Q.185 介護職員に対しての利用者からのセクハラや暴力に対して、政治家や世間の関心がないのは何故だと思われますか?(マリオの兄弟・介護職員)
これだけニュース沙汰になっている問題に対して、社会全体の注目度はあまりにも低いのではないかと考えています。政治に関わる人にはそれぞれの事情があったりすることも理解できますが、多くの人が将来介護施設に入居するのでしょうから、もっとこの問題に向き合うべきだと思います。
おそらくは「介護職員に対するセクハラや暴力対策」を掲げても票にならない、ということ
政治家は原理的には票を獲得するための行動を最優先とする職業ですから、おそらくは「介護職員に対するセクハラや暴力対策」を掲げても票にならない、ということなのだと思います。
勘違いして欲しくないのですが、政治家が票のために活動するのは職業特性上致し方ないことで、ここで批判する意図は全くありません。むしろ問題は「介護職員のハラスメント対策が票にならない」という構造を許容してしまっている業界、または職員組合側にあると思っています。
ここで改めて言うまでもありませんが、日本は超高齢社会を迎えており、また高齢者の方が投票率が高いと言う政治構造があります。衆議院議員選挙の年代別投票率の推移を見ると、20歳台が30%強、30歳台が40%強、40歳台が50%強、50歳台が60%強、60歳台が70%強、それ以上が60%強、というように、60歳台までは概ね年代ごとに10%程度の差がついています。
結果として60歳以上と20歳台では投票率に2倍近い開きがあります。そのため介護業界の利用者のハラスメントの問題は、「人口が多くて投票率も高い側の問題を、人口が少なくて投票率も低い側が糾弾する」という構造になるわけですから、政治的に敬遠されるのは仕方ないことでしょう。これは現実ですから、ここでポリティカルコレクトネス(政治的に正しい意見)を唱えても現状は打開できません。
だからと言って、手はないかというとそんなことは決してありません。概ね10万票あれば議員を1人支えられると言いますから、200万人もの職員を抱える介護業界ならば少なくとも10人程度は族議員を抱えられるはずです。これまでは人材供給が過剰で、雇用側が有利な状況で介護業界は団結もしづらい状況でしたが、人材不足の時代が訪れて状況は大きく変わりつつあります。
今後は職員側も企業に対して積極的に権利を主張していく中で政治との関わりも増やし、徐々に発言権を高めていくべきでしょう。かつて看護業界も現在の介護業界と同様に権利を軽視されていましたが、1960年代の「病院統一ストライキ」を通して状況を大きく変えました。介護業界もその歴史に学ぶべきです。