安い・低価格の施設特集

昨今、介護施設への入居にあたっての金銭的なハードルは確実に低くなっています。入居一時金が0円、月額利用料10万円台のところもたくさんあり、年金収入がメインとなる高齢者にとっては嬉しい流れですね。
「施設に入居するならできるだけ長く、落ち着いて暮らしたい」、そんな方にとって、月額利用料の低価格・安い施設は理想的と言えるでしょう。
特養には待機者の列…。特養以外の老人ホームが選ばれる3つの理由

現在、特別養護老人ホームには原則的に要介護3以上の高齢者でなければ入居できません。入居希望者が多いため、入居申し込み後に長期間待ち続けるケースが多々発生しています。特養は入居費用が安く終身利用できることが魅力ですが、それゆえ需要に比例して待機が多く、すぐに入居できない点がデメリットになっています。
ところが、昨今の老人ホームは低価格化の波に乗って入居一時金や月額利用料が安めに設定されており、入居しやすくなっています。年金で月額利用料が支払える老人ホームも多く存在しています。
そして入居までの期間が比較的短いことも、特養以外が人気となっている理由。入居条件を満たしていれば、空室状況次第で2週間程度での入居も可能です。特養のように2年、3年と長い待ち時間を必要とせず、入居に時間がかからないのは大きなメリットと言えるでしょう。
また、老人ホームの施設数は特養と比べて多めなので、条件に合う施設を選べるのも嬉しいところ。自分の生活スタイルや心身の状況などを鑑み、より”自分自身にフィットした”施設を探すことができますね。
長い待ち時間を必要とする特養以外の老人ホームを選ぶ理由は「低価格」「即入居可」「施設数の多さ(選択肢の広さ)」の3つ。なお、老人ホームの入居方法や入居条件については各施設により差がありますので、事前の確認が必要です。
年金生活でも入居可能な老人ホームは必ず見つかる!
「年金だけで老人ホームの月額利用料が支払えるかしら」という漠然とした不安をお持ちの方も多くいると思います。ではこの疑問に対して、現実はどうでしょうか?
厚生労働省の「2016年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2016年度の厚生年金の月額平均受給額は約14万6千円、国民年金の平均受給額は約5万5千円となっています。「思ったほど受給額が多くない」「国民年金だけでは生活できない」そんな印象を抱いてしまう方も多いようです。
厚生年金の平均受給額が年々減少しているのも気になるところ。国の借金は毎年膨らんでおり、社会保障費の削減を検討する向きもあることから、年金受給額が減る可能性もゼロではないと言われています。そのため「限られた年金の範囲で入居できる老人ホーム」を探すことが、経済的な不安を軽減する現実的な方法となるでしょう。
厚生年金 | 国民年金 | |
---|---|---|
2012年度 | 14万8,422円 | 5万4,783円 |
2013年度 | 14万5,596円 | 5万4,544円 |
2014年度 | 14万4,886円 | 5万4,414円 |
2015年度 | 14万5,305円 | 5万5,157円 |
2016年度 | 14万5,951円 | 5万5,373円 |
費用面を考えると「やはり特養」という選択肢も出てきますが、希望者が多いことから即入居はかなり難しい状況。その反面、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の方が入居時期や入居条件が緩やかで、入居しやすいのは事実。中には生活保護受給者が入居相談できる施設もあり、決して入居できないわけではありません。
以下では、特に人気となっているケアハウスについて、その詳細をみていくことにしましょう。
「安い」介護施設の代名詞、ケアハウスにはどんな特徴があるのか
ケアハウスは地方自治体が運営する老人ホーム。自治体の助成があるため、入居の費用や月額利用料が安いという魅力があります。
入居対象は「経済的に介護付有料老人ホームなどに入居できない」という高齢者が主となります。入居には条件がありますが、その内容は地域包括支援センターのケアマネージャーなどに詳しく教えてもらうことができます。
施設には居間や食堂などの共同エリアがあり、自室としての個室も完備。ケアハウスによっては夫婦部屋もあるので夫婦での入居も可能です。
また、入居後は安否確認や緊急対応などのサポートが受けられ、介護型のケアハウスであれば介護度が上がっても退去が必要なくなることもポイントです。
ケアハウスにはいくつかの種類がある

ケアハウスは「軽費老人ホームA型・B型」「軽費老人ホームC型(ケアハウス一般型・介護型)」に分けられます。どのケアハウスもサポートを受けながら暮らせる共同生活施設。個室に加えて夫婦部屋もあるため、夫婦で入居できるのも大きなポイントでしょう。
また、浴室や食堂、居間など、居室以外はすべて共同で使用します。スタッフが常駐しており、洗濯などの簡単な生活サポートが受けられるのも魅力です。
特に「軽費老人ホームC型」とも呼ばれているケアハウスには「一般型」と「介護型」があり、どちらも食事の提供、緊急時対応や見守りサービスなどが受けられます。さらに、「介護型」では生活サポートにくわえ、介護サービスや通院の介助、安否確認などのサービスがあるのもポイントです。
都市型軽費老人ホームとは?
東京都心部などでは、徐々に高齢者が増加しています。しかし、都市部は介護施設の料金が高く、施設へ入居できない高齢者が増えているのも事実です。そこで近年ではこの状況に対応するべく、地域を限定した「都市型軽費老人ホーム」という種類の施設が増えています。
一般的なケアハウスと大きく違うのは、居室の面積と職員の配置基準が緩和されていること。都市型軽費老人ホームの方が部屋が狭く、また定員数も20人以下と決まっています。
さらに、都市型軽費老人ホームは入居一時金が不要です。収入認定などによる減免後は、人にもよりますが、本人負担額が10万円から12万円程度。都市部としてはかなり安めです。
ケアハウスの料金・費用の概要と目安
ケアハウスの料金はタイプによって違います。軽費老人ホームA型には食事がつく一方で介護サービスはなく、月額利用料は6~17万円ほど。軽費老人ホームB型には食事と介護サービスはなく、生活サポートのみで月額利用料が3~4万円と安く抑えられます。
要介護の方も入居できるケアハウス一般型は食事がつくことから6~17万円ほどの利用料。介護型のケアハウスは介護サービスが含まれるため、月額利用料は6~20万円と高めですが、介護付有料老人ホームに比べると低価格で介護サポートが受けられるのは魅力的です。
この基本料金に加えておむつ代やおやつ代などが加算されますので、一人ひとり総費用は違いますが、概ね他の介護施設より安価で抑えることができるでしょう。
ケアハウスへの入居条件
軽費老人ホームA型・B型は自立型なので、介護が必要な高齢者は入居ができません。またA型は食事提供がありますが、B型はありません。そのため後者は「自炊ができる」というのが入居条件となります。
一般型は、介護が不要な人や軽度の人(要介護2まで)が入居可能。年齢は60歳以上の高齢者または夫婦のどちらか一方が60歳以上であることが条件です。
また、介護型のケアハウスの入居条件は要介護度1以上で65歳以上。介護が必要な人も入居できますが、収入や「近親者のサポートが難しい」といった諸々の条件がありますので、ケアマネージャーなどに詳細を聞いてみると良いでしょう。
月額費用は入居者の介護状況で変わる

介護型と違い、一般型のケアハウスには介護士が常駐していませんので、訪問介護などの外部サービスを受けながら生活することになります。その分、費用もかかるため、最終的な額は少々高めになるかも知れません。
また、介護型のケアハウスは月額利用料として居住費や食費、日用品費などに加え、介護サービス費を負担。介護度が重い人はおむつ代などが加算されるなど、介護度によって月額利用料が変わっていくわけです。
収入によっては費用が減額される場合もある
ケアハウスは、低所得者が優遇されるシステムです。本人あるいは扶養義務のある家族の年収などを考慮し、料金が減額されます。東京都にあるケアハウスの例をあげると、収入が年間150万円以下という入居者の場合で減額措置の適用となり、費用は毎月7万円ほどになります。
しかし、収入が年間310万円を超えると、費用は毎月15万円超となる場合もあるなど、収入によって大きく変動します。地域包括支援センターなどのケアマネージャーに確認することで大まかに計算してもらえるので、入居時にどれくらいのお金が必要かを事前に計算しておくと良いでしょう。
ケアハウスが低価格である理由
一般的な有料老人ホームは民間企業が運営しているのに対し、ケアハウスは自治体や社会福祉法人といった公的機関が運営しています。
そのため、自治体からの助成によって入居者の費用が抑えられることに加え、国や市町村から助成される場合もあります。低収入の人には減額措置も適用されるため、毎月の費用がさらに安くなる可能性もあるようです。
また、高額介護サービス費による料金の補助が受けられる人もいます。介護サービスの自己負担額の上限を超えた場合、超えた分を払い戻してもらえるため、世帯によっては還付金の分、費用が安くなります。
自治体からの補助金が出る

地方自治体や社会福祉法人が運営するケアハウスは「軽費老人ホーム」とも呼ばれており、その名の通り費用が安いという何よりの特徴を持っています。上述した通り、自治体からの補助金のおかげで毎月の費用が安く押さえられるのです。
補助金には高額介護サービス費の還付金や、施設での生活サポートの提供に必要な費用(職員の給料など)の補助金が含まれます。そのため、ケアハウスは一般の介護施設よりも費用が安いのです。
高額介護サービス費による補助を受けることも可能
「高額介護サービス費」は、支払った介護サービスの利用料が自己負担額の上限を上回った際に、介護保険から上回った分を払い戻す制度です。
上限額は収入などによって違います。例えば世帯全員が住民税非課税で、さらに本人が老齢福祉年金の受給者の場合は、世帯の上限額が2万4,600円、個人の上限額が1万5,000円です。
ケアハウスは大きな家にみんなで住んでいるようなイメージ。「一人では寂しいから、みんなでご飯を食べられて嬉しい」といった感想もあり、一般の介護施設に入れない高齢者の拠り所となっているようです。
リハビリが行われている施設特集
リハビリは高齢者の生活で重要な役割を果たしている!

リハビリとは、身体機能に障がいのある方が、可能な限り社会生活を送るための能力を取り戻すための訓練のこと。特に高齢者では、加齢による機能低下の他にも病気の後遺症などによって障がいがある場合が多く、リハビリは日常生活の中で重要な役割を果たしています。当然、リハビリを行っている介護施設も多く、注力しているところでは理学療法士や作業療法士といった専門家を常駐させていることも。例えば料金体系や食事、居室の設備などと同様に、リハビリという点でも将来のことを考えた上で施設選びをしたいものですね。
リハビリは高齢者の生活で重要な役割を果たしている!
リハビリとは、骨折や脳梗塞、脳卒中などの病気による後遺症に対する機能訓練です。脳血管障害が起きると脳の中枢神経がダメージを受けることで、体がうまく動かせない、体がマヒする、力が入らないなどの「運動障害」や、言葉がうまく出てこない、発音がしにくいなどの「言語障害」、冷たさや暑さ、痛みを感じにくくなる「感覚障害」、うまく食事が飲みこめない「嚥下障害」、失禁や尿意が感じられなくなる「排泄障害」などが単独、または複数の障害としてあらわれます。これら「機能障害」をすこしでも改善させるためにリハビリはあります。
リハビリは「機能障害」を改善する以外にも、残された機能を活用していくこと(動かない右手ではなく、マヒのない左手を使うことなど)、保護具の活用、障害が残っても部屋に手すりを設置するなど住環境をととのえることで、本人の自立を助け生活しやすくなるように工夫することができます。これらのアプローチを活用して生活を再建し、社会に復帰することや心の問題を改善していくことがリハビリの大きな目的です。「リハビリ」と一言で言っても、さまざまな角度からアプローチすることが可能です。
リハビリには多方面からのアプローチが可能ですので、そこに関わるスタッフの数も多くなります。リハビリテーション科専門の医師を中心にして看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカー(社会福祉士)、義肢装具士、臨床心理士、機能訓練士など、さまざまなスタッフが関わることがあります。とくに医師の役割は重要で、病気や後遺症の診断、判断はもちろん、治療方針やリハビリの方向性を決め、すべてのスタッフに指示を与えます。多くのスタッフをまとめる立場なので、医療に関する知識だけではなく高いコミュニケーション能力も必要です。ちいさなオーケストラの指揮者のような存在です。医師の采配がいい加減だと、スタッフはもちろん患者も混乱してしまいます。しっかりした医師が在籍する病院やリハビリ施設を選びましょう。
さらにリハビリには、障害を予防するという役割も。高齢なると筋肉量が落ち、なにもせずに横になっているとどんどん体力が落ちていきます。とくにもともと筋肉量の少ない女性は、運動不足によりさらに体力が落ちる危険もあります。
最近は「フレイル」(英語のfraility:フレイルティ:虚弱という意味が語源)と呼ばれる虚弱状態の高齢者が増え、要支援・要介護者予備軍になっていることが指摘されています。体力が衰え、関節が固くなり筋肉量の落ちた高齢者は骨折などのケガをすると、より大きなダメージを受ける恐れがあります。そのような障害を事前に防ぐのもリハビリの役割です。体力や筋力の衰えた高齢者が適切な運動を行うことでケガの予防になりますし、体力がつくことで日常動作はもちろん、地域のイベントや友人との交流も行いやすくなります。
リハビリは後遺症や障害が起きたあとに受けるものではなく、障害やケガを予防するために積極的に利用するものでもあるのです。とくに体力の低下しやすい高齢者は体を動かすこと、運動することを生活のなかにどんどん取りいれるとよいでしょう。
介護施設で行われるリハビリとは?
介護施設でもリハビリが行われていますが、その実態は各施設によって差があるため、利用者自身の目で見極めるしかありません。
有料老人ホームの場合は「一般型」と「外部サービス利用型」の2種類の施設がありますが、一般型である介護付き有料老人ホームは定額サービスとなっており、介護保険で使えるサービスを入居している施設ですべて使いきる必要があります。そのようなルールがあるため、他の事業所が運営するデイサービスや訪問介護サービスを同時に利用することができません。入居している介護付き有料老人ホームが「あらかじめ設定したリハビリメニュー」を受けることになります。
介護付き有料老人ホームが提供するリハビリは各施設によって違いがあります。理学療法士が個別に週2回指導する本格的な施設もありますし、朝のラジオ体操やレクリエーションでの運動がリハビリがわりの施設もあります。機能訓練を多く受けたいのであれば、リハビリに特化した有料老人ホームを選択することが重要です。ではどうすればリハビリに特化した介護付き有料老人ホームを見つけることができるのでしょうか?
介護付き有料老人ホームの場合、職員の配置基準に「理学療法士や作業療法士を必ず配置せよ」という基準はありません。その前提で考えると、理学療法士や作業療法士が直接指導してくれる施設、立派な機能訓練室があり専用の運動器具が充実している施設は、リハビリにかなり力を入れていると判断できます。
多くの有料老人ホームでは、看護師や准看護師が機能訓練指導員として働いています。機能訓練指導員は利用者の歩行訓練や筋力アップのためのトレーニング、マッサージなどの機能回復のための運動を指導し、利用者に合った機能訓練計画書を作成する、レクリエーションを実施するなどさまざまな業務に従事しています。この機能訓練指導員は資格取得のための試験が存在しませんので、理学療法士や言語聴覚士、作業療法士はもちろん、看護師や准看護師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の資格があれば誰でもなれます。
外部サービス利用型の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅では、利用者が好きなように外部サービスを利用することができますので、通所リハビリ(デイケア)や訪問リハビリテーションなどのサービスを自由に組み合わせて利用しましょう。もしも本格的なリハビリが必要であれば、有料老人ホームよりもリハビリテーション病院や介護老人保健施設に入所する方が無難です。
有料老人ホームでのリハビリと、リハビリ専門病院のそれとは質が違うことも覚えていてください。リハビリ病院では失った機能回復のため、また残った機能を活用するために積極的に訓練を行いますが、介護付き有料老人ホームの場合は生活リハビリを中心に行い、機能を回復させるよりも機能を維持させることが主軸となっています。生活リハビリは、居室から食堂まで自力で歩行する、一人でトイレに行く、散歩をするなど日常生活で体を動かすことです。日常的な活動を積極的に行うことである程度身体機能の低下を防ぐことはできますが、本格的なリハビリはあまり期待できません。
高齢者のためのリハビリは主に4種類
高齢者のためのリハビリに対しては、主に4種類の資格をもった方が担当しています。それが「理学療法士(Physical Therapist:フィジカル・セラピストを略してPT)」「作業療法士(Occupational therapist:オキュペーショナル・セラピスト 略してOT)」「言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist:スピーチ・ランゲッジ・ヒーリング・セラピスト 略してST)」「視能訓練士(Orthoptist:オルソプティスト 略してORT)」です。
それぞれのスペシャリストやその種類についてご説明しましょう。
リハビリと言えばまずイメージできるのは「理学療法士(PT)」ではないでしょうか。理学療法士は、病気やケガによって体に障害が残ってしまった場合、生活の基本となる動作をスムーズに行えるように機能回復のためのサポートを行うスペシャリストのことです。日常的な動きの代表は「立つ・座る・歩く」ですが、これら日常動作を問題なく行えるように筋肉の強化、関節の可動域の拡大、痛みの軽減を歩行訓練や動作練習などの運動療法により改善させるのが理学療法士の役割です。温熱や電気刺激などの物理療法も加えて痛みを低減させ、スムーズに運動できるように支援します。さらに一歩踏みこんだ発想として、障害が発生することが予測できる方に対して「予防」の観点からリハビリを行うこともあります。障害を予防することも理学療法士の大事な仕事のひとつです。
「作業療法士(OT)」が支援する「作業」は着替えや入浴、トイレ、食事をとる、料理をつくる、洗濯をするなど自立した生活を送るための動作が含まれているのはもちろん、仕事や余暇を楽しむこと、地域との連携など、社会的なつながりをつくることもその範囲に入っています。作業療法士がサポートするのは「基本的動作能力」「応用的動作能力」「社会的適応能力」の3つです。応用的動作能力は食事やトイレ、入浴、家事など自立した生活をするために必要な能力のことですが、理学療法士の支援範囲とほぼ重なっています。理学療法士が「立つ・座る」などの基本的な機能をある程度回復させたのち、作業療法士が着替えや入浴、家事など日常生活で必要な動作をサポートします。作業療法士の支援は日常生活のための動作にとどまらず、最終的には利用者の社会復帰を目指します。日常動作だけではなく、社会復帰の道筋をつけるのが作業療法士の役割なのです。
「言語聴覚士(ST)」は「言語を話す」「言語を聞いて理解する」「会話をする」といった、言葉によるコミュニケーション能力をサポートする役割を負っています。言葉の問題だけではなく、摂食や嚥下に問題のある方の支援も行います。このような説明をすると「人間だれでも言葉を聞いて理解できるのだから、支援は必要ない」と考えてしまいますが、脳卒中や脳梗塞の後遺症で言葉が出てこなくなったり、認知症で認知機能が低下した結果、会話ができなくなることも少なくありません。なかには食べ物をうまく飲みこめなくなることも。嚥下障害は誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるため、高齢者にとっては命取りです。これら症状の程度を試験により見きわめ、医師の指導の元にトレーニング計画を作成するのも言語聴覚士の役割です。発声のための筋力トレーニングや、カードを使って言葉を思い出させる、言葉を引き出すトレーニング、実際に文章を読み発音する訓練、言語聴覚士の口を真似て発音する訓練など、さまざまなアプローチから言葉をつかってスムーズに日常生活が送れるように支援します。
最後の「視能訓練士(ORT)」は視力に特化したスペシャリストです。視能訓練士は、眼圧検査や視力・屈折検査などの各種眼科検査を正確に行い、データを収集して眼科医に提供するのが大きな役割です。また高齢になると、緑内障や白内障など加齢による目の病気や糖尿病の合併症による眼病により、視力が極端に衰えた方も少なくありません。眼病患者に残された視機能をできるだけ活用し、QOLを向上させるのも視能訓練士の仕事です。あまり広く知られていないスペシャリストですが、その活躍の場は病院だけではなく、乳幼児健診や学校健診、地域の集団検診、老人ホームなどにどんどん広がっています。