こんな身近で起こるなんて…
「パパ!振り込め詐欺!!」「ん?」
つい最近の話だ。本当にこんな身近にあるんだと驚いたことがある。
ボクは、妻がコンビニで料金支払いがあるというので車の助手席で待っていた。待てど暮らせど妻が出てこない。一体どうしたのだろう…?そう思っていると妻が興奮して帰ってきた。「パパ!振り込め詐欺!!」「ん?」
話を聞くとこうだった。
妻は、レジで振り込みをしようとお財布を開くと、ちょっとお金が足りなかったのでコンビニの中にあるATMに向かったそうだ。
するとATMの前に、なにやらゴソゴソとメモを読みながら立ち往生しているおじいさんがいた。年の頃80歳。野球帽を被ってしっかりとした足取りの痩せたおじいさんだった。
まだATMを使い始めていなかったし、パパを待たせてるから「使って良いですか?」と聞いたら、「いや、使っている」と言われたので後ろに並んで待っていたそうだ。
するとそのおじいさんが携帯で電話をかけ始めた。「コンビニの支払い機の前に着きました。」「あ、はい残高照会ですね?えっと、96万あります」。そのあたりで妻の心臓は高鳴り、「どうしよう…怪しい」。そう思ったそうだ。「え?農協ですか?わからないなあ…あ、右下ですね、ありました。この数字を入れれば良いのですな?…で、自分の暗証番号ですね?」
妻は「どうしようどうしよう…」と思い切っておじいさんに「あの…」と声をかけたそうだ。おじいさんは急かされたのかと思って後ろを振り向き、いぶかしそうな顔をしたそう。
その頃、ちょうどATMの横にあったポットのお湯を注ぎにカップヌードルを持ったお兄さんがやってきた。妻は「なんか振り込め詐欺みたいなんです」と告げると、その人がATMの画面を覗いた。「結構な額だよ」。そう言ったそうだ。
妻は店の人に「おじいさんが振り込んでるんですが、振り込め詐欺だと思うんです」。そう告げると店の人が「その振り込みやめてください。やり直しても良いでしょ」となにも状況を飲み込んでもいない店員さんだが、画面の取り止めボタンを押して阻止してくれたそうだ。電話は通じたまま、そのドサクサ模様があちらに実況中継されていたに違いない。
おじいさんは憤慨して「区役所の○○さんから電話がかかってきたんだ。保険金が戻ってくるんだって。振り込むんじゃなくてあちらから振り込んでくるんだよ」。そう言って怒った。
店員さんが「区役所からそんな電話は絶対ないですから」と言うと、「いや、確かにそうだった」の押し問答が続き、おじいさんは怒って出て行ってしまったと。
妻が「あのおじいさん、怒っていたから他のとこでやるかもしれない」。そう心配していた。「おじいさん『あちらから振り込んでくる』って言ってたけど、振り込もうとしてたからね」と、興奮冷めやらぬ状態だった。
詐欺師の騙す能力が高いのは当然
騙された人を我に返すのは簡単じゃないのかも…
コンビニの店員さんにお礼を言われカップヌードルのお兄さんと妻は解散したのだけど「おじいさんだいじょうぶかなあ」とずっと心配していた。コンビニの人が警察に報告するとは言ってたけど…しかし、最近は銀行のATMだと監視の目があるので、コンビニのATMで振り込むように指示されることが多いと聞く。まさしくその現場だ。
おじいさんは深く深くその詐欺を信じていて、周りの人の話を聞こうとしなかった。声をかけた妻に怒りの感情さえ見せたという。「怖かった」と妻は震えたそうだ。こんな“いかにも”な現場にいても勇気がなかなか出なかったと言う。
詐欺師なのだから上手く騙すのは当たり前。騙されてしまった高齢者を我に返すのは結構大変なのかもしれない。
知人にも振り込め詐欺被害が…
あの大金はもう帰ってこない
それから数日、こんなことがあったんだと知人に話すと「実は先週、実家の母が騙されたんだよね」と言った。かなり驚いた。一人暮らしの81歳。東京郊外に住んでいて、元気で都内のお孫さんの新居にも一人で電車を乗り継いで行く。嫁いびりも健在。身の周りのことも自分でできる。
そんなお母さんが「銀行協会」と名乗る者から電話がきて「キャッシュカードが神奈川一帯ですべて使えなくなりました。回収に伺いますので暗証番号をカードの表面にマジックで書いて、印鑑と身分証明書を用意してお待ちください」と言われたそうだ。
お母さんは数枚のキャッシュカードにご丁寧に暗証番号まで書いて回収に来たその「銀行協会」の人に渡したそうだ。「だって身分証明書を2つも見せなきゃいけないし、印鑑だって朱肉を使うものじゃないといけなかったり、かなり厳しかったのよ」。そう言ったそうだ。「お母さん、この場合は母さんの身分証明書は関係なくって、必要なのはあっちの身分証だろ」。そう言ったがピンときてないそうだ。そういって騙された金額の大きさに「もう戻ってこないんだろうなあ」と寂しげに話した。
妻もしっかり騙されて…
みんなも気をつけようね
こんな身近に高齢者を狙った詐欺が蔓延している。そんなこんなしているとある昼間、妻が電話に出た。「もしもし、わたし」と少女の声。「ん?××ちゃん?」「そう、助けて。変な人に捕まっちゃった」「え?どこにいるの?どうしたの?大丈夫?」と叫んでいる。電話の中から「ぎゃはは」と数人の笑い声。「騙されてる。笑」。ガチャンと電話は切れた。いたずら電話だ。しかし、それにしてもまんまと妻は騙されていた。