Q.104 経産省でデータの統計を取っていたという宇佐美さん、そもそも推計することにどれほどの意味があるのか、どうなれば政策に反映されるのか、教えてください。(ぽち・介護職員)
2025年問題に関する記事を読みました。必要となる労働力のデータを推計しようと言う厚生労働省に対して、「推計してる場合じゃない」という声が上がっていますが、ごもっともに思えます。そんなことをしてる間に、介護の現場はどんどん状況が悪くなっていっていることを実感します。そもそも推計することに、どれほどの意味があるのでしょうか?推計を、どこまで行えば実際の改善に至るのでしょうか?経産省でデータの統計を取っていたという宇佐美さん、推計の意味と、その着地点がどこなのか、どうなれば政策に反映されるのか、教えてください。
予算要求時に、正確な一次統計や将来推計のデータというのは不可欠。ものすごく大きな意味をもっています
まず結論から言えば、あなたの意見は民主主義のプロセスを軽視した非常に傲慢な意見だと思います。
端的に言えば、あなたが言っていることは「俺たち現場は大変なんだから、理屈も何もなしにさっさと金をよこせ」ということです。介護保険の原資は国民の保険料と税金であるということを忘れないでください。あなた、というか全ての介護職員は、「税金で食べている」のであって、その意味では公務員と変わりません。
その上でデータの推計の意味を申しますと、中央官庁において予算を獲得するには、各省庁の担当職員が財務省に対して「〜という問題に対応するためには、〜という対策が必要で、〜円の予算が欲しい」ということを毎年根拠を持って示す必要があります。この予算要求時に、正確な一次統計及びそれに基づく将来推計のデータというのは不可欠な資料となります。
国の予算は無限大にあるわけではありませんし、ましてやその原資は税金ですから、どの業界も予算を獲得するにあたっては、きちんと試算の前提となるデータを所管省庁と一緒になって揃えて「制度の目的、持続可能性、効果」を証明した上で予算要求に望むわけです。そのために業界によっては、事業者が共同で出資してシンクタンクを運営している例も沢山あります。
そのような中、介護業界だけは自らデータを揃えたり将来推計を行ったりせず、ただただ「金をくれ」と言っているようでは、はっきり言って「たかり」と変わりません。
介護の現場がどんどん悪くなっているのは、業界として過去にキチンとした「推計」を行わず、正当な予算確保に向けたロビイングを怠ったからでしょう。
今からでも介護業界は厚生労働省におんぶに抱っこで頼るのではなく、業界自身が介護業界の持続可能な将来のあり方とそのために必要な予算を正確なデータと推計を以って示す必要があるのではないでしょうか。