自然の緑に恵まれた地。介護施設でものんびりと過ごせそう

ひと昔前から奈良県は、大阪府や京都府のベッドタウンとしての機能を担っており、人口の約8分の1が県外で通勤・通学しているというデータもあるほど。
大都市の労働力を支えてきたわけですが、団塊の世代が多いために高齢化の波は避けられない、けれども老人ホームの数は追いついてこない、というのが現状です。
特に南部の町村では、現状で高齢化率が35%を超えているにも関わらず、老人ホームの数が絶対的に少ないという問題を抱えています。
当然、入居待ちをしている高齢者も数多く、施設の新たな開設が望まれています。
費用面では、大阪や神戸など関西の大都市と比べると低額で利用できる老人ホームが数多くあります。
この背景には、奈良県の高齢者福祉対策の一環として「軽費老人ホーム運営費助成事業」があり、利用者から徴収すべき利用料の一部が助成されていることによって、利用者負担が軽減されているからという理由もあるでしょう。
一方で、入居一時金が1,000万円以上(中には夫婦で4,000万円以上のところも!)、月額利用料が20万円前後と高額な老人ホームもあります。
そうしたところでは、当然ですがサービスが充実しています。
認知症患者の受け入れはもちろん、その他の医療・看護体制も非常に充実しており、この上ない安心を得ることができます。
予算に応じて幅広い選択肢があるのは嬉しいですね。
奈良県にはもともと、大らかな人柄が多いのが特徴です。
これは、四方を山で囲まれているために都市圏の雑音がシャットアウトされているという土地柄も関係しているかもしれません。
事実、アルコール消費量やパチンコ店の数が47都道府県中最下位というデータもあります。
海はないものの県全域にわたって自然の緑が多く、高齢者にとって住みやすい環境は整っていると言えるでしょう。
大阪や京都、兵庫などの都市圏に住んでいる人も、老後は奈良で…というのも一案と言えるでしょう。
高齢者人口は2035年には約43万人以上に増加する見込み
奈良県の総人口は、2000年に144万2,795人、2005年に142万1,310人、2010年に140万728人、2023年には132万5,385人と全体的に緩やかな減少傾向を見せています。
その一方で高齢者人口は年々大幅に増加し続けており、2000年に23万9,432人を記録した後は、15年後の2015年に38万9,600人、2023年には42万2,001人と23年で18万人以上も増加しました。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
高齢者人口の中でも、特に増加が著しいのは後期高齢者(75歳以上)人口。
2000年では9万7,780人でしたが、2020年には21万6,146人と増え続けています。
県が発表している将来の予測値によると、今後の高齢者人口は2030年で42万8,951人、2035年で43万1,875人と高齢者の大幅な増加傾向は暫く続くと見られています。
後期高齢者人口については2030年に26万3,328人を記録するまで毎年増え続けていきますが、その後減少に転じ、2035年には25万4,426人になると予想されています。
高齢化率の推移を見ると、2000年時点で16.6%、2005年で19.9%、2010年で23.8%、2023年で31.8%と毎年上昇。2040年には40%を超える見込みです。
総人口の減少傾向が続いている中で高齢者人口は増加もしくは横ばいの状況となるため、将来的にも高齢化率は上がっていくものと見られています。
全国平均と比較すると、2000年代前半までは奈良県の方が低い値で推移していましたが、その後逆転。
2010年以降は全国平均よりも1.0~1.5ポイントほど高い値で推移しています。
介護サービス利用者は2024年には約7万人以上に
奈良県の介護保険サービス利用者数は、2006年度では3万8,744人、2009年度では4万3,834人、2024年には7万2,091人と年々増えています。

居宅サービスと施設サービスそれぞれの利用者数の推移を見ると、居宅サービス利用者数は2006年度で3万227人、2009年度で3万4,703人、2013年度で4万3,557人、2024年度5万1,092人、施設サービス利用者数は2006年度で8,517人、2009年度で9,131人、2013年度で1万299人、2023年度で1万2,186人となっています。
施設サービス利用者数は伸び率こそ低いですが毎年増加傾向が続いており、行政による施設の整備、増床が進んでいることをうかがわせます。
介護保険サービス利用者数が増え続けている背景には、要介護認定者数の増加があります。
2006年度の要介護認定者数は4万9,407人でしたが、2009年度には5万3,425人、2013年度には6万5,442人、2024年には8万2,787人と増え続けています。
介護保険サービスの利用者増と共に、介護給付費も年々増加。
2006年度は約620億円、2009年度は約726億円、2013年度は約912億円と推移し、高齢者一人当たりの介護給付費は、2006年度で20万6,365円、2009年度で21万9,504円、2013年度で24万4,546円、2019年度には26万3,803円でした。
介護給付費は、介護保険制度が始まった2000年度当時の額よりも年々増加しています。
「地域づくりによる介護予防」には1,000名以上の高齢者が参加
奈良県では、地域包括ケアの体制作りが進められるなか、高齢者が地域社会との交流を通じて介護予防に取り組むことに対して特に力が入れられています。
その代表例が、県内の各市町村の中に、地域の高齢者が日常的に通える「通いの場」を地域住民に作ってもらうという施策です。

この「地域づくりによる介護予防」施策は、2015年度から2016年度にかけて県内10のモデル市町村でまず実施され、計1,000名以上の高齢者が参加するに至っています。
通いの場は地域・近所の高齢者が集まる場所となるので、肩肘張らずに気軽に参加できるのが大きな魅力。
モデル市町村内だけでも住民が中心となって56ヵ所の「通いの場」が設置されています。
通い場の場所としては、公民館など公共の施設が使われることもあれば、参加者の自宅を開放して設定されることもあるようです。
それら各地の通い場に高齢者が集まり、奈良県が推進する介護予防体操「いきいき百歳体操」等が取り組まれています。
ただ、体操そのものによる運動器の向上効果もさることながら、高齢者が集まれる場を近所に確保することで、閉じこもりの予防、社会からの孤立予防等の効果が期待されています。
この地域づくりによる介護予防は、既にモデル市町村以外の自治体でも取り組まれるよういなり、現在では合計18市町村、合計125ヵ所の通いの場が設置されています。
これまでの介護保険サービス・自治体主導の介護予防のあり方とは違う地域主導・住民主導の介護予防が、奈良県では着々と進められているのです。
高齢者が安心して暮らせる「まちづくり」に向け地域包括ケアを推進
奈良県では、2025年問題(団塊の世代が要介護者の多い75歳以上になる年)に備えて、地域に住む高齢者に対して在宅医療、在宅介護、生活支援・介護予防、住まい等のサービスを包括的に提供する「地域包括ケアシステム」作りが進められています。
在宅医療面において重要な役割を果たすのは在宅療養支援病院やかかりつけ医のいる地域の診療所。
これらの機関が、入院医療の分野(急性期病院)、介護保険の分野(ケアマネージャー、訪問看護サービス等)と緻密な連携を図るための体制づくり(ICTの活用、医師・看護職員の増員等)が進められています。

在宅介護面では、在宅医療との連携に加えて地域密着型サービスの拡充が図られ、訪問・通所・短期入所のサービスを一手に行える「小規模多機能型居宅介護」、24時間体制で介護・看護サービスを提供する「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」等の事業所の増設を進めています。
また要介護者だけでなく、在宅で介護をしている介護者の側を支える体制作りも行われています。
生活支援・介護予防面では、サービス提供者の多様化が進められ、介護保険サービスや自治体が提供するサービスに加えて、ボランティア、NPO、地域住民の自主グループ、民間事業者等と公的機関が連携し、高齢者の暮らしを支える取り組みが進められています。
特に生活支援コーディネーターやボランティア等の人材を育成することに力が注がれています。
住まいという点では、高齢者向けの賃貸住宅、老人ホームの増設・増床が進められています。
また高齢者が安心して暮らせる「まちづくり」への取り組みも行われ、災害対策も含めさまざまな施策が行われています。
奈良県の運営適正化委員会とは?
奈良県では、福祉サービスを利用した際の不満、苦情の相談先として「奈良県運営適正化委員会」を設けています。
福祉サービスを提供する各事業者にも苦情相談の窓口が設置されており、その段階で問題が解決されることも多い一方でそれら事業者側の相談機関との話し合いによっても解決しない場合があります。
あるいは直接事業者側に相談するのは気が引けるというケースも想定でき、そうした際には県レベルの機関である運営適正化委員会が相談先となります。

奈良県運営適正化委員会は、福祉サービス利用者からの苦情相談を受けると、速やかに実態の把握のための事情調査を行い、解決方法の提案を通してのあっせん等を行います。
もし事業者に虐待や法令違反などが見られる場合は、すぐに奈良県へと通知され、然るべき行政措置が執行されることになります。
運営適正化委員会への利用者からの相談内容は多岐に渡りますが、典型例としては「ホームヘルパーが時間通りに来ない」、「トイレ・入浴は同姓介助をお願いしたい」、「介護施設の職員の言葉遣いが良くない」、「苦情を申し出たのに改善しようとせず、何の説明もない」等が挙げられます。
運営適正化委員会の相談窓口は、奈良県社会福祉総合センター内の事務局にあります。
福祉サービスを利用している本人またはその家族・代理人が相談を行うことができ、相談は電話、手紙、FAX、メール、来所(事前予約が必要)にて行っています。
相談時間は月曜日から金曜日までの午前9時から午後5時までです。