Q.19 “ブラックな職場”とも言われる省庁で働く官僚の人が、それでも働くモチベーションというのは、どこにあるのでしょうか?(AJICO・介護職員)
いわゆる“ブラックな職場”は珍しくないと思いますが、離職率が高く、長続きする人は少ないでしょう。私が働く介護現場も同様です。では省庁は?と考えると、定年コース一直線という人も多いと思います。ブラックなのに、どうして続けられるのか疑問なんですが、働くモチベーションはどうやって保っているんでしょうか?また、宇佐美さん自身は、そのモチベーションがなくなったから辞めた、ということなんでしょうか?
官僚が働く最大のモチベーションは「社会に対して大きな影響を与える権力を直接行使できる」ということでしょうか
結論から言いますと、官僚が働く最大のモチベーションは「社会に対して大きな影響を与える権力を直接行使できる」ということにあるように思えます。
官僚の給与自体は“官僚になるような人が行くであろう他の就職先に比べれば”それほど大したものではありません。例えば私の同期の中には、外資金融や国内大手保険会社や総合商社の内定を得ていたにもかかわらず、経済産業省に入省したものが多数いましたが、給与ベースでみると官僚の給与はそういった会社の半分以下でした。
こういう言い方をすると「税金で食っている奴らが生意気なことを言うな」と反感を覚える人も多いと思いますが、事実なので仕方ありません。残業も多く徹夜仕事も当たり前だったので、官僚同士の飲み会でもよく「俺ら民間に比べれば待遇悪いよな」と愚痴りあうのが常でした。
他方で、それでも彼らが官僚を辞めずに続けるのは、「日本という国家の行く末に直接影響を与えられる立場にある」という、他に代えがたい仕事の魅力があるからのように思えます。私自身もいくつか法律や税制の改正に携わったことがあるのですが、その過程で業界団体や政治家や法学者との調整を重ねて広く国民に関わる制度を変えていく感覚は、「世の中に役立っている」という奉仕意識と、「俺は普通の人にはできない大きな仕事をしている」という自己肥大感が相まって、お金を持って代えがたいものがありました。今でもその充実感は忘れられません。
ただそれでも私が官僚を止めたのは、「政治家の黒子」「組織の歯車」という官僚の立場を脱して「自分の名前」で仕事をしたくなったからです。それ自体に後悔はありませんが、今でも官僚時代の充実感を懐かしむことがしばしばあるのは事実ですね。