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要介護者によるボランティアを奨励。「助け合い」を新しい文化に

高度経済成長期、相次いで集合住宅が建設された松戸市。団地住民の高齢化も進み、2045年には10人に4人が高齢者になると予想されている。そんな松戸市で始まった介護支援ボランティア制度には、要介護認定を受けた高齢者も登録しているという。「要介護状態であったとしても、支えられる側だけでなく支える側にもなることができる」と語る本郷谷松戸市長に話を聞いた。

監修/みんなの介護

福祉施設の利用者もボランティア活動で社会貢献

松戸市は、「市民が誇りを持てるまち、外から人が集まってくるまちをつくろう」をコンセプトに、少子高齢化対策や住民が互いに助け合うまちづくりのための施策を続けてまいりました。

2011年度には、65歳以上の高齢者の方に福祉施設でボランティア活動をしていただく「介護支援ボランティア制度」を始めました。人のためになるだけでなく、社会参加をすることが自身の介護予防にもつながるので、これからも登録者を増やしたいと思います。

また、2017年度からは、参加者の範囲を要支援あるいは要介護認定を受けている人にまで拡大いたしました。施設に入所されている高齢者の皆さんも役割と生きがいを持っていただこうという主旨で、2019年4月より本格施行されております。

要支援・要介護に認定された方でも、できる範囲の活動をすることで、社会貢献する生きがいを感じられますし、介護の重度化を防ぐこともできます。

いくつになっても「生きがい」を

2019年7月19日。前年に引き続き、松戸市旭町の特別養護老人ホーム「陽光苑」で暮らしている2名のボランティアへの表彰式が行われた。

毎日2時間ほど、施設内で使うタオルやエプロンをたたむボランティアなどをしており、活動によって付与されたポイントを元に「最優秀賞」が授与された。

授賞者は「(タオルたたみ作業は)特別なことではなく、普段から自分がしていること。ほかの要介護高齢者の皆さんも、自分ができることで社会貢献ができれば」と語った。

特別養護老人ホーム「親愛の丘」で行われた授賞式の様子。施設職員の見守りのもと、ボランティア活動をしている

2018年度における入所者のボランティア活動登録は市内の7施設、31人にのぼっており、参加者の関心が高いことが窺える。

「良い施設・良い食事・良い運動・良いリハビリだけでは元気になれません。みんながそれぞれ役割を持ち、社会に参加することが重要だと思っています。無理はしないで、できることで参加していただければ良いですね」

支えられる側だけでなく支える側に

「介護支援ボランティア制度」を利用してボランティア活動を行うには、事前に松戸市の委託機関が実施する説明会への参加と登録が必要だ。活動内容は、施設内の手伝いのほか、入所者の話し相手、食堂での配膳・下膳、庭の草取りやリネン交換など多岐にわたる。

なかにはピアノ演奏を行う入居者も

ボランティア参加者を要支援・要介護者にまで広げた「高齢者関連施設入所者における介護支援ボランティア制度」においては、ポイントを交付金や障害者就労施設生産品に交換することができないなど、制約はあるが順調に登録者数を増やしている。

無理なくできる範囲での活動であること、無理強いはせずに希望する人のみの参加とすることが原則だ。

「要介護状態であったとしても、支えられる側だけでなく支える側にもなることができるということが、この取り組みを通して伝わっていけば、と思います」

認知症の高齢者がもてなす「プラチナカフェ」

2019年8月8日、市内の喫茶店で認知症の方がおもてなしをする「プラチナカフェ」が1日限定で開催されました。この取り組みは、今回で3回目となります。

このカフェは、認知症の方が自分の役割を感じ、生き生きと過ごせるための接し方や環境について、皆さんに考えていただこうと、2018年12月にはじめて開催いたしました。認知症の方とそのご家族、そしてお客様から好評をいただいたこと、地元の喫茶店オーナーのご協力により、無事に3回目を迎えることができたのです。

この日は、13時から16時の開催時間内に84人ものお客様においでいただきました。カフェの近くにあるデイサービスの利用者が接客と会計、呼び込みなどを担当。なかには楽器を演奏する方もいましたね。

認知症と診断されても、まったく何もできないということはありません。この日も、認知症地域支援推進員や認知症コーディネーターといったスタッフの支援のもとで、皆さん生き生きとお仕事をされていました。

接客時の表情は生き生きと

近年広がりを見せる、いわゆる「認知症カフェ」は、行政のコミュニティスペースなどで認知症の当事者やその家族が集って語り合うイメージが強い。だが松戸市で行われた「プラチナカフェ」では、認知症の高齢者が接客を行う。

本郷谷市長は、「現場のスタッフによると、認知症の症状があっても、仕事があるとやはり表情が生き生きとするそうです」と笑顔を見せる。

プラチナカフェの様子。地域の住民も来店し、大いに賑わった

注文を間違えることも想定されていたが、大きなトラブルもなくスムーズに運営できたという。

場所を提供してくれたオーナーの理解とともに、市の職員たちが積極的にいろいろなアイデアを出していることも奏功しているのだ。

「うちの職員はみんなよくやってくれています。行政の仕事は、市民に対するサービスであり、そういう思い入れがないとできません。市民が幸せになってくれるためのまちづくりが私たちの仕事であり、楽しみなのです。お年寄りから子ども、障がい者も笑顔が増えたらやっぱり嬉しいし、私たちも幸せです」

社会参加と健康との関連性を測る「松戸プロジェクト」

ボランティアなどで社会に参加することが健康へ良い影響があると考える松戸市では、科学的に効果を検証する取り組みも始まっている。

2016年11月にスタートした都市型介護予防モデル「松戸プロジェクト」は、千葉大学の研究チームとの共同事業で、「社会参加することが健康度を高める」という仮説を検証する、全国に先駆けた科学的研究プロジェクトである。

2016年11月2日から2020年3月31日までに多くの社会参加の事例を検証し、成果は好事例として国内外に発信していくという。

「松戸プロジェクトでは、『社会参加が健康度を高める』という仮説を検証するために、幅広い年齢層の市民の皆さまにご参加いただいております。私にも『社会的な役割を持っている人は元気である』という感触があり、これを客観的にも証明するプロジェクトなのです」

社会の変化に意識を合わせ、助け合う文化を育む

これからはより包括的な施策を目指します。個別の対応も大切ですが、対症療法的な施策ではなく、全体的なアプローチが必要なのです。

例えば、ひきこもりは、介護でも医療でも雇用でも経済でも解決できない、いわゆる「制度のはざま」の問題となっています。

2018年度には、医療や介護、生活困窮、障害、家庭内暴力や子どもの虐待、さらにひきこもりといった福祉全般の相談について、ひとつの窓口で受け付ける「福祉まるごと相談窓口」を開設しました。今後も「福祉に関する相談なら何でも受け入れる場」として充実させてまいります。

また、ひきこもりなどの問題は、日常的にそうした問題が起こらないように地域でお互いに助け合う仕組みが必要です。

地域の自治会など、既存の組織の連携を支援して、福祉とともに防災・安全対策といった領域でもお互いに助け合い、「市民みんなを巻き込んだ新しい文化」をつくり上げていきたいと考えております。

すべての世代が暮らしやすい、「やさシティ、まつど。」

福祉政策に力を入れてきた松戸市では、「やさシティ、まつど。」をスローガンに共働きや子育ての支援策にも取り組んできた。

日本経済新聞社と日経DUALが主催する「共働き子育てしやすいまちランキング2017」では、全国編でグランプリを受賞するなど、注目度も高い。

市は保育施設の大幅な整備を進めてきたが、それだけでは不十分だと市長は語る。

「女性の社会参加が進み、共働きの世帯も増えてきました。ただ施設をつくるだけではなく、子どもたちの居場所づくりが必要になっているのです」

小学校に上がった子どもたちの居場所となる学童クラブなどの整備にも力を入れるという。

「子どもたちには、認知症カフェなどで認知症の方と接する機会も持って欲しいと思います。そうした経験を子どものときからしておくのは良いことですから」

前述のプラチナカフェには高校生もボランティアとして参加する。全世代の市民を巻き込むのが「やさシティ」の松戸式だ。

「こうした地道な施策は一朝一夕には結果が出ないものですが、『まちが変わってきたね』と言われると、嬉しいですね」

市民の意識を変えて助け合いの文化を育む

50万人都市の松戸市も、2025年には75歳以上人口が8万5,000人に上ると試算されている。今後は市内にも独居の高齢者が増えていくと見られ、対応は急務だ。

「これまでの日本は若かった。これからは70、80代の高齢者は当たり前の時代ですから、『何かあったら行政がサービスしてくれるだろう』という市民の意識を変えなくてはいけません。地域の住民同士で助け合うということを、文化として定着させていきたいと思います」

住民が互いに助け合える体制づくりのために、市は、自治会や社会福祉協議会などの地域割りを揃え、市内15地区とし、それぞれの組織が同じ地域で連携できるようにした。

「まだまだ道のりは長いですが、課題を解決できる可能性は十分にあるし、やれる自信もあるし、やらなければと思います。みんなが将来に夢と希望を持てるような松戸にしたいですね」

※2019年7月19日取材時点の情報です

撮影:丸山剛史

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「ビジョナリーの声を聴け」は超高齢社会に向けて先進的な取り組みをしている自治体、企業のリーダー“ビジョナリー”にインタビューし、これからの我々が来るべき未来にどう対処し、策を練っていくかのヒントを探る企画です。普段は目にすることができない高齢福祉の最先端の現場を余すこと無くお届けします。
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