Q.148 生活保護の受給額削減について宇佐美さんはどうお考えですか?(じゅんじゅん・会社員)
生活保護の受給額が削減されると聞いて、質問させてもらいます。そういったいわゆる”セーフティーネット”的な制度がさらに縮小すると、進んでリスクをとって新しいものを生み出そうとする意欲というか、情熱みたいなものが薄れていってしまうのかなと思うところがあります。そうなると長期的には日本の経済発展にとって良くないな…と考えてしまいます。
今回の見直しの方向性には、それほど違和感がありません
毎日新聞の報道ベースでは、今回の生活保護制度の見直しは多岐にわたり
- 生活費相当分を160億円(約1.8%)削減
- 母子加算(月平均2万1,000円)を平均1万7,000円に減額
- 削減幅は最大5%にとどめ、来年秋から3年かけて段階的に実施
- 児童養育加算の対象を高校生に広げた上で、一律1万円に
- 大学などへの進学時に最大30万円の給付金創設
上記の項目が段階的に進められるということです。
生活扶助基準の見直しは「働くよりも生活保護をもらった方が得」という状況の解消を目的として継続的に進められているもので、母子加算の減額はこれに沿ったものとされています。他方で、これによって生活保護世帯の児童の教育機会が損なわれることがないよう、給付金創設などの一定の配慮がなされています。
私自身の考えとしては「生活保護支給額の削減すなわち悪」と捉えるのは少し違和感がありまして、大事なことは「生活保護制度の趣旨に合った見直しがなされているかどうか」という点なのだと思っています。
その意味で生活保護はあくまで「働けない事情がある人を保護する」という制度ですから、「働くよりも生活保護をもらった方が得」という状況を解消することには異論がありませんし、一方で機会均等のために児童がいる家庭へ一定の配慮をすることはもちろん賛成します。つまり、総じて今回の見直しの方向性にはそれほど違和感がありません。
質問者様には申し訳ないのですが、あまり生活保護制度と起業政策やベンチャー政策との絡みを考えても発展性がないと思っています。働ける人は働いて自活することが原則ですし、仮に起業家のセーフティネットを考えるのならば、それは労働市場の流動化・柔軟性を高める方策を考えるべきなのでしょう。
一方で私が思うのは「生活保護」という制度自体の問題でして、近年生活保護の対象は高齢化が進んでおり、2015年度の被保護者の高齢者割合は45.5%にまでのぼっています。こうした高齢者に対して「被保護者は職場復帰を目指すのが原則」という建前をつら抜くことに意味があるのか、ということを感じています。
将来的には基礎年金・厚生年金制度を含めた見直しを進め、「職場復帰」を前提としない”部分ベーシックインカム化”などを見据えた改革を行うことで、生産年齢を対象とした生活保護制度とは別の制度にしていくことも検討していくべきなのではないかと思っています。