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宇佐美典也の質問箱

質問 Q.30 介護に関わる政策って、なんだか軽視されているように感じませんか?(オランダ産・介護職員)

介護に関わる政策や介護報酬の制定などを見ていると、とても現場のことをわかった上で立案されているとは思えないような内容のものが多く感じられます。政策立案をする上では、重視されるのは国家予算の方で、その政策によって影響を受ける人(現場の職員)のことは重視されていないのでしょうか?

政策の立案というのは、正直なところ運次第というところがあるんですよね…

一概に言えないのですが、官僚は「予算を充実させて現場の要望を満たしたい」という個人的な思いと「財政健全化のために国家予算の制約に従わなければならない」という責任感の間で板ばさみになり苦しんでいることが多いです。

例えば介護制度の予算要求を担当している担当官は、なるべく介護職員の待遇を良くしたいと思って日々予算を査定する財務省をどう説得するかを考えています。そのために官僚は「何をするために、なぜ、いくら、必要なのか」ということについて審議会という有識者(学者や事業者など)を集めた会議の場で議論を重ね「お勉強」して詰めていきます。

一方で、「お勉強」するばかりでは予算は降ってこないので、影響力を持つ有力な政治家に、「介護報酬を改定して現場の職務環境を改善するために予算を増やしたいんで協力してください」などと陳情して省内他部局や他省庁に圧力をかけてもらうようお願いして回ります。いわゆる「根回し」ですね。この「お勉強」と「根回し」を終えた上で、官僚は最終的に財務省との折衝に臨み、予算の必要性について「ご説明」します。この「お勉強」「根回し」「ご説明」が官僚の三大業務です。

官僚としては、この3つの業務を粛々とこなして、現場改善のための予算を獲得するよう日々努力しているわけですが、その結果十分な予算が獲得できるかどうかは、その年の税収や政治家の意向や他省庁の思惑など多様な要因が影響するので、正直なところ運次第というところがあります。結果としてたいていの場合は十分な予算が得られずに、官僚は現場から「お金が足りない」という不満を受けることになり、自分の思いと現実とのギャップに苦しむことになります。

ただ、年齢を重ねてこうした経験を繰り返すうちに、最後は「自分の最善を尽くしたならば、いかなる結果になろうと受け入れるしかない」というような心境にいたるようで、私には先輩の官僚がジレンマを克服してだんだんと達観していくように見えました。そんなわけで、官僚は権力を持っているようでいて、その実、いろいろな組織や政治家に制約されるサラリーマンに過ぎないのです。