Q.171 働き方改革の一環で、残業が減少した分だけ手取りも減りました。今年の労使交渉でも、この流れは加速していくのでしょうか?(ワイパー・会社員)
最近、残業について過度に「早く帰ってください」と言われることが多くなっています。いわゆる働き方改革の一環なのだろうと納得しようとしていますが、手取りが確実に減少していてけっこう痛いなと…。
「生産性の向上分は賞与で戻すべき」というラインで今後の労使交渉も行われるのではないか
難しい問題ですね。
この問題については、2017年6月2日の衆議院厚生労働委員会において、民進党(現在希望の党)の大西健介議員と厚生労働省との間で議論されていますので、その内容について紹介したいと思います。
まず大西議員が「働き方改革で残業が減った結果、従業員の収入が減って家計が苦しくなり消費が減る」という可能性について政府について質問したところ、厚生労働省は以下のように答弁しています。
山越政府参考人:厚生労働省が実施をしております毎月勤労統計調査の平成29年3月の確報によりますれば、〜決まって支給する給与が33万4,547円、所定外給与が2万7,295円でございますので、所定外給与が決まって支給する給与に占める割合は、約8.2%でございます。
それから、給与の中には、特別に支払われる給与、賞与などもございますので、これも加えて考えますと、給与総額に占める所定外給与の割合は8.2%よりもさらに小さい割合になるというふうに考えております。
いずれにいたしましても、長時間労働の是正が経済の好循環と両立するためには、時間当たりの生産性を高め、働く方がその成果に見合った賃金をもらえるようにすることが重要であると考えているところでございます。
このように、端的に言って政府は「残業収入なんておしなべて見れば全体の8%以下の話で、今後の生産性の向上でカバーするからごちゃごちゃいうな」という雑なことを言っているのですが、これに対して、大西委員が現実の好事例を挙げて的確な指摘をしています。
大西(健)委員:〜働き方改革で残業代が減って収入が減るのは困る、こういう声があります。この点、一般にブラック企業が多いと言われるIT業界において、残業時間を激減させると同時に、増収増益を続けて注目をされているSCSKという会社がありますけれども、ここも最初はなかなかうまくいかなかった。最初はなかなかうまくいかなくて、例えば、従業員の方も最初のうちは、経営者側は給料を抑えて経費も販管費も減らしたいから残業を減らせと言っているんだろう、こういう疑心暗鬼だった。
そこで、社長みずから、うちは、例えば五十時間の残業を二十時間に短縮できたら、三十時間の残業代分は全部翌年のボーナスで戻す、だから、収入、経済上の心配は一切するなと、社員にこのようにメッセージを送ったそうです。
働き方改革を成功させるためには、このSCSKのように、労働時間を削減して残業代が減った分は、利益が維持できているんだったら、それは全額賞与に上乗せして従業員に還元する、これが私は不可欠だというふうに思います。
この「成果が変わらず残業時間が減ったということは生産性が上がったということなのだから、その分は会社は賞与で戻すべき」という大西議員の指摘はもっともで、今後の労使交渉もこうしたラインで行われるのではないかと推測します。
みなさんとしても手取り収入が減るのは苦しいことかと思いますので、「残業が減った分はちゃんと賞与で評価してくれ」ということを、折を見て声にあげていくことが重要なのではないかと思います。