スプレータイプや置き型タイプなど、使用する目的や場所に合わせて選ぶことができます。
特に、おむつ交換をしていて排泄物の臭いが気になる場合は、積極的に活用したいものです。スプレータイプなら吹きかけるだけで消臭ができます。使用済みのおむつを捨てたゴミ箱にシュッとひと吹きするだけで、嫌な臭いが軽減されます。
消臭だけでなく、芳香作用があるものも発売されているので、好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
まとめ
介護中に臭いがきついと思っても、気を使ってなかなか言い出せない介護者もいらっしゃいます。しかし、臭いは単にエチケットの問題ではなく、臭いのもとは菌であることを考えると、免疫力が落ちている高齢者なら感染症などを引き起こす可能性もあります。
臭いがきつくなったと思ったら、今回紹介した対策をぜひ試してみてください。ちょっとした工夫で改善される臭いもたくさんあるので、まずはできることから始めましょう。