九州一の県には老人ホームが多数。費用面など選択肢も豊富

政令指定都市の福岡市と北九州市を含む福岡県では、老人ホームなどの施設数において二極化が進んでいるのが特徴です。
両都市では新しい施設の建設も進み、数も増えていますが、それ以外の市町村では充実しているとは決して言えず、地方在住者にとっては悩みの種と言えるかもしれません。
さらに顕著なのが、地方の高齢化率。
都市部と比較すると10ポイント以上高齢化率が高い地域が多いのが現状です。
需要が供給を上回っているために空き室が少なく、待機している人数もかなりの数に上っているというのが現状です。
さて、施設自体の特徴に目を向けてみましょう。
福岡県全体で見れば、人口10万人あたりの施設数が59と割と多く(全国平均は約48)、その選択肢も幅広いものがあります。
住宅型有料老人ホームや介護付の施設、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)も徐々に増えてきており、利用者のニーズに合わせた選択が可能です。
特に福岡市では高専賃が増えてきているので、その利用を考えている人は福岡市を中心に見て回ってみてはいかがでしょうか。
概ね、大人数を収容できる施設よりも、60名前後、またはそれ以下の施設が多く、アットホームな雰囲気を重視している老人ホームが多いように見受けられます。
ただし、規模自体が小さいため、居室や共用部分がコンパクトである点は否めません。
広々、そして伸び伸びとした生活を望むのであれば、選択肢は限られてくるかもしれませんが、定員が大人数の老人ホームを選ぶと良いでしょう。
施設面の幅広さと同様に、費用面も千差万別。
入居一時金が0~数十万円のところもあれば、数百万円、中には1,000万円を超えるところもあり、月額利用料に関しても10万円前後のところから30万円ほどのところまでと、こちらも利用者のニーズによって選ぶことができます。
24時間看護体制が敷かれていたり、病院が母体となって経営している施設では医療や介護などサービスが充実しており、当然、高額な費用が発生してきます。
そうした施設は主に福岡市、北九州市が多い傾向があるので、医療・介護サービスの付いた充実した生活を望むのであれば、この2都市を中心に老人ホームを探してみてはいかがでしょうか。
高齢者保健福祉計画で高齢人口の増加に対策を
福岡県の高齢者(65歳以上)は2023年現在で既に約142万人もの数に上り、総人口の約27.9%もの割合を占めています。
1970年以降少しずつ増加し続けて来た福岡県の総人口も、2010年の507万人から2025年には494万人に減少することが予想されており、さらに2035年には456万人にまで早いペースで減少することが予想されています。
このように急激に総人口が減ることが予想されているにもかかわらず、福岡県の高齢者人口は2010年の113万人から2025年には146万人に急激に増加し、2035年には150万人に至るまで増加するのではないか予想されています。
福岡県の総人口と高齢者数はちょうど反比例するようになっていってしまうのではないかと危惧されているのです。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2010年の高齢化率は22.3%でしたが、2015年には25.9%、2023年は27.9%。
さらに生産年齢人口も1980年代以降増加傾向にありましたが、2000年をピークに減少し続けています。
同じように15歳以下の子どもの数も1980年代半ばから減少傾向にあり、福岡県は今まさに少子高齢化の状態に陥っています。
そこで福岡県では高齢者保健福祉計画という対策を講じています。
それは高齢者が要介護であっても健康でも社会の一員として活躍できるような社会づくりを目指す70歳現役社会づくりや、医療と介護と地域のつながりを強化する地域包括ケアシステムの構築、要介護になった高齢者の財産を守る成年後見制度の利用促進や、介護に関わるさまざまな人材の育成、要介護者の避難の支援体制の確立などを盛り込んだ壮大な計画となっています。
地域密着型の介護保険サービスを拡充が課題
福岡県の2000年の要介護認定者は約20万人でしたが、2024年には約28万人に増加しており、その増加率は約141%にもなります。
この要介護認定者数の増加に伴って介護保険サービスの利用率も上がりつつあり、社会の変化に合わせてさまざまなタイプの介護保険サービスが登場しています。

現在福岡県で一番利用されている介護保険サービスは、介護ヘルパーの派遣を主とする在宅で受けるサービスですが、グループホームやデイケアなどの通所型の介護保険サービスの利用も増えてきています。
2006年の介護保険法の改正後から2024年までの8年間の内に、在宅型介護保険サービスの利用率と地域密着型の介護保険サービスの利用率は共に増加しており、福岡県では要介護者と地域とのつながりが強化されてきているようです。
また在宅型介護保険サービスは要介護度が低い高齢者による利用が多く、地域密着型の介護保険サービスは要介護度が2~3程度の高齢者による利用が多いことからも、福岡県の介護保険サービスは介護と地域をつなぐ架け橋のようになりつつあることが窺えます。
これから急激な少子高齢化が予期されてる福岡県では、地域密着型の介護保険サービスを拡充し、地域と介護のつながりを今から強化していくことは最重要課題となっています。
高齢者が地域を支える一員としての役割を担う支援を
福岡県では2006年の介護法改正によって日本全国で高齢者の介護予防に注目が集まる以前から高齢者の介護予防について力を入れていました。
県内に4か所設置された介護予防支援センターは高齢者の活動的な生活を支えるため、地域の人々と一体化した高齢者のリハビリ施設の開設や、医療機関や福祉機関への地域と一体化した高齢者の介護予防についての啓発活動などを行ってきています。

全国よりいち早く地域と一体化した介護予防に力を入れていた福岡県では最近高齢者への生活支援の一環として、高齢者の身体機能をリハビリで回復するだけの介護予防だけでなく、身体機能が回復した高齢者の活動的な日常生活を維持させるためのさまざまな場を、地域に創り出そうとする試みが重点的に行われています。
例えば福岡県筑後地区介護予防支援センターでは久留米市民会館で地域住民達が参加できる運動機能測定会を開催したり、高齢者が自主的に健康維持を目的に作ったグループの地域での活動を支援したりしています。
他にも地域の健康づくりのイベントに介護予防専門の職員を派遣したり、色々な福祉施設に介護予防のマニュアルの説明や指導を実施したりしています。
福岡県の介護予防には高齢者をただ支援されるだけの人として扱うのではなく、地域の人々の生活を支える役割を持った地域社会の一員として扱い、介護予防を通して高齢者を含めた地域住民全体にとって住み心地の良い地域にしていこうという基本理念が基礎にあるのです。
改築費用の支援「住みよか事業」を推進

福岡県では今後急激に進むと予想されている少子高齢化への対策として、地域と介護や医療を上手くつなげることにより、地域と介護の双方の問題を解決しようという地域包括ケアを実施しています。
さらに福岡県では、その地域包括ケアを各地域で実施するための中心機関として2006年から地域包括支援センターを設置し始め、現在の福岡県内には188か所もの地域包括支援センターが設置されています。
高齢者だけでなく、地域に住む全ての人々の健康や安定した生活の維持への細やかな支援が出来るように、福岡県内の地域包括支援センターには社会福祉士や経験のある看護士、保健師などが常駐していますし、高齢者一人一人の状況を踏まえた継続的な支援を行えるように主任介護支援専門員という特別な専門員も常駐しています。
さらに福岡県では地域包括ケアの一環として介護がしやすいように家を改築した場合、その改築費用の一部を県が負担するという「住みよか事業」という事業を実施しています。
例えば長崎市では市税の滞納が無ければ高齢者本人でなくても一緒に住んでいる2親等以内の親族であれば、介護用の住宅改築費用の部分的な助成を受けることができます。
福岡県の住みよか事業のように高齢者の住宅への経済的な支援はこれから高齢者が爆発的に増えていく日本全国で必要とされていきます。
地域と介護をしっかり連携させるには、まず高齢者の生活の基本的な土台を支えていくことが大事なのかもしれません。
福岡県福祉サービス運営適正化委員会とは?
福岡県内の福祉サービスに関連する悩みや不満は福岡県の各市町村にある社会福祉協議会が受け付けています。
社会福祉協議会では現在高齢者や要介護者の福祉サービスや貴重品の管理に関する様々な問題に、細やかな対応をする日常生活自立支援事業を実施しています。

社会福祉協議会に県内の福祉サービスに対する悩みや不満を相談すると、生活支援員と専門員が相談主の所へ派遣され、相談主と共に支援計画を練ります。
支援が決定するとその地域担当の基幹的社会福祉協議会に相談が引き継がれ、相談主とその基幹的社会福祉協議会で支援制度の利用が契約され、その計画に沿った支援が生活支援員の定期的な訪問と共に始まります。
認知症や他の病気などで相談主の高齢者本人の判断能力が低い場合は、支援員が訪問した時点で契約締結審査会という第三者的機関が支援員との間に入り、契約の妥当性や可否を判断してくれますし、利用料金は具体的な支援が実施されてから発生するので不当な支援の契約を結ばされる心配はありません。
社会福祉協議会に持ち込まれた福祉サービスに対する苦情は苦情解決制度に沿って解決します。
その際の雑多な手続きに対しても派遣される専門員と支援員の手厚いサポートがありますので安心です。
このような生活支援を受けたいという意思のある方ならば、誰でも日常生活自立支援事業制度を利用できますので、福岡県の福祉サービスに対して少しでも悩みや不満があったらすぐに社会福祉協議会に相談してみて下さい。