左半身は動かないまま家に戻ることに。
会話も記憶もできない。見放された気分
「ケアマネってどんな人がいいの?」。よく聞かれる。
我が家の場合、長い入院から自宅で介護が決まったときに病院に介護認定の方がいらした。
「同時にケアマネさんも選んでください」。そういわれて妻は情報通「K」さんに相談した。「ケアマネさんってどう選べばいいの?」。するとその人が「神足さんは家に帰って何が一番不安なの?」。そう聞かれたそうだ。そのころのボクはクモ膜下発症から1年。たった1年なのにもう公的なリハビリの期間が終わりかけているときだった。それでもボクは長いほうだ。疾患によっては90日で終わる方もいる。
「もう終わりなの?」。妻は不満だった。「まだよくなってない。けれど続けていたらもっとよくなるかもしれないじゃない?どうしてもリハビリおわりなの?」。何回説明されてもよくわからなかったそうだ。見放された気持ちになった。もちろん左半身はまったく動かない。まだまだ頭の中もぼんやりしている、喋ることもままならない。記憶ができない。高次脳機能障害の症状も出ている。
そんなわけで、理学療法士が歩く練習、言語聴覚士が喋ったり食べたりする練習、作業療法士は手先のリハビリ。毎日休むことなくリハビリが行なわれた。本当に熱心に行なってくれていたと聞く。リハビリの先生も療法士の先生も最善を尽くしてくれていた。それがぷつっと打ち切られる。
「退院するならば家に帰ってもリハビリができるようにしたい」。それが一番の希望だったそうだ。それで、ケアマネさんはリハビリに関して精通している人を探すことになった。
ケアマネさんというのは自分のケアをマネージメントしてくれる人、これからの自宅での生活の良し悪しがケアマネさんにかかっていると言っても過言ではない。
家族にとっても本人のボクにとっても、障害を抱えて自宅で介護生活に入るのは初めてのことで不安で仕方がない。それをひとつひとつ拾い上げて吸収し、問題を解決に向かわせてくれるのがケアマネだ。自分の生活を託すのだ。
ケアマネさん選び。
どう探すのが1番いいのだろうか
家族は、家の近くで理学療法士をかかえる事業所を経営し、本人もその資格を持っている、大きい病院のリハビリ科にもいたことがあるという経歴のケアマネさんを選んだと聞く。
もちろんそのケアマネさんはボクのリハビリができるように毎日のようにスケジュールを組んでくれた。ほかにも車椅子で階段を登らなければいけないとか、動けない身体にはこういうベッドがいいとか、どのぐらいの割合でヘルパーさんをいれたほうがいいとか、細かなことまで一緒に考えてくれた。
ベテランだし知識も豊富だった。もちろん我が家ではその人しかケアマネを知らないので、それが普通と思っていた。それに優劣など考えたこともなかった。満足というか、そういうものだと思っていた。
最近まわりでも「親の介護でケアマネさんを選んだんだけど」なんて話をよく聞く。こんな話もあった。「今日、初めて話し合いでケアマネさんが来たんだけど、どんなサービスを受けたいですか?って聞かれたから、私の母が入院して自宅で一人になったお父さんが腰痛で歩けないし、家事をしたことがない人で困っている。一番困ってるのは食事なんです。お弁当かなんか届けてもらうサービスありますよね?この3つのうち評判のいいところわかりますか?」って聞いたら「食べたことないからわかりません」って言われたそうだ。
「どう思う?そういうケアマネ」。我が家でも話題になった。妻曰く「聞いてみますね、ぐらいいったほうがいいんじゃない?ケアマネ仲間に評判聞くとかさ」「ケアマネだって初心者だったり知り合い少なかったり、だいたい話し方の基本知らないような人もいるんじゃない?だけどさ、悪い人に当たっちゃったねってあきらめるの?これから親の生活のマネージャーになる人なのに?」。この話題はけっこう盛り上がる。
ケアマネさん選びに妥協はしたくない。
可能性がある限りがんばる
介護に精通している情報通「K」さんに話を聞くと「正解はないけど…●●ってところの宅配弁当はお試しで注文できます。あと、▲▲は一食でも注文できるので嫌だったら次の日やめられます、とか言うかなあ。でも、その情報知らなければ駄目だけど…そんなのも知らないようなケアマネいるかなあ?」とのこと。
その人ばかりではない。ケアマネさんについてこの1ヵ月に5回は質問を受けた。ボクだってそんなに詳しいわけではないのだけれど。
ボクのケアマネさんは選ぶときにちょっと苦労したけれど、嫌だなと思ったことはなかった。まあ、付き合うのはほぼ妻なわけだから妻との相性の方が大事かもしれない。それにいくら相性がよくても自分の介護生活をよりよくしてくれなくては元も子もない。難しい問題だ。
もしも、嫌だなと思ってもそれを黙っていることが多いと聞く。「だって人質取られているようなもんじゃない?」。そんなことをいう人もいた。「それに自分にあったケアマネを選ぶすべがない」。口々に言う。
はじめの第一歩は、人に聞いてみること。近所の人、経験者、かかりつけのお医者さん。何かいい知恵、なにかいい人を知っているかもしれない。いいケアマネは手一杯で断られることもあると聞く。そうならば、そのケアマネに紹介してもらうのもいいと聞いた。
人間対人間。しかもケアマネは家庭の事情にも、しっかり入ってくる。やっぱりボクは少し時間をかけて分かり合うって言うのがいいような気もする。第一印象も大切だけどね。