終身利用可の施設特集
終身利用可の有料老人ホームなら入居後追加の一時金の支払いは不要

有料老人ホームには、「終身利用可」とされている施設があります。これは、入居時に支払う初期費用の中に「終身にわたって居室や共用スペース、各種サービスを利用する権利」、つまり終身利用権を購入する費用が含まれているということになります。最近では、終身利用権が付与された高額な入居一時金をなくし、高齢者が気軽に入居できるように入居一時金を安く設定したり、そもそも入居一時金をなくしたりする有料老人ホームも増えてきました。所有権ではないため譲渡や転売、相続などはできませんが、長く安心して住み続けることができます。
入居一時金が安めの老人ホームへの入居検討を
有料老人ホームを探す時、亡くなるその時まで安心して入居できるホームがいいと思う人はたくさんいるでしょう。「終身利用可」の老人ホームを探すと満足いくホーム探しになります。でも、「終身利用可」というのは具体的にはどのようなことなのでしょうか。
「終身利用可」とは、亡くなるまで居室・共有スペース・各種サービスを利用できるという意味です。多くの老人ホームは、入居するときに入居一時金を払う仕組みになっていますが、終身利用可の老人ホームでは入居一時金に終身利用権を購入する費用が含まれています。つまり、入居後追加で一時金を支払う必要はなく、月額の費用を払うことで終身に渡り老人ホームで暮らすことができるのです。
最近では、入居一時金を払わなくてもいい、また入居一時金が安い老人ホームも出てきています。終身利用可でありながら入居一時金の負担が少ない老人ホームを選ぶのもひとつの手だと言えます。また、入居一時金が安くても月額費用が高い場合もありますので、注意が必要です。入居一時金や月額費用は、利用者の経済状況によっても支払える金額が異なりますので、無理のないプランかどうか調べておくのがよいでしょう。
終身利用権は、所有権とは違います。つまり、譲渡・転売・相続などはできないのです。しかし、終身利用可の老人ホームは生涯に渡って安心して住めるということに間違いないでしょう。また、後に述べるように終身利用可でも退去しなくてはならない場合もあるので、しっかり確認しておきましょう。持ち家を売ったお金で入居金を作り、終身利用可の施設を終の棲家として契約する人もいます。その意味でも有料老人ホームに対する期待というのは高いと言えます。後で後悔しないように、契約内容はしっかりと把握しておきたいものです。
終身契約でも終身入居を確約するものじゃない!?
老人ホームの契約には、終身契約と一定期間の契約があります。終身契約は、亡くなるまで退去しなくてもよい契約で、一定期間の契約は一年や二年ごとに契約をし直す契約です。そうすると、終身契約はどんな場合でも看取りまで行ってくれるかのようですが、違う場合があります。終身利用可の老人ホームに終身契約をして入居しても、退去しなくてはならないケースがあるのです。退去の条件は老人ホームによって違いますので、よく確認することが必要です。退去の理由で多いのが病気になった時と迷惑行為がある場合でしょう。具体的に説明します。
まず、医療面で昼夜を問わないサポートが必要になった時があげられます。例えば、点滴や痰吸引などを夜間も行う必要がある場合です。老人ホームには看護師が常駐しているところもありますが、その多くは24時間常駐ではなく日中常駐です。したがって看護師がいない夜間にも医療行為が必要な場合、退去せざるを得ないという場合があるのです。
次に、認知症や精神疾患によって他の入居者に迷惑行為を行ってしまう場合です。暴言や暴力、そして夜間に大声を出すなど、共同生活ができないと判断されると退去しなくてはならない施設が多いです。これらのことがあれば終身契約をしていても退去理由になる場合があるでしょう。
また、入院が長引く場合、特別養護老人ホームなどは退去しなくてはならなくなる可能性が高いですが、民間の有料老人ホームの場合は月額費用を払えば退去はしなくてもよい場合が多いです。
また、入居時に嘘の申告をしていた場合も退去理由になります。例えば、認知症で徘徊が多いのにその旨申告をしていなかったとすると、発覚した場合退去を迫られます。終身契約で一生涯安心して老後を暮らしたい場合は、その施設の退去条件をよく調べておくのが得策だと言えるでしょう。
利用権方式と賃貸借方式。契約方式の違いは?
老人ホームの契約にはいくつか種類があります。利用権方式と賃貸借方式、そして終身建物賃貸借方式です。ひとつずつ説明していきましょう。
利用権方式とは、多くの有料老人ホームが採用している方式です。この方式がとられている場合、入居時にまとまったお金を払うことで、多くは終身に渡って居室や共有スペースを利用できます。また、介護費用や生活支援等のサービス料も一緒になっているという点が特徴です。終身利用可の老人ホームがこの方式をとっている場合、一生涯その老人ホームで暮らせますが、購入しているのはあくまで利用権なので、相続・譲渡・転売などはできません。
賃貸借方式は、一般的な賃貸マンションや賃貸アパートのように、月々家賃や管理費を支払う方式です。こちらは介護や生活支援等のサービス利用料は居住費用とは別になっている場合が多いです。借地借家法によって守られており、入院が長期に渡ったり介護度が高くなったりしても退去を迫られることはありません。
終身建物賃貸借方式は、賃貸借方式のうち特約で死亡により契約終了となるものです。「高齢者の住居の安定確保に関する法律」と借地借家法によって守られています。「高齢者の住居の安定確保に関する法律」に基づき「終身建物賃貸借業」との認可が下りたら名乗ることができます。こちらも相続・譲渡・転売などはできませんが、夫婦のどちらかが死亡した場合には生きている方が住み続けられるという特色があります。自治体の厳しい検査に合格しなくてはこの方式では運用できないので、とても少ないのが実情です。
どの方式でも、終身に渡って利用したい場合は必ず退去条件などを確認しておくことが必要です。前に述べたように、終身利用権を購入しても退去しなくてはならない場合が多々あります。資料請求・施設訪問などを通して調べておくのがよいでしょう。
利用権方式 | 賃貸借方式 | 終身建物賃貸借方式 | |
---|---|---|---|
概要 | 入居時に入居一時金を支払い、終身利用権を得る契約方式。 所有権ではないため相続にはならない |
一般の賃貸住宅同様に月々の家賃・管理費を支払う契約方式 | 賃貸借契約の内容であることに加え、契約終了が契約者の死亡によるもの |
契約でカバーされるもの | 居住部分、介護・生活支援等のサービス | 居住部分と介護等のサービスは別契約 | 居住部分と介護等のサービスは別契約 |
特徴 | 入居時にまとまったお金が必要な場合が多い。 終身利用が可能。 月々の利用料が抑えられる |
入居時に必要なのは敷金・保証金等のみなので初期費用が抑えられる | 終身住み続けることができる 夫婦の場合は契約者が死亡しても配偶者が引き続き住む権利がある |
根拠法 | なし | 借地借家法 | 借地借家法 高齢者の住居の安定確保に関する法律 |
もしも「退居」となっても、クーリングオフ制度が強い味方に!
老人ホームの費用は様々ですが、高額な入居金を支払う場合が多いです。私たち消費者にとって大きな買い物になる場合もあるので、有料老人ホームにもクーリングオフ制度が適用されています。
もしも有料老人ホームに入ってから「退居」となった場合でも、90日以内であればクーリングオフ制度が味方になってくれるのです。クーリングオフ制度とは、契約解除や申し込み撤回を無条件で行える制度です。ただし、支払った高額な入居一時金が全て戻ってくるかどうかは都道府県によっても違います。入居時にしっかりと確認しておくのがよいでしょう。
また、クーリングオフ制度が適用になるかどうか、それ自体も下調べしておく必要があります。老人ホームの入居金は高額な場合が多いので、契約してしまってから「しまった」とならないようにしたいものです。
そのほか、有料老人ホームの契約に関して注意したいのが、保全措置があるかどうかです。有料老人ホームは民間の会社が運営しているので、倒産しないとも限りません。その場合に、500万円を上限に前払い金を保全しているホームもあるのです。これがあるのとないのでは安心感が大分違いますので、しっかり確認しておくことが必要です。保全措置がとられる老人ホームは平成18年4月以降に設置届けを出したホームです。それ以前のホームでは保全措置をとることは努力目標であり必須ではないので、注意が必要です。
「終の棲家」を期待し、持ち家を売却してから老人ホームに入る場合もあります。そういう場合も含め、老人ホームの倒産により新たな施設を探さなくてはならなくなる場合は困難を極めることでしょう。そのための保全措置なので、まずは保全措置があるかどうか、金額はどのくらいかなどを確認することが必要です。また、倒産によるリスクを避けるために、経営状態が悪い老人ホームへの入居は避けるなどの対策が必要です。
前頭側頭型認知症・ピック病でも入居可能な施設特集
前頭側頭型認知症・ピック症患者が入所できる介護施設は貴重な存在

ピック症(前頭側頭型認知症)は、大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで引き起こされる病気です。性格が変化し、同じことを繰り返すなどの行動障害や反社会的な行動をとるが症状としての特徴で、病気をなかなか周囲に理解してもらえないという悩みを持つ患者も少なくありません。介護保険対象での施設入所も可能ですが、徘徊や年齢の若さからくる介護の難しさなどから受入れ拒否をする施設も多く、入所できる介護施設は貴重な存在と言えます。
前頭側頭型認知症の方の老人ホーム選びは?
前頭側頭型認知症(ピック病)は、脳に特殊なたんぱく質が蓄積することにより脳の前頭部と側頭部が委縮し(縮んで小さくなり)発症する病気です。前頭側頭型認知症は50~60代と比較的若い方に多くみられる傾向があります。65歳未満で発症する若年性認知症のなかでも、アルツハイマー型認知症のつぎに多いと言われています。2015年に厚生労働省により指定難病となっています。
前頭側頭型認知症では、前頭葉と側頭葉が委縮していきますが、両方とも同時に発症するのではなく「前頭葉が先に委縮し、つぎに側頭葉が縮んでいく」または逆のケースも。ただし病気の症状がすすむと、結果的に両方とも委縮してしまいます。
前頭葉は人の感情や創造性、意欲、自発性をコントロールし、側頭葉は言語の理解や形態の認知などの役割があります。もしも前頭葉にダメージがおよぶと「一旦停止や赤信号を無視する」「スーパーやコンビニにある商品を万引きする」「毎日外にでて決まったコースを歩き回る」「急に人格が変わったように見える」などの症状があらわれます。側頭部がダメージを受けると「言葉を聞いても意味がわからない」「自分の話しはできるが、相手の話しが理解できない」「友人や知人の顔をみても誰なのかわからない」といった症状がみられます。
ここで紹介したような症状だけではなく、同じような行動を延々と繰りかえす、顔から感情が消えて気難しい表情になる、急に暴力や暴言に走る、集中力がなくなるなどの行動も。記憶力は比較的保たれているため、家族でも「認知症である」という認識がもちづらく「うつ病」や「統合失調症」を発症したのではないかと疑ってしまい、それが前頭側頭型認知症の発見と診断、治療を遅らせることになってしまいます。
前頭側頭型認知症患者が老人ホームへ入所する際には、本人の日頃の行動や問題点、注意点などを施設スタッフによく説明しましょう。前頭側頭型認知症患者の場合、善悪の区別がつかなくなっていることから、ほかの入所者の部屋に勝手に入りこんで個人の所有物やお金を盗む、平気で介護スタッフにセクハラをする、暴言や暴力に及ぶ可能性があります。前頭側頭型認知症患者の症状や行動にくわしい介護スタッフが常駐する老人ホームを選ぶと、トラブル時にできるだけ円満に解決できるよう配慮してくれます。ただし、本人の暴力や暴言などがあまりにも激しい場合は、入所を断られることもあります。
前頭側頭型認知症(ピック病)とは? その原因、症状について
「認知症の種類の割合について」というこちらの表をみると、一番多い認知症のタイプはアルツハイマー型認知症の55%、次が脳血管性認知症の19%、そしてレビー小体型認知症の18%、前頭側頭型認知症(ピック病)はその他に分類されており、病気の患者数は全体からみると少なめです。
アルツハイマー認知症(55%) | |
レビー小体型認知症(18%) | |
脳血管性認知症(19%) | |
その他の認知症(8%) |
前頭側頭型認知症(ピック病)の原因は、ほかの認知症同様よくわかっていません。外国では遺伝の可能性が指摘されていますが、日本ではそのような症例はごく一部を除いて、ほとんどないようです。前項でも触れましたが、この病気は脳の前頭部、ないしは側頭部が小さく縮むことによって発症します。脳内にピック球とよばれる異常構造物やTDP-43とよばれるたんぱく質がたまることが、脳の委縮につながっているとも言われています。
前頭葉や側頭葉がダメージを受けることで、感情のコントロールや理性が利かなくなり「赤信号でも平気で交差点をわたる」「店先にあるものを万引きする」「すぐに怒る」「他人の家に勝手に上がりこむ」などの問題行動を起こすようになります。アルツハイマー型認知症とはちがい記憶力は比較的保たれており、症状が進行しても「同じものを何度も買う」「家事の失敗をする」「家をでて迷子になる」などといった失敗は少ないのが特徴です。ただし理性的な行動がとれなくなるため、セクハラや暴力、暴言、万引きなどといった非社会的な行動に走りやすくなります。
自発性の低下も前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴です。喜怒哀楽といった感情をあらわすことが少なくなり、一日中無表情・気むずかしい表情で過ごすことが多くなります。それまで続けてきた趣味に目を向けなくなり、自発性のない生活をおくることに。一日中ベッドで横になる、椅子に座った生活では筋力の低下をまねき、それが結果的に認知症の進行を早めることになる可能性があります。
前頭側頭型認知症(ピック病)の患者でよく見られる症状としては、毎日同じものを食べる、濃いめの味付けの食事を好む、甘いものを食べ続けるなどの常同行動や嗜好の変化があげられます。決まった時間に家を出て決まった散歩コースを周回する行動も。この場合、家を出て道に迷うことはほとんどなく、決まったコースをたどって家に帰りつきます。
側頭葉がダメージを受けることで言語障害があらわれることも。「電話」「ドア」など知っているはずの言葉を聞いても、その意味がわからくなります。また状況に関係なく、同じ言葉を何度も何度も繰り返すのは前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴です。
脳血管性認知症の初期では、患者に病識がある場合が多く「もの忘れが多く変だ」「以前はできていたことができない」と自身の異変に気がつき、落ちこむことも。ところが前頭側頭型認知症(ピック病)の患者の場合は病識が一切ないため、本人が「病気である」ことを自覚できません。それが結果的に病気の診断や治療の遅れにつながります。
前頭側頭型認知症(ピック病)患者の介護のコツは?
前頭側頭型認知症(ピック病)の患者には「反社会的な行動」「自分勝手な行動」「無関心」「常同行動(つねに同じことを繰りかえす)」「言語障害」「喜怒哀楽の消失」などさまざまな症状があらわれます。とくに反社会的な行動は患者自身の名誉を傷つけ、家族にも迷惑をかける行為です。もしも患者が万引きや痴漢行為で警察に捕まったとしたら、家族としては怒りを感じたり、幻滅することでしょう。けれどそれが本人の意思ではなく、病気がさせたことだと気づく必要があります。反社会的な行為をしても罪悪感が一切ない、同じ反社会行為を何度も繰りかえすようなら、前頭側頭型認知症(ピック病)を発症している可能性が高くなります。できるだけ早く患者本人の異常に気づき、専門の医療機関を受診させて治療を始めましょう。
前頭側頭型認知症(ピック病)は常同行動や意味のない言葉の繰りかえし、自分勝手な行動という症状がでますが、家族が「やめなさい」と指示しても、その命令を聞くことはほとんどありません。毎日決まった時間に外にでて散歩をする常同行動がみられるなら、それを生活の一部にしてしまうことです。また毎日同じ食事ばかり食べると栄養バランスの偏りが、健康状態に悪い影響を与えることも。同じ食材ばかり買わないようにしましょう。嗜好の変化により甘いものばかり食べたがる患者もいますが、甘いものの食べ過ぎは生活習慣病の原因になります。好きなものばかりを買わないように配慮しましょう。
前頭側頭型認知症(ピック病)の患者は異食をしやすいとも言われています。甘い香りのする洗剤を「お菓子」と認識して食べてしまう可能性も。大変危険です。異食しそうなものは患者の手の届かない場所に保管しておきましょう。
前頭側頭型認知症(ピック病)患者の症状は理解できないことも多く、さらに激高すると暴力に走るケースもあるため、介護サービスを上手に利用して適度に息抜きの時間をつくることが重要です。