Q.51 年金のシステムについて質問です。「積立方式」と「賦課(ふか)方式」、宇佐美さんはどちらが理想だと思いますか?(ちょこち・会社員)
“年金危機”が叫ばれて久しいですが、かといって良い方向に向かっているとも思えません。よく言われることには「積立方式」と「賦課方式」の問題がありますが、宇佐美さんはどちらが理想だと思いますか?その理由も詳しく教えてください。
「積立方式」と「賦課方式」の組み合わせが理想。でなければ、日本の年金制度は破綻しかねないと思います
結論から言うと、積立方式と賦課方式のどちらが良くてどちらが悪いとかいう話ではなくて、原則としては民間主導の「積立方式の年金」と、国主導の「賦課方式の年金」が程よく組み合わされた状況が理想だと思います。
まず復習がてらそれぞれの言葉の意味を確認しますと、「積立方式」とは「将来自分が年金を受給するときに必要となる財源を、自らが現役時代の間に少しずつ積み立てておく方式」で、「賦課方式」とは「年金支給のために必要な財源を、その時点の現役世代が納めた保険料から用意する方式」です。つまり、積立方式の場合は現役時代に自分が納めた保険料が自らの年金の財源となっており、賦課方式の場合は現在の現役世代が納めた保険料が自分の年金を支える財源となっているわけです。
これを一見すると「積立方式」を採用してしまえば、年金というのは個人個人の経済問題として完結するわけですから、少子高齢化の現代には経済的には優れているように思えます。しかしながらこの方式を取った場合、年金収入が現役時代の所得と直結してしまい、富裕層はたくさん年金をもらえ、貧困層はほとんど年金がもらえないことになります。これでは「国民生活の保護」という年金の目的を果たせなくなります。
民間サービスならばそれでもかまわないわけですが、国として年金事業をする以上所得格差を年金支給にまで直結させるわけにはいきません。そのため現在、厚生年金は「賦課方式」を採用して、現役世代から広く保険料を徴収して巨大な基金を作った上で、一定水準以上の年金を全被保険者に給付しています。いわば賦課方式は「国民の支え合い」なのです。
私は、国として年金事業をやる以上は賦課方式を採用せざるを得ないと思っていますが、他方で現在の厚生年金はあまりにも規模が大きすぎて、少子高齢化の影響を強く受けすぎることが問題だと思っています。今後は賦課方式である厚生年金の規模を縮小して、積立方式の民間の保険サービスとの組み合わせで老後生活を支えるような仕組みにしていかなければ、日本の年金制度は破綻してしまいかねません。なので、近い将来大きな改革が断行されることを期待しています。