いいね!を押すと最新の介護ニュースを毎日お届け

施設数No.1老人ホーム検索サイト

入居相談センター(無料)9:00〜19:00年中無休
0120-370-915
宇佐美典也の質問箱

質問 Q.96 生活保護の支給額を見直すというニュースを目にしました。財政のことを考えると、やはり減らす方向で進むのでしょうか…?(オウラ・アルバイト)

社会保障費の増大が問題視されるなかで、生活保護の支給額を減らすのか?というところが争点だそうですが…、減らすべきなのか?それとももっと手厚くするべきなのか?宇佐美さんはどう考えますか? 根本的になくした方がいいとか、ベーシックインカムを導入するべきだとか、根本的な案でも結構ですので、考えを教えていただければと思います。

抜本的な解決策は、高齢者が再就職できるような労働市場の流動性を増していくこと、でしょうか

難しい問題ですね。まずは議論の前提となるここ十年の生活保護費の現状・推移を見てみますと、2005年度の政府の生活保護費負担金総額は2兆5,942億円だったのが、2014年度になると生活保護費負担金総額は3兆6,746億円となっています。

たったの10年間で、全体の予算は1兆円弱、受給者数が70万人弱、高齢者世帯比率は4%も伸びて、他方で母子世帯比率は3%減っています。なお高齢者比率はこの3年でさらに伸び、現在では51%を超えています。要は全体の予算と受給者数が拡大し、高齢者世帯中心の構造に変わっていってきているというところです。

こうした生活保護に関する構造的変化は10年間かけて徐々に訪れたというわけではなく、2008年から2011年にかけてのリーマンショックからヨーロッパ経済危機の過程で高齢者のリストラが一気に進み、受給者数が50~60万人急増し、その後再就職できないままの高齢者世帯が増えたという経緯があります。そのため制度が変化に対応できておらず、今になって遅まきながら見直しが進んでいるというのが現状です。

その意味では今回生活扶助のベースを消費が多い母子世帯から高齢者世帯に変えて、支給額を抑制するというのは真っ当な制度変更と感じるところです。他方で生活が苦しい母子世帯への支給総額が減らないようにきちんと配慮しなければならないのは当たり前の話です。

さて、ここまで議論して勘の良い方は気づいていただけると思うのですが、生活保護費が増え根本的な問題は「日本的雇用制度が崩壊しつつあり、そこから漏れた高齢者が働く場がなくなりつつある」ところにあるということです。日本の労働市場は長期雇用が前提で少なくとも40代半ばを超えた労働者はその時点で働いている企業グループが最後まで面倒みるということを前提に制度設計されており、他方日本経済の足腰が弱まりこうした構造が崩壊する過程で、制度から漏れた高齢者たちの再就職が見つからず生活保護に頼らざるを得なくなったということなのだと思います。

抜本的な解決策としては、日本の「長期雇用」という労働市場の特性を徐々に見直して、高齢者になっても再就職できるように流動性を増していくことが必要なのだと思います。かなり難しい課題ではありますが…。