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認知症の高齢者はなぜ口腔ケアを嫌がるのか?
口腔ケアを嫌がる認知症の方はたくさんいます。「全然口を開けてくれない」「指を噛まれそうになった」など、介護者の方も悩みが尽きないようです。
口腔ケアを嫌がる理由にはいくつかありますが、最も大切なのは介護者側が頑張りすぎないことです。
何日も口腔ケアができないと苛立ち、「今日こそは!」と思う気持ちもわかりますが、そのような気持ちや意気込みは必ず相手にも伝わります。それが原因で、ますます拒絶することもあるのです。
歯磨き介助を嫌がる5つの理由
- 口腔ケアをする意味や必要性がわかっていない
- 口の中というデリケートな部分を触られることに抵抗を感じている
- 口腔ケアの意味がわからないためなにをされるかわからず、不安や恐怖を感じている
- 歯ブラシをみても使い方や使う目的がわからない
- 口の中に痛みや傷があるのに上手く伝えられず、また周囲も気づいていないので触られるのを嫌がっている
まずは介護者側がリラックスして、優しい気持ちになりましょう。いきなり歯ブラシを口の中に入れるようなマネをしてはいけません。「今日はいい天気だね」「お口は痛くない?」など、優しく声掛けをしながら、少しずつ気持ちを口腔ケアに向けていきます。
そして、これから口腔ケアをすることをきちんと伝えます。歯ブラシを見せながら「これから歯を磨くね」とひと声かけるのがいいでしょう。
使用する歯ブラシは毛先が柔らかいものを選び、痛くならないように気をつけましょう。認知症の方の場合「口腔ケアは痛いもの」と思われると、次に取り組むときも大変になります。
口腔ケアは「気持ちいいもの」と思われることが、次の口腔ケアにつながります。
安心してもらえる口腔ケアのポイント
高齢者に口腔ケアを施す際にはどのような点に気をつけるべきでしょうか。以下にご紹介するポイントに注意しましょう。
サポートは必要最小限にする
寝たきりや手がうまく動かせない要介護者の口腔ケアは、基本的に介護者が行うことになりますが、自力でできることはやってもらいましょう。自立を促すためにも、介助は最小限に留めることが大切です。
もちろん、磨きづらい場所や磨き残しが多い場所は、サポートします。仕上げや最終チェックも介護者がおこないましょう。
時間はなるべく短くケア
高齢者の口の中は唾液が少ないことから、歯磨きに抵抗を感じる方も少なくありません。そのため、口腔ケアの時間はできるだけ短くしましょう。
時間をかけて口の中をきれいにすることは大切ですが、それ以上に毎日継続させることのほうが重要です。そのためには、「口腔ケアは気持ちいい」と感じてもらうことです。
本人が楽な態勢がベスト
どんなことでも同じですが、毎日続けるには「楽」であることが大切です。そのため、口腔ケアを行うときはできるだけリラックスした姿勢になってもらいましょう。
ずっと口を開けているのも苦痛ですから、ときどき休憩もはさみます。また、ケア中は誤嚥性肺炎のリスクがあるため、あごはしっかり引いてもらいましょう。
口内の定期的なチェックで健康管理
口腔ケアの際には口の中の状態をチェックしましょう。むし歯や歯周病の有無、歯ぐきや舌の状態、噛み合わせの状態などを日ごろからチェックしておくと、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、認知症の方は口の中に傷や痛みがあってもうまく伝えられない場合があります。口腔ケアをあまりにも嫌がるようなら、一度歯科医に相談しましょう。
健康維持のための口腔ケアの正しい方法
口腔ケアは正しい方法でやらなければ効果がありません。歯の磨き方、うがいの方法、口腔清拭(せいしき)の手順、入れ歯の扱い方には特に気をつけましょう。
90度の角度で磨いていく
歯ブラシは鉛筆持ちが基本です。歯に対して歯ブラシが90度になるように当てましょう。
歯ぐきに当たっても痛くない程度の強さで、細かく動かしながら1本1本磨いていきます。奥歯や歯間は汚れが溜まりやすいので、丁寧に磨きましょう。
入れ歯を使っている場合は、はじめに入れ歯を外してから、残っている歯を磨いていきます。
うがいで口内を洗浄
口の中に水を含み、左右どちらかの頬を膨らませて動かします。反対側も同じようにした後、上唇と上の歯の間でも同様の動きをします。
最後に口全体を膨らませてブクブクしてから吐き出します。うがいは歯間を洗浄するイメージで行うといいでしょう。
体が動かない高齢者には口腔清拭
寝たきりの方や口の中に水を含むことができない方には、介護者が口腔清拭を行います。指に直接ガーゼやウエットティッシュを巻き、口の中の汚れを拭き取っていきます。
奥まで指を入れすぎると痛みや嘔吐反応を起こす可能性があります。入れすぎには注意しましょう。
入れ歯の洗浄方法
入れ歯は下の入れ歯、上の入れ歯の順に外します。取り出すときは、>金具部分で口の中を傷つけないように気をつけましょう。
入れ歯は入れ歯専用のブラシで洗います。歯磨き粉も入れ歯専用のものを使います。洗い終わったら専用の容器に水と入れ歯洗浄剤を入れ、その中にしばらく浸します。
取り出したあとは流水ですすぎ、もう一度歯ブラシで磨いてぬめりや洗浄剤を落とします。
口腔ケアの種類と重要性
一口に口腔ケアと言っても、2つのタイプがあります。ひとつは「セルフケア」で、もうひとつは「プロフェッショナルケア」です。
セルフケアというのは日ごろ私たちがおこなっている歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどを使った口腔ケアのことです。
一方、プロフェッショナルケアとは歯科医院で歯科医や歯科衛生士などに施してもらう、専門的な口腔ケアのことです。プ歯の汚れや歯石を除去してもらうだけでなく、口腔機能や食生活などに関するアドバイスなどもしてもらえます。
口の中だけでなく全身の健康を維持するためにも、セルフケアと歯科医などの専門家によるケアの両方をきちんと生活の中に取り入れることが大切だとされています。
かかりつけ歯科医院・歯科医師を決めて、日頃から口腔内の健康管理をしてもらいましょう。合わせて入れ歯の管理やケアもお願いできます。
口内の機能が衰えて、噛んだり飲み込んだりすることが上手くできなくなると、十分な栄養が摂れなくなります。そのような状態が長く続くと栄養不足になり、認知症を発症するきっかけにも運動機能が低下したり、なりかねません。
また、口腔ケアは単に歯ブラシをするだけでなく、摂食嚥下トレーニングや誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
正しい口腔ケアは高齢者に「食を楽しむ」生きがいを取り戻させるだけでなく、介護者の負担も軽減させてくれます。
口腔ケアをしないと認知症が進行するって本当?
愛知県が65歳以上の高齢者を対象に2003年から4年間かけて行った追跡調査によると、歯がなくて入れ歯も使用していない高齢者は、自分の歯が20本以上残っている方と比べると、1.9倍も認知症リスクが高まることがわかりました。
食べ物を噛んだり飲み込んだりする行為は、脳に酸素を送ったり、刺激を与えたりします。それが脳の中枢神経を活性化させて、認知症予防につながるのです。
口腔ケアを怠ると歯がなくなる可能性が高まり、結果的に認知症の発症リスクを高めることになります。
加齢と共に増える高齢者の口腔トラブル
私たちの身体は加齢とともに変化し、さまざまなトラブルを引き起こします。それは口の中でも同じことが言えます。
高齢者の口の中ではどのような変化が起こっているのでしょうか。おもな変化をみてみましょう。
口内の自浄作用が低くなる
私たちの口の中には「自浄作用」があり、唾液の力で歯の表面や舌についた汚れを落とし、細菌を洗い流しています。
しかし、年齢を重ねることで唾液の分泌量が減少し、自浄作用が低下すると口腔内の清潔を保てなくなります。そのため、高齢者は口腔ケアなどを通じて、意識的に口の中をきれいにする必要があります。
もし舌の表面に苔が生えたようになったら、歯科医院で除去してもらいましょう。苔状の中で、カンジダ菌が繁殖しやすく、さまざまな病気の原因の一つになるといわれています。
免疫低下で歯周病が増える
唾液によって流される細菌にはざまざまな種類があるのですが、そのひとつが歯周病菌です。唾液の分泌量が落ちると、この歯周病菌も流されることなく口腔内に残ります。
さらに加齢によって免疫力が低下していることから、歯周病のになるリスクが高まるのです。同様にむし歯になるリスクも高まると考えられています。
入れ歯で雑菌が増える
高齢者のなかには若い頃にむし歯や歯周病になり、入れ歯や歯に詰め物をしている方が少なくありません。入れ歯を使っている方は、入れ歯と歯ぐきの間が開きやすく、そこに雑菌が溜まりやすくなります。
また、詰め物をしている方は、その下でいつの間にかむし歯広がっている可能性があります。
咀嚼力が弱くなりドライマウスになる
高齢者は噛む力が弱くなり、また、薬の影響などから唾液の分泌量が低下します。唾液が少ないと常に口腔内が乾いている状態、つまりドライマウスになりやすく、さまざまな問題を引き起こします。
ドライマウスはむし歯や歯周病のもとになる雑菌が繁殖しやすく、また、口臭の原因にもなります。
口腔ケアの肺炎や感染症への予防効果
口腔ケアにはただ単に口の中をきれいにするだけでなく、さまざまな予防効果が期待できます。口腔ケアによって唾液腺が刺激されることで唾液の分泌量が増えるので、むし歯や歯周病の予防につながります。
さらに唾液には口の中の粘膜や歯を保護したり、口臭のもとになる細菌を洗い流す効果があるため、常に口の中を清潔に保つ効果が期待できます。
また、口の中には全身疾患の原因になる細菌もたくさん存在します。たとえば呼吸器感染症の原因になる「肺炎桿菌」、食中毒の原因になる「黄色ブドウ球菌」などですが、口腔ケアをしっかり行うと、これらの細菌も洗い流すことができます。
さらに年齢を重ねると「噛む」「飲み込む」「話す」などの口腔機能が全般的に低下しやすくなります。口腔機能が衰えると十分に栄養が摂れなくなり、摂食障害や免疫力の低下につながります。
特に「飲み込む」力が衰えると、食べ物のカスや細菌が食事の際に気管まで入り込むことがあります。そのまま細菌が肺にまで到達して起こるのが「誤嚥性肺炎」です。
高齢者の多くがこの誤嚥性肺炎で命を落としているのです。口腔ケアを通して口の中の細菌を減らし、口腔機能を改善させれば全身の健康にもつながります。
口の中と健康は無関係のように思えますが、日々の口腔ケアが高齢者の健やかな生活を支える一助になっていることは間違いありません。