人工透析患者の対応が可能な施設特集
透析病院との連携や、食生活への配慮も万全

人工透析が必要な方は、当然ですが定期的な通院が必要です。医療機関の送迎サービスや介護タクシーを利用するのが一般的ですが、例えば自分で着替えができない人などは、施設スタッフによる付き添いも必要に。また、塩分や水分などに万全の注意を払った食事を提供してもらえるなど、人工透析が必要な方の対応に優れた施設をご紹介しています。入居を考える際には施設で行われているサービスに細心の注意を払う必要があります。かかりつけの病院は近くにあるか、緊急時に対応してくれる病院はあるかといったことも含めて考えると良いでしょう。
人工透析患者が増え続ける今、老人ホームでの医療ケアが重要に
人間の体のなかには、つねに老廃物がうまれています。不要になったものを体外に排出できなければ、尿毒症とよばれる状態に。体が疲れやすくなり食欲も減退、息苦しさを感じやすくなり貧血気味になることも。体にはむくみが生じ、とくに足首や手先、顔などがパンパンにふくらみます。腎臓の機能が低下すると体のなかの水分が排出されにくくなり、体がむくんだ状態になるのです。私たちが尿毒症と呼ばれる状態におちいらずに健康に暮らせるのは、24時間365日つねに腎臓が動いているからです。
ところが、なんらかの理由で腎臓の病気になると、体のなかに余分な老廃物や水分がたまり上記のような症状がではじめます。腎臓の機能が10%以下になると「人工透析」をおこない、体の中から不必要な成分をとり除きます。人工透析は週3回前後のペースで一日に4~5時間、ベッドに横になった状態でうけることになります。ベッドのうえでは食事をとったり新聞や雑誌を読む、テレビを見ることはできますが、行動は極端に制限されます。
人工透析の患者数はどのように推移しているのでしょうか。施設調査による集計では、集計がはじまった1968年、人工透析の患者は全国に218名でした。ところが1975年には1万3,059名と7年足らずで1万人を突破。1990年には10万3,296名と10万人を突破。さらに2000年には20万6,134名と20万名を、そして2011年には30万4,856名と30万人を突破しています。2013年の統計では、全国に人工透析の患者は31万4,180名で、今後も患者数は右肩上がりの上昇をみせることは想像にかたくありません。
この人工透析は医療行為となり、専門の医療機器がそろったクリニックや病院でなければ対応することができないもの。老人ホームに入所しても人工透析が必要な場合、外部の医療機関を受診するための付き添いや送迎が不可欠です。人工透析患者の受け入れ可能な老人ホームがかぎられてしまうのは、医療機関との連携や本人の健康管理、医療機関への送迎、付き添いの問題から。
みんなの介護に掲載されている9,000施設のうち、人工透析に対応している老人ホームは約3,649か所。医療危険との連携がとれ、日中看護師が待機、または訪問看護対応、そして介護士が24時間常駐し急変時への対応がしっかりととのっている施設がほとんどです。
人工透析とは?
人間は必ず排泄をおこないます。尿はその成分のほとんどが水分ですが、なかにはたんぱく質の代謝による生じた尿素、そのほか塩素やナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニア、尿酸などがふくまれています。人間が1日に排出する尿は500ml~2,000mlとも言われており、尿のもとになっているものは血液です。
尿をつくる臓器といえば腎臓ですが、この腎臓には大量の血液が送りこまれ、原尿をつくりだしています。原尿は腎臓内でろ過され、最終的に尿として排出されます。不要物を排出する腎臓は人間の生命活動になくてはならない大事なもの。ところがその腎臓の機能にトラブルが起きることも。
腎臓の病気として最近増えているのが「糖尿病性腎症」です。人工透析患者数が30万人を突破していますが、そのうち約38%の患者が「糖尿病性腎症」であると言われています。糖尿病の患者は腎臓病にならないよう日々の生活に十分注意しなければなりません。そのほかにも、急性の腎不全や慢性の腎不全で人工透析を受ける方もいます。とくに慢性腎臓病は病がゆっくり進行しており、気がついたらかなり症状が進行していて結果的に人工透析を受ける以外に方法がない、ということも。腎臓の機能が10%以下になったときに人工透析を導入することになります。
では、人工透析とはいったいどのようなものなのでしょうか。広くおこなわれている方法は「血液透析」です。血液透析器(ダイアライザー)と呼ばれる医療機器を利用するもので、利き腕ではない腕に静脈と動脈をつなぎあわせたシャントをつくり、そこに針を刺して患者の血液をダイアライザーに通します。ダイアライザーで不要な老廃物や水分を濾しとり、きれいになった血液をふたたび患者の体内にもどすのが血液透析の流れとなります。
血液透析以外にも「腹膜透析」と呼ばれる方法もあります。患者のお腹のなかに透析液を入れ、患者の体内で血液を浄化する方法です。透析液の出し入れのためのカテーテルを挿入する手術が必要となります。ほかにも「オンラインHDF(血液濾過透析)」と呼ばれる方法もありますが、設備の維持や水質管理にコストがかかるため、実施している医療機関は少なめです。
尿がほとんどでない無尿の状態であっても、人工透析により30年、40年と元気に生活している方もいます。人工透析をおこなっていても食事の内容を見直し、適度な運動やストレスをためない生活などで健康を維持することは可能です。人工透析を導入したからといって悲観する必要はありません。
人工透析患者の老人ホームにおける受け入れについて
人工透析患者が老人ホームに入所する場合、一番問題になるのが「クリニックや病院への送迎・付き添い」です。人工透析は週3回前後(初期のころは週2回)必要ですので、そのたびに介護施設側が送迎をするとなると大きな負担です。また、クリニック内での付き添いをするとなると、半日以上も職員がかかりにきりになり、ただでさえ人手不足で忙しい老人ホーム側が難色を示すことも。
調査をしてみると、人工透析患者を受け入れている老人ホームのなかには「クリニックへの送迎はクリニックが責任をもっておこなう、または送迎は介護タクシーを利用する」「透析中の付き添いは不要」「クリニックと老人ホームつねに連絡がとれ、連携できる」といった条件が整わなければむずかしいようです。送迎に関しては「行きは老人ホーム、帰りはクリニック側でおこなう」施設もあります。有料老人ホームの場合、クリニックや病院まで送り迎えをしてくれることもありますが、有料になります。一か月に数万円かかることもありますので、費用については事前の話し合いが必要です。
そのほか、日常生活で管理が必要なものに食事と水分量があります。人工透析患者の場合、減塩はもちろん摂取する水分量やカリウム、タンパク質の調整など専門的な知識が必要なため、腎臓病食が提供できない施設では受け入れできないケースも。入浴時もシャント部分を強くこすると血管が損傷する可能性もあるため、医師や看護師から注意事項をかならず聞き、禁忌とされることは絶対におこなわないように細心の注意をはらわなければなりません。
なかには前触れなく急に容体が悪くなるケースもあるため、急変時にクリニック側(主治医)がどこまで対応してくれるのかどうかも、事前に確認しておかなければなりません。さまざまな条件がクリアされることで、老人ホームへの入居が可能になります。
人工透析が必要な方の受入割合は?
有料老人ホームでの人工透析患者の受入割合は、どの程度なのでしょうか?調査によると、人工透析患者の受け入れ可能施設は約33%、約3施設に対し1施設が受け入れ可能という状況になっています。受け入れ割合は低めです。
患者が人工透析を受けるためには、医療機関を週3回前後かならず受診しなければなりません。送迎や付き添いの問題がありますし、患者の栄養管理、水分管理、体調管理のために、介護スタッフにも専門的な知識が必要です。
人工透析患者の受け入れが可能な老人ホームは少なめであることを理解し、根気づよく施設探しをする必要があります。
生活保護受給者でも入れる施設特集

生活保護を受けている人でも入居できる介護施設はあり、介護付有料老人ホームなども、最近は生活保護者を受け入れる所が増えてきした。
「入居できても利用料が払えないのでは?」と心配する人もいると思いますが、入居後も住宅扶助や生活扶助などの保護費が受けられるので、施設の月額利用料が保護費や年金収入内で収まれば、毎月の支払いも可能です。
さらに、自治体や介護施設によっては減額措置をとってくれる所もあります。そういった情報は生活保護担当のケースワーカーや地域包括支援センターのケアマネージャーが持っていることが多いので、入居の相談をしてみると良いでしょう。
費用負担の上限額はどのくらいか
費用の上限金額はその人の収入などによって違うため、一概には言えません。生活保護者が介護施設に入居する場合は、住宅扶助などの保護費と、年金収入で費用をまかないます。
毎月もらえる年金額も人によって違いますので、生活保護を受けている人は、市町村の生活保護担当者やケースワーカーなどに自分の費用上限額を計算してもらうと良いでしょう。
生活保護を受けている人は介護保険サービスの利用料が免除されますので、実際に負担する費用は安く抑えられることが多いようです。
年金受給額と老後の費用
年金の受給額は平均どのくらい?
定年退職後の年金受給額は、厚生年金や国民年金を納付した額によって決まります。2016年の厚生労働省の調査によると、大学卒業後すぐに就職してから60歳の退職まで厚生年金を納付し続けた人の場合、年金の平均受給額は、国民年金が毎月5万5,000円ほど、厚生年金が毎月14万5,000円ほど。すなわち毎月20万円ほど年金をもらえる計算です。
しかしこれは一般的な金額であり、もらえる年金は納付していた年数にもより、ずっと自営業を営んでいた人は国民年金のみの給付となります。さらに、障害年金をもらっている人は国民年金を受給できませんので、人によって毎月の年金受給額には差が発生します。区役所の年金課などに行けば概算をしてもらえますので、自分の受給額を教えてもらうと良いでしょう。
老後にはどのくらいのお金が必要か

総務省の資料によると、老後に必要なお金は退職前の生活費の7割ほどとなるようです。例えば月20万使っていた人は、退職後は14万円ほどで生活している人が多い、という統計が出ているのです。
すなわち、年収500万円もらっていた人が60歳で定年退職し、90歳まで生きた場合、500万円×0.7=350万円が1年間の費用となります。月に換算すると、毎月約29万2,000円。一概には言えませんが、毎月の年金額は20万円程度ですので、年金だけではやや現実的とは言えなさそうです。
年金と老人ホーム入居
価格が安い老人ホームは競争が激しい
一般的な有料老人ホームの月額利用料は6万円~20万円程度。厚生年金をしっかりと納付した人なら年金を20万円程度もらえますので、何とか支払える金額ですが、国民年金のみ受給している人は厳しいでしょう。
今の日本では、厚生年金をあまりもらえていない人、国民年金だけの人が多いという現状。さらに、もらえる額も徐々に下がっており、年金だけで老人ホームに入居するのは難しいのも事実です。そのため、ケアハウスのような低価格の施設の競争率がますます激しくなっています。
年金のみでの老人ホーム利用は可能?
年金だけでは厳しいといっても、退職後に年金以外の収入がある人はあまりいないでしょう。年金だけで老人ホームに入居するためには、ケアハウス(軽費老人ホーム)のような格安の施設を選ぶか、生活保護を利用します。生活保護が適用されると月額利用料の中の家賃や介護保険サービス代などが控除されますので、老人ホームでの生活も現実的となります。
一方で、おむつ代などの日用品の費用や、病気の際の病院代などは別途かかるため、年金の収入のみで老人ホームへの入居を考えている人は、しっかりと必要な費用額を計算した上で入居を考える必要がありそうです。
生活保護受給者が老人ホームを探すときに注意するポイント

生活保護の受給金額は、市区町村の家賃相場や物価、世帯人数や収入などによって変わるため、一人ひとり違います。そのため、あくまで一般的な話になりますが、一人暮らしの方の場合、家賃扶助と生活扶助を合わせると、月額は概ね8万2,000円~12万9,000円程度。
特に市町村によって生活保護の扶助額の上限が違いますので、お住まいの場所と違う市町村で老人ホームを探す場合は、上限などを確認しておきましょう。万が一、老人ホームの入居を決めた後にもらえる保護金の限度額が違っていたら、入居を断念せざるを得ないといったケースも存在するようです。
一般的には都心部の方が毎月の費用は高く、郊外や山間部の老人ホームの方が格安な場合が多いです。生活保護受給者が入居できそうな老人ホームを探す場合、都心から離れたエリアで探した方が、入居先が見つかる可能性が高まります。
最近はホームページなどに「生活保護OK」と明記している老人ホームも増えました。書いていない場合も、地域包括支援センターのケアマネージャーに相談することは一考でしょう。