Q.174 厚労省の残業200時間超えというニュース、そんな労働環境では良い政策も生まれないし、優秀な人材をリクルートできないと思うのですが。(のじゃ・会社員)
先日、厚生労働省の残業時間が200時間を超えたというニュースがありました。前々から気になっていたのですが、霞ケ関では超過勤務が常態化していると伺っています。霞ケ関で働いている全員がスーパーマンではないのだから、残業を100時間以上していればまともな頭脳労働はできないと思うのです。特に中央省庁での業務は頭を使う業務だと思われるので、そんな労働環境では良い政策も生まれないし、また優秀な人材をリクルートできないと思うのですが、宇佐美さんはどのようにお考えですか?
厚生労働省には重要な政策分野が集中しすぎており、過剰業務で崩壊寸前です
私が経済産業省に勤務していた頃はマスコミの官僚たたきが一番激しかった頃ですので、このような意見が皆様から伺えるようになったということに、元国家公務員として感慨を覚えます。率直に言って泣きそうなほど嬉しいです。
その上で私が思うことは、厚生労働省の超過勤務の問題には、長期的観点と短期的観点での対策が必要ということです。
まず長期的な観点の方から申しますと、少子高齢化社会に対応するための業務が厚生労働省に集中している現状を省庁再編によって解消する必要があります。児童福祉、社会保険、生活保護、働き方改革など、厚生労働省には重要な政策分野が集中しすぎており、それが国会業務や法令業務の多忙を生み、過酷な労働環境に繋がっています。
これを解消するには省庁再編が不可欠で、個人的には厚生労働省と文科省を「教育・就労・引退」というライフステージに合わせて3つの省庁に分割するようなことが必要だと思っています。
他方で、こうした省庁再編は長期的に有効でも、むしろ短期的には業務を増やすことになってしまいます。そのため短期的には厚生労働省の業務増加の最大の外部要因となっている「国会の業務のあり方」を変える必要があります。
具体的には「2日前までに明示的な事前通告がない国会質問には、必ずしも答える必要がない」などのような割り切ったルールの設定によって、急な国会対応業務をなくすことが重要になると思います。
ただ、野党議員に「国会質問の事前通告を早めにお願いします」とお願いするだけでは「これまでは対応してくれたじゃないか。役人は国民の代表である国会議員の仕事に偉そうに口を出すな。」などというように反発され無視されてしまう可能性も高いので、こうしたルールを実現するためには、現状禁じられている国家公務員の労働争議権を部分的に解禁し、ストライキを認めるような取り組みも必要になるかもしれません。
いずれにしろ以前のコラムでも述べていますが、厚生労働省は過剰業務で崩壊寸前ですので、与野党協力して有効な解決策を一刻も早く見つけて欲しいと思います。