人工肛門・ストーマの対応が可能な施設特集
病院との連携が充実した施設ばかりです

人工肛門・ストーマを装着している人は、装具の交換や皮ふのケアを行う必要があるため、定期的な通院が不可欠。施設から離れたところへの通院は、高齢者の方にとって負担になるものなので、介護施設への入居を考える際には、医療機関との連携が充実しているところを選ぶのがベターです。そこでここでは、医療・看護ケアが充実している介護施設をご紹介。ケアの内容や、かかりつけ医へのアクセスなども鑑みて、理想の施設を見つけてくださいね。
ストーマ=すぐに要介護とはならない!?とはいえ、ストーマ受け入れ可能な施設は着々と増加
ストーマ(stoma)、人工肛門とは一体どのようなものでしょうか。大腸がんや腸閉塞、クローン病などの病気により消化管を切除した場合、状況によっては人工肛門を造設することがあります。人工肛門と聞くと人工的に作られた機械を取りつけるイメージですが、しくみはいたってシンプル。お腹の皮膚を切り、結腸や回腸をそのままお腹の外側に露出させているだけです。腸の内側の粘液は赤いため人工肛門自体も赤い色をしており、かなり痛そうに見えますし見た感じもインパクトがあります。ところがイメージとは違い、排泄時に強い痛みを感じるようなことはありません。
直腸には便を貯める機能、便意を感じる、または我慢する、排便するといった機能があります。ところが人工肛門には便を貯める機能はありませんので、患者の意思とは関係なく便が排出されることになります。そのため人工肛門にはストーマ用の装具、つまり便を受けとめるための装具をつける必要があります。ストーマ装具は直接皮膚に貼りつく(面板)と便を受けとめて貯めておく袋でできています。装具には防臭機能や防水機能が備わっているため、便や臭いが外に漏れる心配はありません。ストーマ装具の管理は基本的に患者自身でおこないます。
ストーマを造設した方の性別についてのデータがありますのでご覧ください。男性の平均年齢は71.5歳、女性は70.4歳となっています。男女ともに40歳未満~49歳までのストーマ造設者は少ないのですが、50歳を超えると徐々に増え、70歳~79歳がピークになります。
40歳未満(1.6%) | |
40~49歳(2.1%) | |
50~59歳(8.9%) | |
60~69歳(25.3%) | |
70~79歳(40.7%) | |
80歳以上(21.4%) |
「ストーマを造設すると、すぐに要介護認定されるのではないか?」と感じている方もいるようですが、実際はどうなのでしょうか。年齢別要介護認定の有無をみると、50歳未満では要介護認定を受けている方は0%、さらに50歳~59歳と年齢があがってもわずか6%となっています。60歳~69歳でも7.7%、もっとも造設者の多い年代である70歳~79歳でも要介護認定は14.8%とかなり低い割合です。80歳以上になっても31.7%なので、ストーマが即要介護とはならないことがわかります。
年齢別 | 認定を受けている | 受けていない | 無回答 |
---|---|---|---|
50歳未満 | 0.0 | 100.0 | 0.0 |
50~59歳 | 6.0 | 92.0 | 2.0 |
60~69歳 | 7.7 | 87.3 | 4.9 |
70~79歳 | 14.8 | 80.3 | 4.8 |
80歳以上 | 31.7 | 63.3 | 5.0 |
ストーマ造設者(オストメイト)が即要介護認定されるわけではない、ということがわかりましたが、もし要介護と判定され老人ホームに入所する場合は「ストーマ対応」の介護施設を選択しましょう。ストーマ装具の取り換えは利用者自身で行うことができますが、もしも認知症を発症したときは自身で管理することができなくなるため、医療体制のしっかりした老人ホームを選びましょう。実際にストーマ対応の老人ホームをチェックしてみましたが、介護士が24時間常駐し、看護師も日中、または24時間常駐の施設が多数ありました。医療ケアのととのった老人ホームなら安心です。ストーマケアは医療行為にあたりますので、医師や歯科医、保健師、助産師、看護師以外の者が行ってはならないという決まりがあります。無資格者がストーマの交換やケアを行うことはできません。ストーマケアは医療行為であることを考え、入居先をしっかり見極めましょう。
ストーマは一度造設すれば問題なく生活できるわけではなく、人によっては合併症が起きる可能性があります。合併症は大きく分けて手術直後に発生するもの(早期合併症)と、長く生活するうちに発生するもの(晩期合併症)とがあります。前者は粘膜皮膚接合部離解、浮腫、血流障害などが、そして後者には狭窄、傍ストーマヘルニア、静脈瘤などがあります。合併症を早く見つけるためにも、看護師や医師などの医療従事者が定期的にチェックしてくれる老人ホームを選びましょう。
ストーマの種類は主に3つ。その違いと特徴について
ストーマは人工的につくられた尿や便の排泄孔で、ストーマを持っている方は「オストメイト」と呼ばれています。「オストメイト」と書かれた公共トイレがありますが、ストーマ装具の洗浄や汚れた物を洗いやすいように専用の洗い場が設置されています。このストーマですが、造設する場所によって「コロストミー」「イレオストミー」「エンドストマ」の3種類に分類できます。では具体的にどのようなものかをご説明しましょう。
ストマの種類 | 特徴 |
---|---|
コロストミー | 結腸(大腸)に排便のための排泄孔を造設した場合はこのように呼びます。結腸・大腸ストーマとも言います。コロストミーを造設する場所としては上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸があり、大腸の場所によって排泄される便の形状に違いがあります。上行結腸につくられたストーマの場合、液状~泥状の便が排出されます。横行結腸の場合は泥状~軟便が、そして下行結腸、S状結腸の場合は軟便~固形の便が排出されます。大腸の上部では便が液状となり、肛門に近いほど固形便になります。 |
エンドストマ | 回腸(小腸)を体の外に露出させ、排泄させるものです。小腸から排出される便は液状で消化酵素が含まれているため、皮膚にとっては刺激があります。オストメイトの意思とは関係なく便が排出されるので「確実にこの時間は便を出さない」という時間をつくることはできません。便は皮膚に対する刺激が強いので、皮膚保護材に耐久性をもたせたものを選択します。 |
イレオストミー | 単孔式ストーマとも呼ばれています。単孔式なので排泄孔はひとつで、腸管をお腹の皮膚の外側に露出させて固定、そこから排泄させます。患者の状況にもよりますが、永久的な造設になるものです。永久的な造設になると身体障害者4級と認定され、さまざまな支援を受けることができます。一時的な造設の場合は身体障害者手帳の交付対象外となります。そのためストーマ装具にかかる費用が全額自己負担となるので注意しましょう。 |
これら3つの種類以外にも「ウロストミー」と呼ばれる人工膀胱をもつオストメイトの方もいます。これは何らかの病気で膀胱を切除してしまった場合に行われます。ウロストミーの場合もさまざまな尿の排出方法がありますが代表的なものは回腸を一部切り離し、そこに尿管を接合して尿を体外に排出させる「回腸導管」、そして尿道を直接体外に露出させる「尿管皮膚瘻」がおもな排出方法となります。さらに人工肛門と人工膀胱のふたつを造設されている場合を「ダブルストーマ」と呼びます。Wストーマの方は合併症が起きる可能性がより高くなりますので、医療体制のしっかりした老人ホームを選ぶ必要があります。
ストーマには手厚い福祉制度が。施設への入居前後にはぜひ相談を
オストメイトの方で永久造設の場合は「身体障害者4級」と認定され身体障害者手帳が交付されます。ただしダブルストーマの場合は3級となり、さらにほかの障害があれば1級の判定がおりる可能性もあります。詳しいことは各市町村の福祉事務所まで。一時的なストーマ造設の場合は身体障害者の認定はおりませんので注意が必要です。
ストーマの永久造設で身体障害者と認定された場合、ストーマ装具の給付、JR運賃、また国内飛行機運賃の割引、有料道路における障害者割引制度適用、タクシー料金、バス料金の割引、税金の減免、障害年金の受給など、手厚い福祉制度が利用できます。ストーマの永久造設を受けた方は、早めに障害者手帳の交付を申請しましょう。
オストメイトには手厚い福祉サービスが受けられますが、具体的にどれだけの費用がかかるのでしょうか?一か月にかかるストーマ装具費用、そして自己負担額をみてみましょう。一か月あたりのストーマ装具費用が発生していないと回答している方は全体の3.3%、残りの96.7%の方はストーマ装具費を支払っています。一番多い費用帯は5,000円~10,000円で34.9%、つぎに多いのが10,000円~15,000円の29.9%、つぎが5,000円未満の12.4%となっています。一か月に25,000円以上かかる方が3.9%、高額なストーマ装具が必要な方が一部にいるようです。
補装具費用(月) | 全体 | コロストミー | イレオストミー | ウロストミー | Wストーマ |
---|---|---|---|---|---|
全くかからない | 3.3 | 4.7 | 0.0 | 1.0 | 0.0 |
かかる | 96.7 | 95.3 | 100.0 | 99.0 | 100.0 |
5千円未満 | 12.4 | 15.1 | 4.8 | 8.0 | 6.7 |
5~10千円未満 | 34.9 | 40.8 | 35.7 | 21.0 | 13.3 |
10~15千円未満 | 29.9 | 26.4 | 31.0 | 48.0 | 0.0 |
15~20千円未満 | 8.3 | 5.4 | 11.9 | 10.0 | 20.0 |
20~25千円未満 | 7.3 | 6.0 | 14.3 | 7.0 | 26.7 |
25千円以上 | 3.9 | 1.7 | 2.4 | 5.0 | 33.3 |
ストーマ装具費補助のため自治体からは一定の補助金が給付されており、給付額も決まっています。人工肛門の場合は8,600円、人工膀胱の場合は一か月に11,300円ですが、この給付金だけで間に合っていると回答している方は全体の27.3%、残りの72.7%の方は足りないと答えています。足りない方のうちもっとも多いのが、2,000円未満の19.9%、つぎが2,000~3,000円未満の14.4%、そして4,000~6,000円未満の9.3%となっています。平均不足額は3,238円で、自治体からの給付金が十分ではないことがわかります。
ストーマ装具給付券不足額(月) | 全体 | コロストミー | イレオストミー | ウロストミー | Wストーマ |
---|---|---|---|---|---|
間に合っている | 27.3 | 28.5 | 17.9 | 24.7 | 41.2 |
間に合っていない | 72.7 | 71.5 | 82.1 | 75.3 | 58.8 |
2千円未満 | 19.9 | 22.7 | 17.9 | 18.0 | 11.8 |
2~3千円未満 | 14.4 | 13.3 | 15.4 | 18.0 | 5.9 |
3~4千円未満 | 8.6 | 8.6 | 15.4 | 7.9 | 0.0 |
4~6千円未満 | 9.3 | 9.4 | 0.0 | 12.4 | 11.8 |
6~8千円未満 | 5.3 | 5.1 | 5.1 | 6.7 | 0.0 |
8~10千円未満 | 5.3 | 4.3 | 10.3 | 5.6 | 0.0 |
10~15千円未満 | 5.7 | 5.5 | 10.3 | 4.5 | 0.0 |
15千円以上 | 4.3 | 2.7 | 7.7 | 2.2 | 29.4 |
平均不足費用月額(円) | 3,238 | 3,104 | 3,998 | 2,557 | 10,616 |
ただ、オストメイトは身体障害者として認定されるため、手厚い福祉サービスを利用することができますし、障害者控除や医療費控除が受けられるため確定申告では税金が還付される可能性もあります。また地方に行くと自家用車は必需品。一定の条件を満たせば自動車税・自動車取得税・軽自動車税・軽自動車取得税が減免されます。
さらに大きいのは、障害年金です。ダブルストーマの場合、またストーマ造設に加えて障害がある場合、国民年金に加入していれば障害基礎年金1級、ないしは2級が受給できます。さらに厚生年金に加入していれば障害厚生年金1級~3級が受給できます。共済年金に加入していれば障害共済年金1級~3級が受給可能です。年金の加入期間や掛け金によっては、まとまった金額を受給できることもあります。オストメイトの方は自治体の福祉事務所で福祉サービスや障害者手帳の交付、障害年金の申請などについて説明を受けましょう。
介護施設に入居の予定がある方は、施設の入居前にも相談が可能です。入居を予定している老人ホームで、入居後のストーマケアの内容や施設で利用できる福祉サービスなどをあらかじめ相談しておくと安心です。