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宇佐美典也の質問箱

質問 Q.25 「厚生労働省の分割案」がにわかに世間を騒がせましたが、宇佐美さんとしては実現の可能性をどのように感じますか?(国会ウォッチャー・会社員)

5月頃だったと思いますが、自民党の小泉進次郎さんが厚生労働省分割案を口にしましたよね。「そんな無茶な…」とも思いましたが、その後、賢人論で池田信夫さんの記事を見て腹落ち感もありました。現実的に難しそうではありますが、宇佐美さんは実現可能性についてどのように考えますか?

将来的に、厚労省が分割される可能性はかなり高いと思います

厚労省は最も課題が多い省庁です。

まず社会保障分野については、年間30兆円弱の支出があり政府の財政赤字の主因となっており、なおかつ年間1兆円程度の規模で予算が雪だるま式に膨張しています。また労働分野についても、日本の硬直的な雇用制度の改革が進まず、非正規労働者・派遣労働者やブラック企業に関する問題についても、対策の効果がほとんど出ていません。なおかつ組織が巨大すぎて硬直的になっているというマネジメント上の問題もあります。

かつて厚労省の“トップリーダー(笑)”を務めた舛添氏は、「厚生労働省は年金、医療、雇用の3つの分野で分割すべき」というような発言をしていましたが、これは慧眼だと私も思うところです。

政治家や官僚の中でも同じような問題意識を持つ人は多く、小泉進次郎氏もその1人なわけで、将来的に厚労省が分割される可能性はかなり高いと思います。ただ今すぐということはないでしょう。

まず最も高いハードルは「省庁再編という仕事自体が面倒で、かつ人気も取れず、政治家が積極的にやろうとしない」ということにあります。厚生労働省を分割するとなると省庁の数が増えてしまうので、行政の肥大化につながりかねません。そのため、他の省庁も合わせて分割・統合を進める必要性があります。

戦後大規模な省庁再編を行ったのは橋本龍太郎内閣のみでしたが、このときは「財政再建」を目的としたものでした。このとき橋本内閣は10年後、20年後を見据えて消費増税と省庁再編を両輪で進めたのですが、これに手を追われているうちに足下の経済対策がおろそかになり、大きく支持率を落としました。

次に「仮に省庁再編を進める」ということになったとしても他省庁が厚生労働省の事業分野との統合を嫌がるという点です。予算が膨張しており問題が山積みな厚生労働省の所管分野を引き受けると、財務省から圧力をかけられたり、職員のリソースをそちらに奪われたりすることになり、元々の自分の省庁の所管分野の予算や権限が削られていく可能性があります。そのため厚労省を分割するにしても。それを引き受ける先がないという難しい問題が生じます。

つまりは厚生労働省という省庁の所管分野は「赤字続きでやっかいだけれど社会にとっては必要な大事な事業」の集合体であり、それだけに、分割して問題を解決する仕組みを整える必要があることは「総論」としては皆が賛成しても、実際に物事を進めようとすると自分が引き受けることは皆が嫌がり「各論」で行き詰まる構造にあります。