Q.41 「消費税を社会保障に回す」は正論なのか?宇佐美さんはどう思いますか?(じげん・会社員)
結局、消費税10%への増税は回避となりましたが、議論の当初は「増税分は社会保障に回す」という約束がされていました(守られる保障はありませんが)。でも、「賢人論。」でいろんな方の意見を見ると、消費税を社会保障に回すことの非論理性というか、整合性を感じられません。その点について、宇佐美さんの意見はどう考えますか?
「社会保障財源が足りない。だったら消費税を上げればいいじゃないか」というのは安易な発想だと思います
消費税と社会保障の議論を直接連動させるのは、あまりいいことではないと思っています。なぜなら「社会保障財源が足りない。だったら消費税を上げればいいじゃないか」という安易な発想で増税が繰り返されるようになってしまう恐れがあるからです。
そもそも本来ならば、原則として社会保障に必要なお金は、特定財源である社会保険料で賄われるべきです。これが平成に入り原則と現実が大きく乖離して社会保障に必要な資金が大幅に不足したために、「使途が限定されない一般財源から社会保障に回すお金を増やして補填しよう」という安易な政策が連発されました。その結果として、日本政府は国債を発行しまくって社会保障に巨額の一般財源を投入することになり日本政府の借金は1,000兆円を超えるまで膨らんでしまったわけです。
「これ以上の国債発行が難しくなってきたため、今度は消費税を増税して社会保障財源の不足分を調達することにしよう」というのが昨今の社会保障と消費税増税を連動させる議論の流れです。これでは穴の開いたバケツに水を注ぐようなもので、小黒一正先生などが指摘されている通り、日本政府の財政が早々に破たんし日本経済が増税に押しつぶされるのは火を見るよりも明らかです。
私は消費税を増税すること自体に反対というわけではありません。高齢者が増えて不労所得で暮らす世帯が増えていく中で、所得税、法人税、消費税、のバランスを総合的に見直していくことは必要不可欠です。
一般財源である消費税増税は、そうした「時代の変化に対応して税制全体のバランスを見直す」という観点で行われるべきであり、社会保障に必要なお金の補てんという特定目的のために行われるべきではないと思います。そんなことをしていたら社会保障制度の改革が進まないまま増税が繰り返され、我々の生活が苦しくなるうえ、日本政府の財政も破綻してしまいます。
消費増税と社会保障制度の議論は切り離して、まずは社会保障制度は社会保障制度としての独立に財政規律を高めるべきだと思います。