本日は「なないろクッキングスタジオ自由が丘」にお邪魔しています。いったいどんなデイサービスなんでしょうか…!
「こんにちは!」

今回は、なんだかとっても楽しそうな雰囲気の場所にやってきた漫画家・くらたま。 どうやらここは、介護業界で初めて料理に特化したデイサービスのようです。なないろクッキングスタジオ自由が丘で料理のデイサービスを体験したくらたまは、新しい「介護」の形を発見しました。
本日は「なないろクッキングスタジオ自由が丘」にお邪魔しています。いったいどんなデイサービスなんでしょうか…!
「こんにちは!」
ようこそ「なないろクッキングスタジオ自由が丘」へ!
運営を担当しております、神永です。本日は、施設やサービスについてたっぷりと紹介させていただきますね。
専属シェフの山本です。調理師と介護福祉士の資格を活かして、お料理の楽しさをみなさんにお伝えすることが、私のおもな仕事です。
ぜひ楽しんでいってください。
さっそくお邪魔します!
わあ!広々として、とてもおしゃれな内装!
スタジオのコンセプトは、「ビタミンカラーのテーマパーク」です!
こんな素敵な空間で料理できたら、楽しいだろうなあ。こちらのオープンは、2015年ですよね。なぜ自由が丘に?
一号店は全国の人が知っている地名にしたいと思っていたんです。ありがたいことに自由が丘でスタートしたことは、良いブランディングになりました。
たしかに「自由が丘」は、オシャレなイメージがあります!建物自体もレストランみたいで、一見するとデイサービスには見えません。
ありがとうございます。通りがかった方の中には「レストランかな?」って覗いてくださる方もいます。この辺りを散歩するワンちゃんも、ときどき入口に近づいてくるんですよ。料理の匂いにつられて入ってくるのかと思っていたら、以前、ペットショップがあったそうで。昔の名残で近づいて来ちゃうことがあるんです。
(笑)。かわいいエピソード。あっ!利用者さんがいらっしゃいました!
お客様が到着されたら、手洗いうがいをしていただきます。それから、お茶を飲みながら看護師によるバイタルチェックを行っています。
皆さん、到着されて間もないのにとっても楽しそう!…あ!神永さん…私、エプロンを忘れてしまいました…。
ご安心ください。どなたでも手ぶらで来ていただけるように、オリジナルのエプロンや三角巾をご用意しております。
実は、「エプロンはどこで売っているの?」なんて聞かれるほど、人気なんですよ。
ほっ(笑)。女性だけではなく、男性も来られているそうですね。
はい。男性のなかには、一切料理をやったことがない方もいらっしゃいます。まずは料理の盛り付けなどの簡単な作業から始めていただくんですが、少しずつ料理の腕を磨いていって、いつの間にかメインでお料理を担当されるようになった方もいらっしゃいます!
すごい!料理という行為が、認知症の予防や生活リハビリとして効果があると伺いました。
はい。食材を切ったり、皮をむいたり、バランスを考えたりしながらお皿に盛り付ける。限られた時間の中で人数分の配膳を行うといったお料理に関わる行動のすべてが、五感を刺激して、認知機能の改善につながります。
確かに、お料理ってマルチタスクだ。一種の脳トレですね。
みなさん、席につかれましたね。
席についていただいたら、お客様には、日付・ご自身のお名前・ホワイトボードに書かれた当日のメニューをシートにご記入いただきます。「書く」行為も実は重要です。
たしかに高齢になると、何かを書くことが少なくなってくるかも…。
そうですね。小さなことかもしれませんが、習慣化することが大事だと思っています。
そろそろ、「なないろアカデミー」が始まります!本日のレシピや旬の食材についての知識を学べる「ヘルシー講座」です。ここで知っていただいたことをご家族に話してくださるお客様も多いと聞いています。
ご家族の会話が増えることはいいですね。みなさん真剣に聞いています。なないろアカデミーの講師も“プロ”の方なのですか?
いえいえ。本日のなないろアカデミーを担当している彼女は、最初は送迎ドライバーの職種として求人に応募してくれました。
え!そうなんですか!?食材の解説を聞いていると、プロの料理家さんかと思ったぐらいです。お話もとてもお上手ですね。皆さんも楽しそうに笑ってらして…。
送迎以外の介護業務も兼務で「何でも」積極的に取り組んでもらえています。彼女だけでなく、ここで働いているスタッフは「新しいものに挑戦したい」という前向きな思いがあって、どんどんチャレンジしてくれるので助けられています。
お客様だけでなく、スタッフの方々も挑戦を楽しんでいるんですね。準備運動も終わりましたね!ついにクッキングスタートですね!
倉田さんには、「寒ブリとポテトのクロケット」を作るチームに参加していただきます。どうぞこちらへ!
立派な寒ブリ!食材にもこだわりがありそうですね。
もちろんです!旬の食材や産地にはこだわっていて、食材で季節を感じていただけたらと思っています。
お客様の状況やご希望などをもとにグループになってもらっています。みんなで分担し、みんなでお料理をつくっていきます。
それでは、クッキングスタートです!
料理ってこんなに楽しかったんだなあ。こんな「デイサービス」ならたくさん通いたいかも…。
お料理をするだけでなく、自然とみなさん、会話を楽しめているんです。
倉田さん、お料理はどうでしたか?
とっても楽しかったです!
昭和11年生まれの方と同じグループで一緒にお料理をつくらせてもらいました。戦争のご経験をお伺いしながら、コロッケを丸めるというちょっとシュールな瞬間も…。
みなさん、いろいろなエピソードをお持ちですよ。
「ブリのお魚をコロッケに入れるなんてすごいねえ」と、10回ぐらい聞きましたけども、楽しいんですよね。自然とコミュニケーションが生まれて。仲間みたいな感じで。
間を取り持たなくてもいつのまにかみなさん会話も楽しまれています。共同作業なので、自然とコミュニケーションが生まれるんですよね。それに、出来上がったものを一緒になって喜んだり「ちょっとしょっぱかったわね」なんてお話ができたりするのも、お料理の良いところです。
認知症の症状がある方の包丁さばきもすごかった!
認知症の症状があったら「怖くて料理をできないんじゃないか?」と思っていたんですが、全くそんなことはないですね。もしかしたら、私たちは決め付けているのかも…。
ご家族の方がスタジオに見学に来られるとびっくりされていますよ。
お料理が完成しましたが、次はみなさんどうされるんですか?
ティータイムの時間です。作ったお夕食はお持ち帰りですが、午後の部はここで私が用意したスイーツを食べていただきます。
それではここからは、シェフの用意してくれたスイーツをいただきながら、サービスのお話をお伺いできればと思います。贅沢ですね(笑)。
そもそも、なぜお料理に特化したデイサービスをつくろうと思われたんですか?
「団塊世代向けに何か新しいサービスを開発できないか?」。サービスの発案に向けて、介護サービスのリサーチをしていたところ、レクリエーションで一番人気があるのは、お料理であることを発見したんです。ほかのレクリエーションには興味がなさそうな方も、ホットケーキやたこ焼きをつくるときには“目を輝かせて”積極的に参加されているのを見てきました。「料理には可能性がある…!」そんなことを感じて、このプロジェクトをスタートさせました。
批判っぽくなってしまうかもしれませんが…デイサービスに対して「決まった時間でみんなで体操をする」ような印象を持っていたんです。利用者さんの状況は違うのに、画一的なやり方に押し込められているような…。
そうですよね。もっといろんなスタイルのデイサービスがあってもいいと思います。運動系デイは少し増えたけど、運動って他の方と身体の状態も違うのでコミュニケーションを取ることが少し難しいですよね。"心"も"身体"も両方が元気になりたいですよね。
一生懸命運動する人はいるかもしれませんが、楽しくなかったら行きたくない…と思う方も出てきてしまいますよね。それに、新聞が読めるような方がデイサービスで風船バレーをやらなければいけないのは「屈辱的」だと感じてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一概には言えませんが、そういうことがないとは言い切れません。そんな状況もあって、団塊の世代の方たちが通う頃には、個々人が自ら行きたいと思えるようなデイサービスを選んでいただける状況をつくりたいです。
以前から不思議に思っていたのですが、デイサービスはなぜランクや差別化がないんでしょうね。有料老人サービスは値段でランクがあるじゃないですか。高ければコンシェルジュがいたり、自分に合ったアットホームなところも選べたりする。でもデイサービスは料金も介護度別なだけで基本的に一律ですよね。
もっと多くの選択肢が生まれてくる必要がありますよね。利用者さんが楽しくデイサービスに通えることは、ご本人だけではなく、ご家族にとっても社会にとっても嬉しいことでしょうし。
こちらにはご自身の意思で来られている方が多いですか?
最初のきっかけは「デイサービスに通いましょう」とすすめられて来られる方が多いです。ケアマネジャーさんに紹介されて来られる方もいます。最初は「デイなんて」「今さら料理なんて」と拒否反応を持っている方もいます。でも見学に来られると「自分もこの中に入りたい」と思い、通うのを楽しみにして前向きになってくださる方がありがたいことに多いです。
それはそうだ!だってすごく楽しそうですもの。実際に体験させてもらって、私も楽しかったです!
みなさん楽しくて集中していらっしゃるんです。デイサービスでよくある「早く帰りたい!」という言動も全くないですね。驚いたのは、お客様のご家族の中には、昔飲食店として使っていた場所を改装して、なないろのスタジオと同じ内装でお母様のためにスタジオをご自宅で再現しようとされる方もいらっしゃって。
ファンになられる方もいるということですね。
そうですね。コロナ前は、「成果発表会」という“参観日”のように、ご家族とケアマネジャーさんをご招待して実際の料理活動の様子を見てもらう機会を半年毎に開催していました。お家にいるときと全然違うお客様の姿に感動して泣かれるご家族もいらっしゃいます。
それほどの違いが生まれているんですね…
ご家族は、いつもゴロゴロしている方がきちんと立って積極的にお料理をされている様子や、食事する気力がなかった方がみなさんと一緒に楽しくお料理をして残さず全部食べる様子などに驚かれています。それから、母が昔つくってくれた手料理をもう一度食べたいからここに通って、また作れるように、何とか復活させてほしいというご要望もありました。
ここに通う中で利用者さんに変化は出ていますか?
大きな変化が出ていると思っています。お料理が終わったら、毎回、その日の感想を書いてもらうんですけど、その内容や文字にも大きな変化が見て取れます。
短い感想だけだった人が文字数が増え、手順まで書くようになったり、筆圧も変わり、塗りつぶしができなかった人ができるようになったりします。私たちでも書くのが難しい”蒟蒻”や”牛蒡”などの漢字をしっかり書けるようになる方もいらっしゃるんです。
ご覧ください。こちらはご利用の初回と9カ月後の文字の変化です。
すごい!こんなに変わっちゃうんですね。イラストまで!
あ!ちょうど、歩行ロボットでの歩行トレーニングをされている方がいらっしゃるのでぜひご覧になってください。これはパナソニック社の最新型の歩行トレーニングロボットなんです。
わー!すごい。トレーニングなのに楽しそうですね!
個人のデータが入っているので、お客様の名前をボタンで選ぶだけで、その方に合った高さの調整とかも全部できるんですよ。歩行トレーニングロボットって以外と数がなくって仰々しいものが多いんです。だから利用に抵抗感がある人もいます。でもここで使っているロボットはコンパクトだし、この場所にマッチするようなスタイリッシュな色合いとデザインだったのでみなさんに大変好評です。
それぞれのお客様に合わせた負荷がかかるようになっています。腰や背中が曲がっていて、車いすや杖を使ったり、手引きじゃないと歩けない方が背筋が伸びてスタスタとスムーズに歩いてしまうんです。
この空間で取り組んでおられると、一見歩行トレーニングには見えませんね。
大きな施設の長い廊下などで使用すると、一人ぼっちで黙々とやらなきゃいけない。それに頑張っていても、誰も見てくれず褒めてくれないので、やりたくなくなります。
ここだと「何をやっているの!?」という注目の的になります。狭い所なので逆に慎重に注意しながらできているのも、効果的なのかもしれません。
狭いと言えば…突然ですが、倉田さん、ここでクイズです!デイサービスや高齢者施設なら絶対にある「あるもの」がこのスタジオにはありません。なんだと思いますか。
歩行トレーニングと関係があるのかな…。うーん、なんだろう。いい意味で私の家とそう変わらないような…。
惜しい!でも、ほとんど正解です。正解は「手すりがない」です!お客様の動線といいますか、このスタジオにはあえて手すりを設置していません。
ほんとうだ!でも、みなさん、「スイスイ」移動していた印象です。
「種明かし」をしてしまうと、家具や備品が手すりの役割をしてくれています。テーブルの高さをご覧になってください。フロア内は、どこへ行くにしてもテーブルに身体を預けられるので、テーブルを「つたって」いける設計になっています。
すごいなあ。楽しいだけでなく、筋力トレーニングにもなっている。
“料理デイ”は「機能訓練がないから体力が落ちるんでしょう?」と心配されることがありますが、私たちは” 料理療法”を取り入れて機能訓練をしています。料理は五感を刺激し、脳活性化となり認知症予防や改善に繋がります。
それだけでなく、そもそも立ってお料理をすることは、足腰の強化で転倒防止や体幹を鍛えることにも繋がり、機能訓練としての効果も得られます。立つことが厳しい方にはもちろん座って料理も出来るようにしています。料理と、最新歩行ロボットを使っての歩行訓練の二刀流で機能訓練を実践しているんです。
お料理から歩行訓練まで取り組むので、みなさんほどよく疲れて、ご利用日はよく眠れるみたいなんです。
さあ、片づけですね。本当に楽しかったなあ。こんなすごいサービスですが、介護施設の運営については苦しんでいらっしゃる方のお話をたくさん聞いています。さまざまな取り組みを考えることは必要不可欠ですよね。
いろいろなことにチャレンジしています。特にコロナ禍でのデイサービスは普通に経営しているだけでは厳しくなると思います。介護保険外サービス(自費利用)にも注目して「脱介護保険」を目指し、ビジネスモデルを変えていなかければと思っています。
なるほど。今後、こんなニーズに応えていきたいと思っていることはありますか?
たとえば、有料老人ホームなどの入所施設からの外出先としても活用していただけたら、と思いますね。施設からの外出時にはかなり自己負担がかかるということも聞いています。たとえば渋谷に絵を習いに行ってる方は、往復で1回数万円ぐらいかかると聞きます。
えっ!そんなにかかるんですか?
たとえば、絵を描く画材と先生への謝礼、往復のタクシー代とヘルパーを一人つけるとそれぐらいの金額になるようです。映画や歌舞伎を見に行くと、ヘルパーさんのお昼代やチケット代まで全部持たなきゃいけなくなる。
何よりも、同行するご家族が仕事を休んだり、時間を割く必要もあり、そんなご家族の負担もあるので、外出がなかなかさせられないという話をよく聞きます。
そのようなお悩みを持つ方にも、自費利用にはなりますが、是非「なないろクッキングスタジオ」のような送迎対応可能で介護や看護スタッフがいて安心できる「習いごと」や「楽しむ」外出先としてご活用いただけたらいいなと思っています。
本当にいろいろな可能性がありますね。あ、みなさんもご帰宅のお時間ですね。本当に楽しそうだなあ。私もその一人ですが(笑)。本日はありがとうございました。
株式会社SOYOKAZE 事業統括本部 部長
大手出版社、介護のベンチャー企業での全国展開、海外へのレストラン出店など国内外の外食産業、医療法人での学校スタイルのデイサービスのビジネスモデル構築からフランチャイズ本部の立上げを経て、2014年より株式会社SOYOKAZEへ。人材育成を担う教育企画部、開発本部を経て、介護保険外事業に繋げる新規事業開発を担当。業界初の料理特化型デイサービス「NANAIRO COOKING STUDIO」を企画発案、ブランディングなどゼロから立上げる。現在、東京都目黒区自由が丘、世田谷区成城、三軒茶屋の3拠点を展開中。
NANAIRO COOKING STUDIO自由が丘 専属シェフ
介護福祉士・調理師の免許を持つ。外資系ホテルで、7年程シェフとして勤務する。フレンチから和洋中、スイーツまで幅広く経験し、2018年より現職へ。日々のメニュー開発やレシピ作成、調理指導、オペレーションや進行管理などを担当。プロの調理師と介護職としての両方の視点とホスピタリティを生かし、日々のサービスのクォリティ管理に貢献。